AIと人間はどのように共存すべきか? 脳科学者・茂木健一郎さんの主張 「人間は人間にしか興味がない」(3/3 ページ)
具体例として、後者の道を選んだ人物に藤井聡太さんを挙げている。藤井さんは、対局でAIを直接使うことはできないが、AIが示した最適な指し手を自分の中で再現し、それを超えるために努力している。
一方、前者の道のように、AIに全てを任せて自分は考えることをしない姿勢もある。将棋で言えば、AIが指示する通りに盤上の駒を動かすだけだ。それで勝てたとしても、その人の将棋の実力は全く上がらない。
これは、英語など外国語の習得にも当てはまる。AIの翻訳に頼るだけでは、脳の中に言語を習得するための回路が作られない。認知症の研究では、2言語以上を習得した人の発症リスクが低いことが分かっていることからも、AIをうまく活用しながら、自分の脳の回路を鍛えることが脳科学の観点では重要という。
「AIブームは新たなルネサンスを生み出す」
茂木さんは、AIブームが人類に新たな「ルネサンス」(再生や復活などを意味するフランス語で、文化復興の運動などを指す)をもたらすと予言する。「AIの時代の1番の大きなメッセージは、後から振り返るとルネサンスだったってことになると思う」と力説する。
14世紀にイタリアで始まったルネサンスでは、宗教的な束縛から解放され、人間が自分の能力を発揮し始めた。「同じようにAIの時代には『人間とは情報である』『計算である』というパラダイムから解放されるのでは」と茂木さん。
また、ChatGPTがチューリングテスト(※人間の判定者が、人間とAIのどちらかと会話し、相手が人間かAIかを当てる試験)を合格しているのではないかという議論もある。テストの限界が露呈した今、人間の知性を情報処理能力だけで測ることは意味がない。「われわれは、人間の本来の可能性を発揮し始めるのでは」と茂木さんは期待を込める。
これらのことから、人間の本質を「ホモ・サピエンス(賢い人)」ではなく、「ホモ・センティエンス(感じる人)」として捉え直すべきだと主張。「情報処理能力とか、知性が人間の本質だと考えるのは、おそらく間違っていた」と述べる。
AIが情報処理能力で人間を超える時代に、私たちは賢さや知性という概念から解放され初めて、人間の本来の可能性が発揮されるのではないか──茂木さんはそう予言する。
「じゃあ、人間にとって本当に意味があるのは何か? それが分かった人が、次の時代のビジネスの覇権を握る」(茂木さん)
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