社内生成AIを2週間で開発→3カ月のPoCで全社展開 スピードの秘訣をプロジェクトの第一人者に聞いた
「わが社にも生成AIを導入しよう」――そう言ったはいいものの、開発や全社展開が遅々として進まず、計画が頓挫してしまった。あるいは導入までは完了したが、誰も使ってくれなかった。そんな企業も多いのではないだろうか。
統合人事システム「COMPANY」などを提供するWorks Human Intelligence(東京都港区、以下WHI)では、わずか2週間で社内向け生成AI「WeiseHub」を開発。3カ月の概念実証(PoC)を経て全社展開し、現在では多くの従業員が利用しているという。
WeiseHubは、チャット形式の生成AIで、質問すると回答を出力する。例えば、社内で分からないことがある際や、プログラムの不具合の原因を突き止める際に活用できるという。一体どのようにこのスピードでWeiseHubの導入を実現し、社内浸透にまで導いたのか。プロジェクトの第一人者である寺尾拓さんに話を聞いた。
2週間での開発 「プログラミングコンテストの経験が生きた」
学生時代はプログラムの自動検証を研究し、WHI入社後にはシステム開発の環境改善などに携わってきた寺尾さん。生成AIを知ったきっかけはChatGPTのリリースだった。それまで生成AIとは関わりがなかったものの、実際に使ってみてその精度の高さを実感。社内でも使えないかと思い、調査を始めた。
開発を始めた当時、寺尾さんは開発部門全体の生産性の向上などに取り組む部署にいた。まずはChatGPTのAPIを元にチーム内で開発していくことになったが、実質的に手を動かしたのは寺尾さん1人だったという。
にもかかわらず2週間で開発できた理由について、寺尾さんは「既存のAIモデルに比べ、APIの使用方法が簡潔でアプリもシンプル化できたから」と説明した。また個人的に取り組んでいたプログラミングコンテストの経験も生きたという。「大学生の頃からコンテストに出場してきた。短い期間でプロトタイプを作る訓練ができていたのだと思う」(寺尾さん)
3カ月のPoC 乗り越えた2つの壁
こうして誕生したWeiseHubだが、すぐに全社展開できたわけではない。立ちはだかったのは2つの壁だ。第1に、WHIでは業務上、秘匿性の高い人事情報を取り扱うため、セキュリティの観点からルールを徹底する必要があった。第2に、生成AIに詳しくない社員も多く、具体的にどのように使うのかというユースケースの特定が難しかった。
では具体的にどのように進めていったのか。寺尾さんは、経営層に対してWeiseHubの試験的な導入ができないかプレゼンした。結果、まずは一部の社員たちに導入していくことになり、200人規模で3カ月間の概念実証(PoC)を実施することになった。
セキュリティ面については、AIへの入力データが学習に使われず、機密性を担保できる「Azure OpenAI Service」で社内情報の流出を防止した。他にも、個人情報や顧客から預かった情報を入力不可にするといった社内ルールを制定。PoCを進める中で、自社の人事評価情報も入力不可にするなど調整していった。
ユースケースの特定では、生成AIに関心がある人物を各部の担当者としてアサイン。部内で気軽に生成AIを使ってもらえるよう、担当者から後押しする形で進めていった。結果、約60ケースを検証し、新人教育や開発部門のコーディング支援など、効果的な14ケースを見つけたという。
結果、2つの壁をクリアしたWeiseHubは、2023年11月に全社展開を実現した。
社内生成AI最大のメリットは「AIリテラシーの高まり」
実際、どのようにWeiseHubを業務で使っているのか。例えば、新人教育ではコーディングをキャッチアップする際にWeiseHubを活用し、効率化に成功した。不具合を起こしているコードをそのままWeiseHubに貼り付けて質問すると、挙動の仕組みや不具合の原因を教えてくれるという。
他にも、寺尾さんが開発当初想定していなかった活用例も出てきている。営業部門では、顧客に対するプレゼン方法など、提案の骨子を考える際にWeiseHubを使用。各部門がそれぞれ使い方を試していることから、WeiseHubの社内浸透を実感したという。
全社展開からおよそ1年で複数の成果を上げているWeiseHubだが、寺尾さんはその最も大きなメリットについて「社員全体の生成AIリテラシーが高まったこと」だと話す。
「生成AIが初めて登場した際は、半ば黒船のようなもので、期待と不安が半々だった。WeiseHubを日常的に業務で使うようになり、生成AIの可能性や限界について、社員の多くが正しく理解するようになったと思う」(寺尾さん)
寺尾さんは現在85人規模の、先端技術研究部門「Product Div. Advanced Technology Dept」で、他部署とも連携しながら、生成AIを利用した機能拡張や研究開発をしている。今後の展望として、WeiseHubを社内展開して得られた知見を、自社製品のCOMPANYに還元するような機能を提供できないか検討するとしている。
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