半導体メモリメーカーのキオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)は5月15日、2026年1〜3月の売上収益が1兆29億円だったと発表した。同期間のNon-GAAP(調整後)純利益は4099億円で、前年同期比で2990%増加した。
2026年3月期通期でも売り上げが好調で、Non-GAAP純利益は前年比約110%となる5596億円だった。同社の太田裕雄社長執行役員は「記録的な増収増益となった。フラッシュメモリ市場の力強さは今後も続く」と同日の決算説明会で語った。
キオクシアHDは、なぜこれほどの好決算を達成できたのか。
キオクシアHDは、東芝のメモリ事業を分社化して誕生した。データを記録する「フラッシュメモリ」「SSD」など半導体メモリの製造を手掛ける。東芝時代の1987年に開発した「NAND型フラッシュメモリ」(電源を切ってもデータを保持する種類の半導体メモリ)は「大容量」「高速な書き込み速度」「省電力性能」などから広く普及し、USBメモリやスマートフォンなど幅広く利用されている。
2024年12月に東証プライム市場に上場すると、株価がまたたくまに上昇。東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の中で、2025年の株価上昇率1位を記録した。2026年5月には、時価総額が25兆円台を付け、国内第4位に躍り出た(1位はトヨタ自動車、2位は三菱UFJフィナンシャル・グループ、3位はソフトバンクグループ)。
キオクシアの業績を支えたのが「生成AIブーム」だ。太田社長は次のように語る。
「大容量高速なストレージであるフラッシュメモリ、SSDは生成AIの成長をけん引するキーデバイスであると位置付けてきた。2026年3月期は、生成AIの活用が学習から推論に大きく進化する中、ストレージの重要性が強く認識された1年だった」
2026年3月期第4四半期のNon-GAAP営業利益は5991億円で、前年度の年間営業利益をわずか3カ月で上回った。データセンターや大手企業向けの「SSD&ストレージ」領域の売上収益が6003億円で過去最高を記録。同社は「旺盛なAIサーバ向け需要を受けた結果」と説明する。
AI処理というと「GPU」(画像処理半導体)に注目が集まるが、学習や推論に使うデータを保存するストレージも重要だ。高性能なGPUを用意しても、データの伝送速度が遅ければGPUの真価を発揮できない。こうした背景から大容量・高速・省電力などの特徴を持つフラッシュメモリ製品「第8世代 BiCS FLASH」などの出荷が拡大した。
2027年3月期第1四半期の売上収益は1兆7500億円、Non-GAAP純利益は前四半期比で約112%増となる8700億円を見込む。
同社の河村芳彦副社長執行役員は、中東情勢の緊迫化や金利の変動といったリスクを念頭に「売り上げに対するネガティブな影響は見込んでいない」と説明する。調達先の多角化などを進めた成果だという。
「AIが社会基盤となり、フラッシュメモリ市場の力強さは今後も続く見込みだ。AI活用がエージェント型AI、フィジカルAIへと広がり、データ活用ニーズが増大・多様化・高度化していく。当社は、AI市場のトレンドを捉え、培ってきた技術開発力、製造力、営業力に磨きをかけ、AI活用による社会変革を支える企業として成長を目指す」(太田社長)
AIブームを受けて急成長を遂げたキオクシア。この勢いを維持し、株式市場の期待に応えられるか。
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