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NEC「AI産業革命で勝つ企業に」 社長が掲げる3つの「勝者の条件」とは

» 2026年05月14日 12時00分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 NECは5月12日、2030年度を目標とする「2030中期経営計画」を発表した。2025年度に3972億円だった調整後営業利益を、2030年度に2倍に引き上げる。

 前回の中期経営計画期間(2021〜2025年)では、DX事業が追い風となり、時価総額が同社史上最高の8兆1000億円になった。2030中期経営計画期間について、同社の森田隆之社長兼CEOは「目の前に“AI産業革命”という、従来の延長線ではない新しい局面が訪れている。どう勝ち抜くかがポイントだ」と同日の発表会で語った。

 AIを巡っては、米Anthropicの「Claude」をはじめとする先端AIが業務ソフトウェアやITシステムを代替するという警戒感から、IT企業の株式が売られる「アンソロピックショック」が起きた。これにより、世界の時価総額が約80兆円も消失したとNECは推計する。

 ITシステム構築事業を手掛けるNECも、先端AIの影響を無視できない。それでも森田社長は「NECは勝つ企業になる」と自信を見せ、3つの「新しい時代の勝者の条件」を示した。その内容とは。

photo アンソロピックショックによる影響の試算(出所:NECの2030中期経営計画発表資料、以下同)

NEC「AI産業革命で勝つ企業に」 3つの「勝者の条件」とは

 森田社長は「AI産業革命において、脅威よりも新たな機会に向き合うことが重要だ」とする。革命初期の現在は、半導体やAIハードウェア、クラウドが市場をけん引している。AI産業革命が進展すると、AIアプリケーションやAI基盤の需要が高まり「世界で45兆円を超えるAIサービス市場が生まれる」(森田社長)。

 AIサービス市場をけん引するのは「業務のAIエージェント化」「AI基盤」「AI向けのデータ管理」「AI活用によるITシステムの刷新」「フィジカルAI」などで、森田社長は「同市場では優勝劣敗――勝つ企業と負ける企業が鮮明になる。われわれは勝つ企業になる」と意気込んだ。

photo NECの森田隆之社長(4月7日の新拠点発表会にて編集部撮影)

勝者が兼ね備えるべき「3つの条件」とは

 従来のIT業界は、システム開発工程の「コンサルティング」「システム構築」「オペレーション」(運用保守)ごとに受託企業や市場が分かれていた。AI活用を前提とする時代になると、全工程を一気通貫で手掛ける企業が顧客の価値創出を支えられると森田社長は見込む。

 ITを巡っては、安全保障の観点でも変化が起きている。AIの進化や地政学リスクの拡大を受けて、デジタルインフラの安全性や信頼性が求められるようになった。NECは、サイバーセキュリティ領域などで事業機会を得られるとみている。

 「こうした構造変化が起きる中で、われわれが勝者になるには『ドメインナレッジ』『システムアーキテクチャ』『ファウンデーション』を兼ね備え、成果を創出できる存在になることが必要だ。これが中期経営計画における戦略の中核になる」(森田社長)

 ドメインナレッジは「業種別に特化した専門知識」を意味し、AIの業務利用を支える要素だ。システムアーキテクチャは「AI基盤」「AIガバナンス」「AI用のデータ整備」「セキュアなクラウド基盤」など、AIを前提に設計・実装されたシステムを指す。ファウンデーションは「最先端のAI技術」「AIネイティブな組織」といった、AI時代のビジネスの土台になるものだ。

photo AI時代の勝者の条件

AI変革の要は「BluStellar」 売上収益1兆3000億円を目指す

 AI産業革命を勝ち抜くためのNECの戦略は、ITサービス事業で「AIの社会実装」を、社会インフラ事業で「新たな安全保障の技術実装」を加速させることだ。両輪を回すことで、継続的な技術進化と事業成長を狙う。その中核にドメインナレッジ、システムアーキテクチャ、ファウンデーションがある。

photo NECが勝つために掲げる事業戦略

 AIの社会実装を担うのが、同社のAI変革支援モデル「BluStellar」(ブルーステラ)だ。業種や領域別の支援パッケージ「BluStellar Scenario」(ブルーステラ シナリオ)にAIを組み込んで、AIトランスフォーメーション(AX)を進展させる。同社は、BluStellar事業について「2030年までに売上収益1兆3000億円を目指す」としている。

 「BluStellar Scenarioにおけるシステム実装も、AIで飛躍的に加速させる。Anthropicなどグローバルな協業で得られる最新のAI技術や、自社保有のAIスーパーコンピュータを活用して、特定領域に特化したAIモデルをはじめとするAI基盤サービスをフルスタックで提供する」(森田社長)

関連記事:NEC、ブルーステラ事業売り上げを「1兆→1兆3000億円」へ上方修正 改革の全貌は?

NECは“AI産業革命後の世界”をどう描くのか

 社会インフラ事業は、防衛分野のICT事業を伸長させる。デジタルインフラに関しては、通信・海洋(海底ケーブル)・航空宇宙(人工衛星や航空管制など)の3領域を手掛けている強みを生かし、事業の拡大を図る。

 サイバーセキュリティ領域については、AI技術を用いたセキュリティサービス「CyIOC」(サイオック)を展開する構えだ。

 2030年に向けたこれらの戦略を遂行し、NECが目指すのは「AIの社会実装によって人間の可能性を開き、革新をもたらし、新たな安全保障技術の実装によって人々が安心して暮らせる社会」の実現だ。森田社長は「誰もが人間性を最大限に発揮できる社会が訪れるものと確信している」として、発表会を締めた。

 AIを巡っては、利便性を重視する歓迎論と、リスクを懸念する脅威論が混在している。NECは、AI産業革命期をうまく乗りこなし、2030年に見据える社会を実現させられるか。

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