4月23日、NECが突如として「新興AI企業、米Anthropic(アンソロピック)との戦略的協業」を発表した。Anthropicは生成AI「Claude」(クロード)を開発し、生成AIブームの一翼を担っている。同発表を受けて、NECの株価は約200円以上の急反発となった。
協議を担当したのは、NECの吉崎敏文副社長兼COO。Anthropicのポール・スミスCOO(最高事業責任者)と話すため、英国ロンドンに飛んだ。具体的な内容が決まったのは、発表のわずか2日前だったという。
「協業についての本格的な話は、3週間という短期間で決まりました」――吉崎副社長は、4月24日の記者説明会でこう明かした。
これによって、NECは国内初の「Anthropicグローバルパートナー」になった。電撃的な協業の舞台裏をのぞく。
「どちらから協業をアプローチしたのか」という質問に対して吉崎副社長は、明言を避けつつ「2025年10月にAnthropicの日本法人が立ち上がったことが、大きな要因の一つです」と答えた。
その後の協議について、吉崎副社長は「スミスCOOは世界中を飛び回っていて、彼を捕まえるためにロンドンに行きました。本当に分刻みのスケジュールでした」と話す。Anthropicのスピード感に合わせられていること自体が、NECにとって大きな意味を持つと吉崎副社長は言う。
Anthropicの協業先として、他社も候補に挙がっていたか問われた吉崎副社長は「良い質問です。私から言えることはありませんが、結果を見てもらえば分かるはずです」と返した。
スミスCOOは、4月24日の説明会にビデオメッセージを送り、次のコメントを寄せた。
「NECは一世紀以上にわたり、日本を代表する企業や公的機関からの信頼を得てきました。AIへの信頼は、それを社会に届けるパートナーの信頼によって決まります。日本において、NECほど信頼されている企業は多くありません」(スミスCOO)
スミスCOOが特定の企業向けにビデオメッセージを送るのは、世界で初めてだという。
NECとAnthropicの協業が実現した背景について、吉崎副社長は「日本市場を熟知しているNEC」と「日本に投資したいAnthropic」の狙いがかみ合ったためだと説明する。
「Anthropicが世界三極(米国、欧州、アジア)を考える上で、日本は第三極として魅力に映っているのだと思います」(吉崎副社長)
吉崎副社長によれば、Anthropicは日本企業の「複雑で老朽化したITシステム」の刷新に、Claudeが活用できると見込んでいるという。
今回の協業を受けてNECは、サイバーセキュリティ対策サービスにAnthropicのAI技術を活用する予定だ。金融機関、製造業、自治体など厳格な安全対策が求められる組織に対して、高度なセキュリティ対策を提供する。
一方で、AnthropicのAI技術を巡っては、最新AI「Claude Mythos」(クロード ミトス)が大きな議論を呼んでいる。ITシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を発見する能力に長け、サイバー攻撃能力が高過ぎるとして日本を含む各国の当局が警戒を強めている。現在は一部企業への提供に限定されている。
NECがClaude Mythosを使うのか否かについて、吉崎副社長は「回答を差し控えます」としつつ「Anthropicの最新技術を使うことは協業に含まれており、そのフォーカス領域にセキュリティも入っています」と答えた。
セキュリティ領域の他、NECの価値創造モデル「BluStellar Scenario」(ブルーステラ シナリオ」にAnthropicの技術を取り入れて、顧客のAI変革を支援する。両社の協業を足掛かりにして、BluStellar Scenarioを世界に展開することも視野に入れている。
「3週間にわたってスミスCOOと激論を交わしてきました。彼らの最も進んだテクノロジーだけでなく、カルチャーにインパクトを受けました。GAFAとは違う、AIネイティブなカルチャーを学んで、力にして、顧客に価値として届けます。Anthropicとともに新しい市場を一緒に作り出します」(吉崎副社長)
NECは4月24日、BluStellar事業で2030年までに売上収益1兆3000億円を目指すと発表した。Anthropicの協業が、BluStellar事業の拡大に寄与するのか。
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