富士通、NEC、旭化成、LINEヤフー、電通、日本HPの社長に独占インタビュー。今年の展望、そしてAIを活用して自社をどう伸ばしていこうとしているか具体策を聞く。
1回目:日本の研究開発が危ない 旭化成社長が「AIは武器になる」と確信したワケ
2回目:電通社長に聞く「改革の現在地」 AI活用は広告業をどう変える?
3回目:「AI PC戦国時代」の勝ち組を狙う日本HP 差別化の切り札とは?
4回目:富士通の時田社長に聞く「組織変革の真意」 AIエージェントの未来は?
5回目:本記事
6回目:LINEヤフー
AI活用の追い風を受けて業績を伸ばしているNEC。2024年5月には、企業のDXを促進する価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)という新しいブランドを発表した。
同社の今後のカギを握るのが、生成AIの実装だ。【NEC社長に聞く「2024年はどんな1年だった?」 キーワードは「ブルーステラ」】に引き続き、森田隆之社長に生成AI競争でのNECの強みや、AIエージェントへの見解を聞いた。
森田隆之(もりた・たかゆき)1983年にNECに入社、2002年に事業開発部長、11年に執行役員常務、18年に副社長、21年4月に社長に就任。6年間の米国勤務や2011年からの7年間の海外事業責任者としての経験も含め、海外事業に長期間携わってきたほか、M&Aなどの事業ポートフォリオの変革案件を数多く手掛け、半導体事業の再編や、PC事業における合弁会社設立、コンサルティング会社の買収などを主導した。21年5月には、30年に目指すべき未来像「NEC 2030VISION」と2025中期経営計画を公表した。64歳。大阪府出身(アイティメディア今野大一撮影)――世界中で生成AIの競争が激化しています。NECは日本語に特化した独自の生成AI「cotomi」(コトミ)を構築しました。社内外での実装は進んでいるのでしょうか?
社内では(システム開発の)テスト工程や、サイバーセキュリティの領域ではトレ−ニングやインテリジェンス情報の解析、メールの内容を点検して警告を出す際などに使っています。コンタクトセンターやコールセンターなどでも利用しています。ただ、これを顧客に提案するとなると、いろんな面で武装していかなければなりません。倫理問題や著作権の問題もあります。
社外を意識すると、独自の情報を外部と切断してどう使っていくかが課題になります。またGPU(画像処理半導体)のコストも、いまはプロモーション期間だから低いものの、実際に使うと増えるかもしれないので、そうした費用の問題などもあります。
ただ、こうした問題を全て整備してからとなると、遅れてしまいます。ある部門を切り取って業務プロセスの一つを生成AIに置き換えることも考えられます。例えばコールセンター、ソフトウェア開発、マーケットリサーチなどの領域は、一定の業務フローにおいて閉じた形で生成AIを使えます。社内ではあるものの、社外で使っていくための業務にも利用していくようにしたいと考えています。
現在はまだまだ実験的で、個人レベルな使い方が多いので、今後は組織的にオーソライズしたやり方で実行してみることが必要になります。米国でもそうした動きが出てきています。グループ会社では、コンタクトセンターで使うアプリケーションを受託するといった動きも出ています。こうした動きが2025年は本格化してくるのではないでしょうか。
――生成AIに質問したら答えてくれるだけでなく、実際に指示した内容まで実行してくれるAIエージェントがホットトピックです。どう捉えていますか。
確実にそういうトレンドになると思いますが、いま日本で言われているAIエージェントは(ソフトウェアロボットが一定のルールに基づいて人間に代わってデスクワークなどを自動化する)RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に毛の生えたようなものをAIエージェントと呼んでいることがあります。
本当のAIエージェントとは何か。例えばAという会社から提案書を作成してほしいとなった場合、顧客のヒアリング情報を参照し、社内の提案書のツールやコンポーネントを探し出して、外部の情報とつなぎ、マーケットリサーチをし、顧客の思考を勘案して最適な提案をする。同時にその会社と競合している会社を比較する。
最初はドキュメントから始まり、グラフや絵が入るようになり、さらには設計情報なども入ってきて、それぞれがマルチモーダルになっていく。そうした流れになってくると思います。
――NECの生成AIの強みはどこになりますか。
われわれは生成AIをゼロから作っています。AIのトレーニングから何をどのような形で外部とつなげるべきかまで分かっています。これからはNEC独自の生成AIであるcotomiを単独で使うのではなく、OpenAIやマイクロソフトの生成AIサービスなどを、それぞれの特徴を生かして使うハイブリッドになってきます。
このため、ハイブリッドシステムをどのように構築していくのかについては、技術の進展も早い中で、そのロードマップをおさえた形で、将来的に「もう一回作り直し」という形にならないような提案やシステム構築をできることがNECの強みになると思います。
もう一つは、われわれがずっと言っている「クライアントゼロ」です。製品としてまだ出ていないものも含め、さまざまな形で社内でAIを使っています。例えば、世の中のいろいろなシステムに対して、加工やチューンアップをしているので、そういったスピードやフレキシビリティも含め、NECには優位性があります。
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