NECがジョブ型雇用を進めている。人材獲得競争が激しいAIやセキュリティ分野などで、中途採用にも取り組む。
5月には価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)を新たに立ち上げ、DXを軸にした事業を進めている。BluStellarではDX人材を活用し、コンサル起点での提案型の営業を打ち出していて、2025年度には全社売上高3兆5000億円のうち4935億円の売り上げを見込む。
BluStellarに限らず、企業の業務デジタル化やシステム更新の旺盛な需要を捉えるため、NECは2024年、組織再編にも取り組んできた。子会社だった日本航空電子工業(JAE)を非連結化。NECキャピタルソリューションの一部株式を売却し、自治体や中堅・中小向けの事業強化としてNECネッツエスアイの完全子会社化も進めている。
2025年度は中期経営計画(中計)の最終年度だ。2025年、NECはどのように変わっていくのか。その方針を、11月11日までにアイティメディアなどのグループインタビューに応じた森田隆之社長に聞いた。
――2025中計では2025年に、最終年度を迎えます。これまでの成果の集大成として、どんなことを考えていますか。
2025中計には私なりのこだわりはありますが、マーケットでは2025中計は達成して当たり前で、その先を聞く方が多いです。2025年で会社が終わるわけではありませんので、これを踏まえて長期的な方向性を加速していきたいですね。
2020年、私がCFO(最高財務責任者)を務めた最後の年に、当時の新野隆社長の下で2025中計を取りまとめました。世界のトップクラスの企業と比べた時に、5年という時間軸で考えると、利益率を仮に倍にしたとしてもなかなか届かないのが現状です。その点で2025年は中間地点という位置付けで、これから先を見た時に、われわれがグローバルのトップクラスの企業に並ぶような絵が描ける段階にきたと思っています。
次の3年になるか5年になるかは分かりませんが、その時の姿を描くための構造的な施策は2025年までに全て準備を整えたいと考えています。その一つがジョブ型雇用であり、先日のNECネッツエスアイの株式公開買付けを含む、グループ会社の整理もその一つです。
事業のポートフォリオは、ITサービス、それを支えるBluStellar、そして経済安全保障の領域を対象とした社会インフラ。こうした大きな枠組みは整理できたと思います。これをベースに、次の3年なり5年の絵を描けるベースを、次の2025年に並行して作っていかなければなりません。
――来年度は、今年度より投資を増やしていく方針なのでしょうか。
これまでの研究開発費は設備投資や試験機、ソフトウェア開発などに向けていましたが、ここ1〜2年で研究開発費の一部を教育費に振り替える考え方をとるようになってきています。具体的な数字はまだありませんが、振り替える金額をもっと増やしていくことになると思います。
――NECの株価が2023年から上がっています。森田社長は、マーケットの評価をどう受け止めていますか。
一丁目一番地は有言実行だと思っています。2011〜12年の厳しい状態から、ここ7年は年初に掲げた業績計画を過達してきました。有言実行は非常に大事だと思います。途中でいろいろなことはありますが、最終的には約束を守るというマーケットとの信頼関係が重要だと考えています。
セグメントなどで、社内組織を分かりやすくしたことも非常に重要だと思います。ITサービスと社会インフラ、そしてBluStellarといった、それを支える基盤という形でセグメントを非常にシンプルにしました。NECが何をしている会社なのか。これを一言で語れる会社になっていることが2番目に大事だと思います。これらを展開する上で、できるだけ情報発信することも続けてきました。
――5月にBluStellarを発表してから約半年が経ちます。2025年度には4900億円の売り上げ目標を掲げています。これまでの手応えと課題は?
BluStellarはもともと「NEC Digital Platform」という名前で、この数年間取り組んできました。今回新たにブランド名をつけることが、こんなにインパクトをもたらしたことは、うれしいサプライズでした。
顧客へのアピールという面もありますが、社内への影響も大きく、BluStellarのビジネスモデルなどへの理解が相当に深まりました。その中で今、オファリングモデルの準備が加速しており、これを充実させることが課題です。BluStellarは、事業を計画以上に伸長させていくためのカギになると言えます。
――NECでは自治体システムの標準化にも取り組んでいます。今後の自治体DXの取り組みを、どう見ていますか。
システム標準化については、これまでわれわれも自治体ごとにシステムがバラバラの中で苦しんできた経緯があります。数年前から、われわれの中でもできるだけ標準化をしていくための投資を進め、その結果としてわれわれが担当している自治体については全て期日通りに実行してきました。それに加えて、さまざまな標準化に苦労している自治体があるので、われわれの力の許す限りサポートすることを検討しています。
自治体や、地方の中小企業を含めたDXはこれからだと思います。今後は医療DXの標準化も進んでいくでしょう。自治体DXや医療DXだけではなく、周辺のDXのためのベースを提供していく意味でも、かなり期待しています。
――NECは2024年、子会社だった日本航空電子工業(JAE)を非連結化や、NECキャピタルソリューションの一部株式を売却、NECネッツエスアイの完全子会社化を進めてきました。
上場会社であるJAEとNECキャピタルソリューション、NECネッツエスアイの3社について大きな方向性はつけられたと思います。われわれとしては、NECネッツエスアイの完全子会社が実現できれば、コア事業として進めていく企業については100%の形でグループに取り込めると考えています。
そしてNECグループとしての力が出るようにジョブ型雇用などをさらに進め、NECグループでの垣根をなくし、人の流動性を高めていきたいですね。グループ全体としてシェアードサービスのような機能の集中化を進めていくことで、NECグループの力をより高めていく施策を進めていきます。「売った」「買った」というような話については一旦、これで基本的には方向性がついたと思っています。
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