サイバー攻撃AIツール「ARTEX」とは 中国政府と連携する攻撃者も使用、各国で悪用確認(1/2 ページ)

 相次ぐ情報漏えいの報道で連日名前が挙がるAIツール「ARTEX」。中国語話者の開発者が「GitHub」で公開していたオープンソースの自律型ペネトレーションテスト(侵入テスト)ツールだ。米Microsoftは10月21日(現地時間、以下同)、中国政府と連携する攻撃者がARTEXで攻撃を自動化していると発表した。韓国や日本でも同ツールの悪用が確認されている。

 ARTEXとはどのようなツールで、なぜ悪用されるのか。韓国のセキュリティベンダーAhnLabの検証を軸に整理する。

目的を与えるだけで侵入まで“自走” 作者は「学習と研究目的」と説明

 ARTEXは、標的と目的、許可範囲を入力すると、複数のAIエージェントが利用可能なツール群から適切なものを選んで実行する自律型の侵入テストツールだ。使用するLLMは利用者が選べ、Microsoftによれば、中国語のほか日本語、韓国語、スペイン語の表示にも対応するという。

 AhnLabのセキュリティ組織ASECによる分析では、目的を整理する「Goals」、次のタスクを決める「Planner」、ツールを実行する「Worker」の3体のエージェントが連携し、Workerの行動結果を基にPlannerが次の行動を決める。

 ASECが隔離環境で試すと、「攻撃対象に侵入してください」「指定されたターゲットのみを攻撃してください」といった簡単な指示で、人間の介入なしでWebサーバのファイルアップロード機能などを使い遠隔でコマンドを実行したという。

ARTEXによる侵入テストの流れ。複数のエージェントが連携して攻撃を実行|AhnLab

 AhnLabは今回の実験を通して、ARTEXが公開サービスの脆弱性や設定ミスを悪用し、初期アクセスからコマンド実行、内部ネットワークへのアクセスまで可能なことを確認したという。「これはAIベースの自律型侵入ツールが既に現実の脅威となっており、今後その影響が拡大する可能性が高いことを示している」と警鐘を鳴らす。

 ARTEXの作者は10月8日付の声明で、同ツールは「学術研究目的」で作成したもので、許可を得た範囲内でのセキュリティテストを助けるためのものだったと説明。一連の攻撃は「作者と無関係」とし、プロジェクトの更新と公開を停止した。

削除後も「コピー」が増殖 有効な対策は

 AhnLabは、ARTEXに関連するIPアドレスすべてを脅威アクターとして分類することは不可能としながらも、同ツールを稼働させる600の公開IPアドレスを特定。米国、中国、香港、シンガポールなどが大半を占めたという。一部のホストには攻撃活動の痕跡もあった。

 同社は15日の続報で、ARTEXのGitHubリポジトリが消えた後、そのコードを基にした改変版が配布されていると報告。「ARTEXは単一のプロジェクトではなく、複数の運用者が再利用、改変、再配布している」と指摘している。

 AhnLabは対策として、公開サービスや管理機能の特定、アカウント権限や組織内ネットワークアクセスの最小化、EDRやXDRで侵入から内部移動までの流れを捉えることなどを挙げる。攻撃者がAIを活用しても「防御の基本原則は変わらない」とした。

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この記事の著者

村田知己
村田知己

ITmedia AI+ 編集記者。市場調査会社でのエンジニア職を経て、2022年アイティメディア入社。キーマンズネット編集部、社内のデータ分析基盤構築担当、ITmedia エンタープライズ編集部を経て現職。

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