AIキャラ「りんな」開発元が作る基盤モデルの強みは? 公開したモデルのダウンロード数は累計550万超に
生成AIブームの今、注目のキーワードが「基盤モデル」だ。各AIベンダーたちの間で基盤モデルの開発競争が激化する中、それぞれの開発状況や強みを探っていく。今回は、rinnaに話を聞いた。
生成AIブームの今、注目のキーワードが「基盤モデル」だ。大量のデータを事前学習したAIモデルのことで、少しのチューニングを施せば、さまざまなタスクに対応できる。生成AIの代表的な例ともいえる、米OpenAIの「GPT-4」といった生成AIも包含する概念だ。
さまざまな企業が生成AIを使った業務効率化を試行錯誤する中、AIベンダーの間では基盤モデルの開発競争が激化している。そこでこの特集では、基盤モデルを開発するAIベンダーに一問一答インタビューを実施。開発状況や独自の強みなどを探っていく。
今回は、コミュニケーションAI「りんな」を提供するrinnaに話を聞いた。答えてくれたのは同社事業開発部マネージャーの宋珠憲さんと、Research and Data マネージャーの沢田慶さんだ。
rinnaの基盤モデルの特徴や強みは何か?
沢田:rinnaは2015年よりAIキャラクターりんなをはじめとしたAIの研究開発を続けています。大規模言語モデル(LLM)の基盤となる技術が登場した18年頃からは日本語に特化したLLMや生成AIの研究開発にも力を入れてきました。21年4月には日本語に特化したGPTの一般公開を他に先駆け始め、その後も継続的にテキスト・音声・画像に関する基盤モデルを公開しています。
これまでに公開したモデルは累計550万以上のダウンロードを達成し、多くの研究・開発者にご利用いただいています。そのため弊社の基盤モデルに関する強みには、最新手法を導入できる技術力、目的に合わせてカスタマイズできる応用力、サービスとして実現する運用力があげられます。
基盤モデルで解決できる業務課題にはどのようなものがあるか?
宋:長年蓄積してきた組織内のデータの有効活用があげられます。最近のLLMは、技術の変化に伴い、検索やテキスト処理能力も発展しています。そのため、膨大なデータを効率的に運用できるのはもちろん、Webサイトのテキストなども簡単に活用することができるような仕組みもあり、データの運用だけではなく、管理の効率も上がっています。
このような技術と仕組みの変化で、ドキュメントの検索や人とのコミュニケーションコストの軽減が期待できるため、業務効率化にもつながることとなります。例えば、とある自治体の場合、大きく3つの大きな課題を持っていました。
- 月2〜3回アップデートされる助成金やボランティア情報を市民にちゃんと伝えていきたい
- 自治体の配信する情報を市民にうまく活用していただきたい
- PCなど、ITの専門知識のない職員たちもデータの管理ができるようにしたい
これらの課題は、LLMとRAG(外部データベースの情報を参照させ、機密情報を基にした回答などを可能にする仕組み)の仕組みを活用することで、改善が期待できます。
なぜ基盤モデルの開発を決めたのか?
沢田: 弊社はAIの最新技術の動向を追っており、基盤モデルの考え方が登場した時点でそのアプローチが主流になると確信しました。しかし、当時は日本語の基盤モデルは公開されておらず、自社で開発することを決めました。
他社と比較した際、競合有意性はどこにあるのか?
宋:rinnaの強みは利用シナリオに応じた要件を満たすLLMを提供するためのプロセスにあります。特徴の異なる複数の言語モデルに、お客さまに提供してもらった同一のテストデータを学習させ、パフォーマンスを検証します。
1番評価の高いモデルを選定した後、複数のアルゴリズムの検証に進み、同様に評価を行います。複数のモデルとアルゴリズムの組み合わせから、お客さまのニーズにとって最適な選択肢を提供できます。
また、rinnaのLLMはオンプレミスで納品できるため、ChatGPTをはじめとした外部とのネット接続が必要なLLMサービスの利用が制限されるシナリオにおいても、安心して利用することができます。
データ設計からチューニング、LLM運用まで、rinnaはコンサルティングや伴走支援もできますので、LLM運用に必要な知識や経験に不安のあるお客さまにも対応できます。初めてのLLM活用に懸念がある場合でも、rinnaが運用のサポートをしますので安心して始められます。
どのようなエコシステムを作っていきたいと考えているか
宋:これまでの複雑なシステムやデータの連携において、より簡単に管理できる方法の開発を考えています。どの業種も長年の事業展開で構築されたシステムはAI思考を持たないものが多いです。しかし最近、AIを活用した組織内の事業効率化やお客さまへの価値提供のために、多くの企業でAIの取り組みを検討する動きが活発になってきています。
今までのシステム開発手法からAIを活用することを前提としたものに変わる時代の到来です。より簡単に効率よくお客さまのシステムと連携をし、今まで理想であったシステム&仕組みを実現可能なAIエコシステムを皆さまと作っていきたいと考えています。
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