e-Day
「スマート」にこだわるビル・ゲイツ
「ファット」か「シン」か、いや「スマート」だ。
1995年にインターネット革命が大爆発して以来、Windows、特にクライアントOSはずっと冷や飯を食っている。もう要らないというのではない。必要悪とでも言ったらいいだろうか。Linuxのようなオルタナティブへの期待も根強い。
しかし、Microsoftのビル・ゲイツ会長は、彼らの生命線ともいえるクライアントOSの牙城を死守すべく、その再定義に取り組んできた。それがファットでもない、シンでもない、「スマートクライアント」だ。
話は、今から3年と少し前、つまりドットコムバブルが消失した2000年のCOMDEX/Fall Las Vegasまで遡る。恒例となったCOMDEXの前夜祭でゲイツは誇らしげに当時開発中だった「Tablet PC」を披露しているのだが、鳴り物入りのガジェット見たさにMGMホテルのアリーナへ詰め掛けた聴衆は、「クライアントOS復権の狼煙(のろし)」を見ることになった。
「シンクライアント偏重は是正される」とゲイツ。何にでも行き過ぎはあり、必ず揺り戻しがあるというのだ。
2000年秋といえば、ドットコムバブルは消失したとはいえ、B2Bに足掛かりを得たドットコムベンダーらに、まだ勢いがあった。クライアントアプリケーションの管理や保守に頭を悩ませていた企業顧客もHTMLベースのWebアプリケーションに飛びついていたときだった。
あのアリーナで彼は、Webサービス標準によるソフトウェア連携こそが次世代アプリケーションのあるべき姿であり、それをB2CやB2Bになぞらえ、「Software to Software」と表現した。クライアントにもインテリジェントが不可欠だとし、当時の風潮にクギを刺した格好だ。イノベーティブなTablet PCを紹介するのにふさわしい導入部だったし、2002年秋のCOMDEXや2003年1月のCESで話題となった「SPOT」(Smart Personal Object Technology)、さらには「デジタルデバイスを本当の意味でシームレスに結ぶためにはソフトウェアの力が不可欠だ」という、この1月のCES基調講演につながっている。
もちろん次期Windowsとして開発が進むLonghornのグラフィック技術であるAvalonも「スマートでメディアリッチなアプリケーションを構築するための基盤」と位置付けられている。彼は意外としつこいのだ。
その後、.NET環境の整備が進むにつれ、2000年秋に上がったアドバルーンが現実味を帯びてきた。特にエンタープライズコンピューティングにおいてはそうだという。
マイクロソフト日本法人は、この1月から「スマートクライアント アドバンテージ」を開始し、使い勝手の良い、しかし、「ノータッチ・デプロイメント」機能によって配布や管理の手間がかからない次世代クライアントを売り込んでいる。
「リッチクライアントとWebアプリケーションのいいとこ取り」と表現するのは、デベロッパー製品のマーティングを担当する熱海英樹氏。新しいコンセプトであるスマートクライアントは、XML Webサービスの活用を前提としていて、PC以外のスマートデバイスからも情報にアクセスできる。一元化された企業情報の活用はシーンに応じたデバイスの使い分けがカギを握るのだが、熱海氏は、「企業の生産性が下がってしまっては元も子もない」とし、その使い勝手の維持が重要だと指摘する。
Webサービスは、サービスのプロバイダーとコンシューマーに簡素化することで、システム間の連携を容易にし、また、さまざまなデバイスをクライアントとして選択できるようにしてくれる。今のところ、クライアントレベルでの実装技術は、.NETの独壇場といえる。.NET Frameworkやモバイルソリューションのための.NET Compact Frameworkがあれば、デバイスに依存せず、企業の情報にアクセスできる柔軟な環境が構築できるというのが、マイクロソフトの主張だ。
スマートクライアント アドバンテージのプログラムに参加するには、彼らのWebサイトで登録するだけでいい。無償でスマートクライアント開発キットが送られてくるほか、「Technical Briefing Tour」(全国7カ所開催予定)やe-ラーニングのコンテントも用意されている。相変わらずの物量作戦に驚くばかりだ。
話は横道にそれるが、マイクロソフト取材の折、珍しい人に再会した。元ボーランドのO氏だ。新しい職場に来たのは1週間ほど前で、今後はC#を担当することになるらしい。C#を設計したのは、Borland Delphiの生みの親として知られるアンダース・ヘイルスバーグだから、O氏の移籍も驚くことはない
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