連載
» 2007年09月11日 12時00分 公開

日本全国ラボめぐり:新サービスの応援団──「@niftyイノベーション・ラボ」はニフティの内外をつなげる

連載「日本全国ラボめぐり」第5回は「@niftyイノベーション・ラボ」です。8月に「@niftyウェブサービス」をオープンしたイノベーション・ラボですが、実働メンバーは3人だけだったのです──。

[秋元裕樹,ITmedia]

 日本全国ラボめぐりの第5回は「@niftyイノベーション・ラボ」に行ってきました。東京都品川区の大森ベルポートにあるニフティ本社。その中に@niftyイノベーション・ラボもあります。

 ニフティといえば、パソコン通信時代から日本のコンシューマ向けネットサービスをリードしてきた企業の1つ。そのニフティが運営するポータルサイトが「@nifty」であることはBiz.ID読者にとって説明不要でしょう。ニュースや情報サイト、コミュニティサービスなどを数多く提供しています。

 今回は、そんなニフティの「イノベーション・ラボ」を訪問。ラボを担当する杉本宏史さんと稲垣恵理さん、それからラボのゼネラルマネージャーを務める中泉隆さんにお話を伺いました。

2本立ての支援事業

 8月に「@niftyウェブサービス」をオープンしたイノベーション・ラボ(8月8日の記事参照)。@niftyウェブサービスのWebサイトには多くの開発者がずらりと並んでいます。ですが、イノベーション・ラボのメンバーは3人──今回インタビューを引き受けて下さった杉本さん、稲垣さん、中泉さんだけなのです。限られた人数でどんな活動をしているのでしょうか。

杉本さんは1994年入社。10年以上ニフティに携わっている
一方の稲垣さんは2005年入社。ラボでは紅一点の存在だ
2人の上司にあたる中泉さん

 ラボの活動は大きく分けて2つ。1つは「外から内へ」の活動、もう1つは逆に「内から外へ」の活動です。外から内とか内から外とか、ちょっと何のことか分かりませんかもしれませんね。

 「外から内へ」というのは、ニフティ以外のベンチャー企業や、他分野の商品・サービスなどの情報を収集し、@niftyでの導入や共同開発の可能性を模索することです。一方「内から外へ」は、社内の試作品をβ公開するための支援を行なうこと。すぐに正式サービスにはできないけれども、正式サービスになる可能性を秘めたサービスを手助けし、公開に至るまで支援する──というわけです。

ラボルームと「外から内へ」の活動

iPhoneはアクティベーションした上ですぐ米国から送ってもらったという。インタフェースに注目している

 広いオフィススペースの一角にラボルームがあります。ルームにはPCのほか、AV機器やPDAやゲーム機などの評価用機器がたくさん。人気の「Wii」だけでなく「Xbox 360」や「Playstation 3」などの最新ゲーム機はもちろん、アップルの「iPhone」なども置いてありました。各種書籍も取り出しやすいように並べられています。

 「@niftyのサービス開発スタッフは自由に出入りをして、いろいろなものを試すことができます。また、新しいデバイスのデモや勉強会も、ラボで開催することが多いです」と杉本さん。杉本さん自身も新しいものが好きで、WiiやiPhoneは真っ先に試したそうです。

 「日常業務に追われている開発者にとって、電気屋に発売日に並んでWiiなどを個人でいち早く入手し触ってみる、ということは簡単ではありません。ラボでそういう『ちょっと試してみたいな』と思わせる最新ハードウェアを用意することで、@niftyのサービスをその新ハードに対応させられないか、新しいインタフェースをどのようにそしゃくするか、というきっかけを全スタッフに提供しようとしています」(杉本さん)

ラボ内に設置してあったPC。富士通製ではないことにちょっとびっくり
資料が並ぶラック

テレビの下にはAV機器のほか、「Wii」「Xbox 360」「Playstation 3」などの最新ゲーム機も
携帯電話やPDAも多数所有。いずれもインタフェースの研究などに利用するという

「Second Lifeってどうなの?」を探るのも仕事

稲垣さんの仕事は「Second Life」の調査。面白いですか? 「まだ分かりません(苦笑)」とのこと

 稲垣さんはここのところ、3D仮想空間「Second Life」を調査する業務が担当。メディアの記事を読むだけでは分からない長所や欠点を探るためです。「自分たちの知識として把握しておくために、実体験が重要です」(稲垣さん)。稲垣さんが面白いと感じるか、つまらないと感じるか──その結果を社内で発表することで、Second Lifeに対して何をするのか、しないのか、するとしたら@niftyとどんな関わりが考えられるか、という問題提起を行うのです。

 WiiやiPhoneといった新しいインタフェースについても、マネージャレベルの人たちにふらっと寄ってみてもらったり、ときには役員にも見に来てもらっています。

 「ちょっと試してみなよ、と声をかけてラボに立ち寄らせることもあります。さすがに役員に対しては事前に説明してから来てもらいますけどね」と笑いながら説明する中泉さん。いずれにせよ、イノベーション・ラボが外の世界の流れ知るためのハブになっているのです。スタッフ・役員に関わらず、組織として世の中の情報にキャッチアップする仕組みと言えそうです。

稲垣さんのデスクの上。右側にSecond Lifeのガイドブックも見える

新サービスにつながる「内から外へ」の活動

 ニフティのサービス開発部署では、それぞれの担当者が現在のサービスを運用したり機能追加をしたりしています。こうした組織体制は各サービス担当者の独立性が高いのが特徴。担当者が好きなようにサービスを運営できるため、担当者のアイデアや技術が直接反映できるわけです。ただし、ややもすると業務外のことには関心を持たなくなったり、横のつながりが希薄になりがちなのも問題です。

 イノベーション・ラボでは、「アイデア交換会」のような社内イベントを定期的に開催します。各部署の担当者がそれぞれ新しいアイデアを持ち込んだり、意見交換をしたりすることで、視野が広がります。それに横のつながりができるほか、新しいサービスにつながることも多いのです。直接のサービス開発に限らず、技術の勉強するための集まりや情報の共有するミーティングなども開催します。

ラボにあった印象的な形のテーブル
自由に組み合わせていろいろな配置ができる。ミーティングの多いラボには必須のツールといえそうだ

 日常の業務に追われて忙しい中からも、次に来るものを考えてもらう、ということで、中にある個々人の想いやアイデアを形にする手助けをする、これがラボの「内から外へ」への活動内容だといえます。

 ちなみにニフティでは、2007年4月から本来業務以外の仕事にも給料が出るようになりました。もちろんニフティに関わる仕事であることは必須条件ですが、申告が認められれば2つめの仕事にもお金が支払われるのです。例えば、「ちょっとこっちのサービスを手伝ってよ」と別部署の同僚に呼ばれた場合、呼んだほうの部署から働いた分の給料が支払われる仕組みです。

 通常ですと、本来の業務以外で仕事したとしてもボランティアになりがちですが、こうした制度があればちょっとしたお手伝いにもやる気が出そう。イノベーション・ラボの活動にとっても追い風になっているようです。

杉本さんの仕事の割合
こちらは稲垣さん

休憩エリアは畳敷き。和風な雰囲気だ
マッサージチェアもある
リフレクソロジーの施設も
オセロゲームが置いてあった。特に対戦相手を決めて試合をしているのではなく、通りがかったスタッフが一手進めると、別のスタッフがそれに応じる。次に通りがかったスタッフがまた次の手を……というような進め方をしているようだ

ぜんぜん関係ないが、稲垣さんのおやつはビスコだった。“大人買い”したが、全部食べ切ってしまったという。ちなみに大森周辺は飲み屋が多いので夜の宴会には困らないが、ランチの場所や入手できるお弁当については物足りなさもあるとのこと
愛飲のみそ汁

@niftyのログインの様子を体験できる受付

 ニフティの受付スペースでは、パソコン通信時代を支えたサーバ「DS/90」や当時のマニュアル、音響カプラなどを展示していました。

 通信速度が数百bpsだった頃のニフティサーブのログイン画面が再現されて動いていました。このデモも杉本さんがJavascriptで作成されたということ。ニフティに訪問されることがあればぜひ見てみてください。懐かしい気持ちにひたれます。

パソコン通信をイメージしたデモ
サーバ「DS/90」



 筆者の最初の職場がニフティの立ち上げに深く関わった会社だったこともあり、共通の知人や10年以上前の思い出話にも花が咲きました。

 ラボのスタッフは3人という限られた人数なので、スタッフだけでは仕事が完結しません。しかし、イノベーション・ラボ発のサービスが多数公開されていることから分かるように、β的なサービスを発表を推進するためのなくてはならない役目を担っています。

 ラボの中の人のセンスや頑張り、ラボでつなげた人と人の関係から、@niftyのサービス群がより面白くなっていくとすれば、これもまた面白いラボの動き方ではないかな、と感じました。

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