上方落語の桂小春団治(かつらこはるだんじ)師匠が講演会場を笑いで染めた。早朝イベント「朝EXPO in Marunouchi 2008 spring」最終日、4月25日の早朝だ。笑いをとりつつ「さすが話術のプロ!」と来場者をうならせた、小春団治流初対面の人との距離を縮めるコツや会話術とは。
「お互いにお辞儀をして顔を上げたとたん、『そんなん、どこで売ってるんですか?』と、私の足元を指さしたんでございます」。師匠は、前大阪府知事の太田房江氏と初対面のあいさつを交わしたときのエピソードを回想する。
さらに師匠が、履いている物を脱いで大きく掲げると、会場がどよめいた。手にしていたのは、なんとルイ・ヴィトンのモノグラム柄の草履。ルイ・ヴィトンで草履は売ってはいない。師匠がモノグラムの生地を使って、わざわざ職人に作ってもらったという。
あいさつするためお辞儀した自分の目に、珍しい“ヴィトン草履”が飛び込んできた太田前知事は、思わず師匠に質問してきたというわけだ。
初対面の相手に質問されたら、その人が自分に興味を持ってくれた証拠である。だから相手と早く打ちとけたいときは、「『自分に興味を持ってくれてるな』と思えるようなツカミ」をあらかじめ持っておくといいそうだ。
ツカミは物に限らない。例えば師匠の所属する松竹芸能には、初対面の人に必ず質問をされる有名人がいるという。彼のタバコの取り出し方は一風変わっている。ふつうは箱のフタをそのまま開けて上から取り出す。
ところがその人は、箱の真ん中にツメを入れてガーッと縦に裂いてしまうのだ。そして裂け目からタバコを取り出す。「『なんでそんなふうに開けて取り出すんですか?』と、必ず聞かれるんでございます」(師匠)というのも、うなずける。目の前でそんな行動されたら、誰しも突っ込みたくなるのが人間心理だろう。
つまり初対面の人と親しくなるコツは、「こっちがしゃべるんじゃなく相手の興味を引き出す」ことだという。こうしたツカミを突破口に会話を弾ませていくのだ。
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