さてここで脳内の情報処理のモデルを考えてみましょう。
図1は、人間が外界から「情報」を得て「判断」し、「行動」するときの脳内の情報処理の仕組みを簡単にモデル化したものです。Sはセンサー、つまり「情報を受け取る役割」を意味しており、Aはアクチュエーターで、実際の行動を起こす(例えば、筋肉を動かす)役割を意味しています。ただしSもAもどちらもあくまで「人間の脳内」の仕組みであって、目や耳や筋肉はこの外にあります。また、S1、A1のように後ろについている数字には対応関係はありません。
通常、人間の技量というものは「情報〜判断〜行動」という一連の流れを何度も繰り返すことで身につきます。この練習をしている例がシーン1に出ていた「バッティング練習」です。これを「一連動作実行型練習」と呼んでおきましょう。
これはこれで重要なのですが、トレーニングの効率を考えた場合、一連動作実行型練習には実は不利な点が1つあります。それは、
ということです。例えばバッティングをする場合、手、腕、肩、足はもちろん、背筋や腹筋なども含めて全身の筋肉を同時に適切にコントロールしなければいい結果は出ません。つまり、複数のA系の要素を同時に動かさなければならないため、例えばA2ならA2に弱点があったとしても、A2だけを集中的に強化することが難しいのです。同じことは「S」系についても言えます。一連動作実行型練習では、実動作を伴いますので、短時間に複数の要素を同時に連動させなければならず、個別要素のトレーニングには向かない面があります。
そこで効果を発揮するのが「イメージトレーニング」です。イメトレの場合はなにしろ「イメージ」だけですから、どんなスローモーションにでもすることができます。
というトレーニングが実は可能なんですね。実際私も卓球の練習ではよくこれをやっていて、その効果が出ています。また、本業である企業研修での「講師」のトレーニングでも同じことをやっています。
実際にやってみた経験から、イメージトレーニングのメリットをもう2つ挙げておくと以下のようなものがあります。参考にしてください。
後者については例えば野球ならグラウンドがいつでも使えるとは限りませんし、カーレースなどでは1周走るのにも大変なお金がかかりますが、イメトレならそれらがいらないわけです。また、例えば「カーレース中の前方でのクラッシュへの対応」となると、「実行型練習」はそもそも不可能ですから、イメージトレーニングしか手がありません。
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