第20回 考えるためには“情報は邪魔” インプットを遮断しよう実践! 専門知識を教えてみよう(4/4 ページ)

» 2008年11月04日 11時55分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]
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「目をつぶって」の意味するところは

 前回、今回と私は「量感を身につけるためには、目をつぶってイメージを広げてみる」ことが大事だと書きましたが、このあたりで「目をつぶって」の意味を確認しておきましょう。それは、

  • ディレクション系の情報のインプットを一旦遮断する

 ことであって、必ずしも本当に「目をつぶる」必要はありません。ディレクション系の情報というのは前述の通り、脳内情報処理モデルのうちの「C=判断」を経ずに「ああしろ、こうしろ」と、Aに属する指示を直接与えるような情報です。どんな分野であっても一番最初に勉強するときにはどうしてもこれが必要、絶対不可欠なのですが、かといっていつまでもそればかりではいけないのです。

 というのは、この種の指示を受けるとどうしてもS・C系の働きが鈍るからです。Aの「指示」が直接降ってくるなら、SやCが働く必要がないわけですから、当然ですね。だからこそ、情報をいったん遮断しなければならないのです。

 私は現在、企業研修講師を主な仕事にしていますが、教える立場の人間はやはりこれをしっかり意識していなければいけません。例えば講師をしていると

質問 それじゃみなさん、○○はどうなったと思いますか? 少し考えてみてください。

考慮時間 (間を空ける)

解答 はい、実はですね、○○は、こうなったんです。

 のように、質問を振って、ある程度考慮する時間をとってから解答を明かすような段取りを組むケースがよくありますが、こういう場合は「考慮時間」のところで十分な間をしっかり取ることが不可欠です。十分な間をとると「情報のインプットが遮断された」状態に置かれるため、あとは自分で考えざるを得なくなるためです。

 間を取ったとしても短時間ではダメで、「待っていても講師はなにも喋ってくれない。自分で考えなきゃダメだ」と実感できるだけの、長い「間」でなければなりません。通常これには最低10秒は必要で、あとは問題の難易度に応じて適宜コントロールしています。

 もう1度書きますが、ディレクション系の情報はいったん遮断してしまいましょう。「勉強」するときには一番最初に必要な情報ではありますが、いつまでもそれに頼っていてはいけないのです。ある程度勉強したら、S・C・Aを自分の脳内だけで回してみましょう。それをすることで脳内に確固たる「メンタルモデル」が生まれます。知識を単なる情報ではなく、実戦で、現場で生きる知識とするためにはそれが必要なのです。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『図解 大人の「説明力!」』


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