「プロセスマイニング」が社内システムのポテンシャルを引き出す理由

プロセスマイニングによって業務プロセスの処理パターンを蓄積して可視化することで、改善点を特定できる。プロセスマイニングの基本と5つの活用方法を紹介する。

» 2024年04月25日 07時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

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 ITリーダーは、企業の状況を正しく把握することでビジネスを改善できる。そこで注目されているのが「プロセスマイニング」だ。プロセスマイニングによって業務プロセスの処理パターンを蓄積して可視化することで、改善点を特定できる。

 プロセスマイニングは、ERPやSCM(サプライチェーンマネジメント)システム、CRM(顧客関係管理)システムなど、さまざまなシステムで適用可能だ。

 プロセスマイニングの基本と5つの活用方法を紹介する。

プロセスマイニングとは何か

 プロセスマイニングは、手法であると同時にソフトウェアの一種でもあり、「プロセス分析」と言い換えることもできる。あらゆる業務を分析して改善方法を見いだすためだ。

 プロセスマイニングのソフトウェアは、ERPやSCMシステムなどのデータを基に、業務をどのように改善すべきかを判定する。例えば、CRMシステムに顧客注文番号を入力する際にミスが頻発していることを可視化できる。そして、CRMシステムの顧客注文番号がヒューマンエラーによって誤ったものになることがないように、プロセスの自動化を提案する。

 プロセスマイニングは、データを自動で評価してミスを見つけるため、分析のスピードを上げられる。ソフトウェアを使わなければ、従業員が過去半年の顧客注文に目を通してミスを見つけ出す必要がある。

 プロセスマイニングのソフトウェアが、RPA(Robotic Process Automation)などを業務に適用すべきと提案することもある。例えばプロセスマイニングによって、人事部門(HR)による新規採用者の書類提出が頻繁に提出期限後になっていることが明らかになる。プロセスマイニングのソフトウェアは、書類がそろっていない場合にHRスタッフと新入社員に通知するチャットbotの導入を提案するだろう。

プロセスマイニングの5つの利点

 プロセスマイニングの主な活用方法を5つ紹介する。

1.業務の最適化に役立つ

 プロセスマイニングは、改善点の発見による業務効率化に役立つ。

 米国テキサス州ダラスにある調査会社Everest Groupのサンソッシュ・クマール氏(プラクティスディレクター)は、「プロセスオーナー、自動化担当責任者、最高エクスペリエンス責任者にとって、プロセスマイニングの最大の利点は業務改善店の発見だ。組織の生産性や費用対効果、競争力を高められる」と語る。

 プロセスマイニングが効果を発揮するには、企業のデータが正確である必要がある。英国ロンドンを本拠地とするプロフェッショナルサービス企業PwCでデータおよび人工知能(AI)部門のリーダーを務めるブレット・グリーンスタイン氏は、「間違ったデータを基にすることで、ソフトウェアの判断が信用できないものになってしまう」と述べた。

2.コンプライアンスの向上につながる

 プロセスマイニングは企業のコンプライアンスの徹底に役立つ。コンプライアンスが問題になる前にプロセスマイニングでミスを捕捉できるためだ。

 例えば、会計部門の財務データの保存方法が不適切だとする。会計部門のプロセスをプロセスマイニングで分析することで、ソフトウェアがそのことを発見し、ペナルティーが科される前に保存方法の変更を会計スタッフに提案できる。

 また、プロセスマイニングによって、業務運用がコンプライアンスに準拠しているかどうかを自動チェックできることから、従業員の作業時間の節約にもなる。

 クマール氏は「プロセスがコンプライアンスの基準を満たしていることを確認する際、従業員が手作業でくまなく調査する必要がなくなる」と語った。

3.改善の効果が大きい分野が分かる

 プロセスマイニングによって、自動化の効果が最大になるポイントが分かる。

 プロセスマイニングは、自動化すべきプロセスに加えて、特にROI(投資対効果)が大きい自動化ポイントを突き止めることができる。例えば、プロセスマイニングのソフトウェアが自動化を提案するプロセスとして、注文確認メールの自動化と、顧客関係管理(CRM)システムへの注文データの追加があるとする。ソフトウェアは、注文データの入力を自動化するよりも、ROIが大きい確認メールの自動化を先に実施すべきと指摘するだろう。

 クマール氏は、「ROIが大きい自動化の提案は、自動化の責任者がプロセスマイニングを導入する意味付けになるという効果もある」と話す。プロセスマイニングの価値に懐疑的な幹部も、ROIを高める自動化ツールであれば導入に前向きになるだろう。

4.AIを組み込むべきプロセスが分かる

 プロセスマイニングは、AIを導入する業務の判断にも役立つ。

 例えば、プロセスマイニングソフトウェアが顧客の質問にオンラインで対応する生成AIを提案するかもしれない。ただ、それを有効活用するには従業員が生成AIのことをよく理解している必要がある。

 グリーンスタイン氏は「生成AIを導入する前に、従業員のスキルアップに投資したり、生成AIができることの限界を把握したりすべき」と語る。また、小規模なAIプロジェクトから始めることも重要になるという。

5.トラブル対応が改善できる

 プロセスマイニングにより、問題の原因を深く理解できるようになる。

 米国イリノイ州シカゴのマネジメントコンサルティング企業AAreteのバルグ・パンゲ氏(テクノロジーサービス担当マネージングディレクター)は、ある企業の顧客管理システムの構築に携わった。この企業は新システムの稼働後、一次解決率が低下傾向にあったが、プロセスマイニングのおかげで問題点が明らかになり、その結果、顧客満足度が向上したという。

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