「SAPのUXをガラッと変える」 AIアシスタントJouleの全体像とは?

SAPジャパンは2024年4月23日、「SAP Business AI」の最新情報について記者向け説明会を開催した。自然言語処理によるERPの操作によってビジネスプロセスの自動化や予測の高度化を可能にするという。

» 2024年04月26日 07時00分 公開
[三好一葉ITmedia]

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 SAPジャパンは2024年4月23日、「SAP Business AI」(以下、Business AI)の最新情報について記者向け説明会を開催した。SAPの操作性を大きく変えるという「Joule」の概要と、実装のロードマップを解説する。

SAPのUXをガラッと変える「Joule」

 Business AIは全てのSAPクラウドソリューションに組み込まれており、自然言語処理によるERPの操作によってビジネスプロセスの自動化や予測の高度化を可能にする。

 Business AIは、2023年11月にリリースされたJouleや、受注の自動入力や自動品目検査といったビジネスプロセスの生産性を高める「組み込みAI機能」、ERPなどのデータを基にユーザー、パートナー独自にカスタムしたAIのエンジン利用できる「AI Foundation」、NVIDIAをはじめとしたパートナーとのAI機能のコラボレーションなどの機能を備える。

 これらの中でもSAPが注力しているのが、本格的な提供を開始したJouleだ。SAPジャパンの本名 進氏(カスタマーアドバイザリ統括本部SAP Business AI Lead)は「Jouleの強みは操作性にあり、従来のSAPのUXをガラッと変えるものになる。ユーザーは自然言語でどんどん指示を出せるようになるだろう」と評価した。

図1 Jouleのアーキテクチャ全体像(出典:SAPジャパンの提供資料)

 Jouleにガイドを求めることで、ビジネスプロセスの合理化、生産性の向上に役立つアドバイスを得られる。例えば、伝票の作成やデータの抽出といった指示をすると、Jouleが迅速にデータを生成する。

 記者発表会では、Jouleの機能についての詳細や実装スケジュールが公開された他、デモンストレーションが実施された。

 プロジェクト管理を担当するエンドユーザーを想定したデモンストレーションにおいては、利益率などのサマライズや、次に実施すべきプロジェクト毎のアクションの提案といった、活用例が示された。

図2 右側のボックスにてJouleが回答を生成する(出典:SAPジャパンの提供資料)

 2024年4月以降のJoule適用のロードマップも紹介され(図3)、「SAP S/4HANA Cloud private edition」や「SAP Integrated Business Planning」「SAP Integration Suite」への対応が予定されている。将来的には「SAP Ariba」や「SAP Concur」「SAP Signavio」「SAP Build Apps」「SAP Build Process Automation」「SAP Analytics Cloud」などでも実装予定だ。

図3 Jouleを実装するサービスのロードマップ(出典:SAPジャパンの提供資料)

SAPのビジネス戦略はBusiness AIをどう反映する?

 日本でのBusiness AIの展開については、SAPの既存のパートナーを軸に、既存の顧客に向けた支援と具体的なユースケースの提示を予定している。本名氏は「多くのパートナーがAI領域に投資、注力している。パートナーを支援するため、SAPはユースケース作りや、イベントの支援を予定している」と述べた。

 イベントの一つが「SAP BTP Hackathon」だ(図4)。2024年度は43社のパートナー企業から320人以上の参加が予定されており、Business AIに対するパートナー企業のラーニングの場として重視しているという。イベントの詳細やユースケースは、SAPコミュニティーでの共有、活用が構想されている。

図4 ラーニング、ハッカソン、シェアとフェーズごとに開催される(出典:SAPジャパンの提供資料)

 さらに、製品の壁を越えたイニシアチブ化も推進する。

 2024年4月10日にZynasと共同で大分県にオープンした「Zynas Apphaus Oita」では、共同イノベーションのためのワークショップといった試みを通して、SAP BTPにおけるアイデア創出や、顧客のAI活用推進に向けたユースケースの作成などを目指す他、テクニカル系のイベントを開催するなど、最先端技術を活用できる機会を提供する。

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