AIエージェントの乱立、コロコロ変わる規制 2026年「AIトレンド4選」を紹介CIO Dive

AIエージェントが急増し、規制の波が押し寄せ、投資利益率(ROI)の説明責任が強く求められる――。急速に進化するAIに企業はどう対処すべきか。AIに関連する4つのテーマについて、2026年に変化するポイントと対処法を解説する。

» 2026年02月26日 11時50分 公開

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筆者紹介

  • ニコール・ラスコウスキー(Nicole Laskowski)(「CIO Dive」編集ディレクター)
  • ロバート・テレス(Roberto Torres)(「CIO Dive」エディター):ベネズエラ出身。ソフトウェア業界やデータ分析、テクノロジーの未来が専門領域。
  • マッケンジー・ホランド(Makenzie Holland)(「CIO Dive」シニアニュースライター):2015年に米国インディアナ州立大学ブルーミントン校でジャーナリズムの学士号を取得。米連邦政府の技術政策担当記者、『Wilmington StarNews』記者、『Wabash Plain Dealer』記者(犯罪・教育担当)を経て現職。

 従業員の3分の1しかAI研修を受けておらず、半数以上がAIを「使いこなせていない」と感じている――。Jobs for the Futureの調査によると、多くの大企業はまだAIを十分に活用できていないようだ。コンサルティング企業によると、2026年はAIへの投資額の多寡ではなく、企業がAIを「本当に使える状態」にするためのAI戦略を実施できるかどうかによって大きな差が付きそうだ。

 トランプ政権発足以降、AIに関する規制を撤廃しようとする動きと規制を強化しようとする動きが同時進行する複雑な環境の中で、企業はどのようにAI戦略をかじ取りすべきか。調査会社GartnerやForrester Reserch、コンサルティング企業のEY Americasのアナリストらが2026年の4つのトレンドを分析した。

2026年に企業が注目すべき4つのAIトレンド

 2025年、CIO(最高情報責任者)はAI導入の指針となるプレイブックの策定に時間を費やし、規制の動向を注視しながら、急速に進化する製品やサービスを検討してきた。

 2025年におけるエンタープライズ企業の話題の中心はAIだった。技術の急速な進化をめぐる未解決の「問い」は、2026年もCIOを悩ませることになりそうだ。新たな機能が次々と実用化される一方で、企業はAIプロジェクトにおける投資利益率(ROI)を改めて精査し始めている。

 取締役会のメンバーは、複数作業から構成される一連の業務を自動化する「AIエージェント」をどのように管理していくか、ROIをどのように高めるのか、そしてAI規制が事業運営にどのような影響を及ぼすかについて、技術責任者に説明を求めることになるだろう。

 2026年、CIOが注目すべき4つのトレンドは次の通りだ。

1.エージェントの乱立が進み、スキルの棚卸しや評価が求められる

 2025年には、あらかじめ決められたルールに沿って自律的に判断して作業を実行する「エージェンティックAI」が大きな注目を集めた。専門家はエンタープライズ企業におけるエージェンティックAIへの関心と投資は今後も続くとみている。その中で混乱や複雑さとともに、大きな可能性が同時にもたらされる。

 つまずきやすいポイントの一つは言葉の定義が曖昧(あいまい)であることから生じる問題だ(注1)。CIOは引き続き、ベンダーによる「誇張された表現」に惑わされずに、実際に価値を提供できる技術を見極める必要がある。目安となる考え方の一つは、現時点で本当の意味で「エージェンティックAI」と呼べるシステムを提供しているベンダーは存在しないということだ。

 一方、調査会社Forresterのクレイグ・ルクレール氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)によると、2026年にかけてAIエージェントは成熟するという。

 言い換えれば、AIエージェントは段階的に進化するものであり、実行時に新たなツールを作成し、新しいプロセスを確立し、問題を解決できるシステムが最終的な到達点だということだ。AIエージェントは今も進化の途上にある。

 2025年におけるAIエージェントは人間向けに設計されたプロセスを担い、人間は全体を指揮および調整する立場だった。しかし、ルクレール氏によると、2026年には状況が変わる。人間は仲介役ではなく、結果を受け取るエンドポイントとしてプロセスに関わるようになるという。

 「人間は中間的な立場から外れ、AIエージェントがプロセスのオーケストレーターになりつつある」(ルクレール氏)

 同氏は「このような変化は、エンタープライズ企業におけるスキルにも影響を及ぼす」と付け加える。同氏は備えとして、業務プロセスを人間主導からエージェント主導に移行するスピードを反映した、スキル進化のためのロードマップを策定するよう助言している。

 ロードマップの構築においては、新たに求められつつあるスキルや、現在は重要であるものの今後重要性が低下するスキル、そして既に不要になったスキルなどを整理することが求められる。こうした評価を構築する上で、ITリーダーは重要な役割を担うことになるだろう。

 「CIOは、AIエージェントの能力を段階的に成長させるために、事業部門と強固に連携する必要がある」とルクレール氏は述べた。その上で、CIOにはAIエージェントをどのようなステップで進化させるのか、どのような役割や能力を持たせるのか、そしてそれを時間とともにどう高度化するのかを事業部門と共に決めることが求められるようだ。

 2026年にはAIエージェントがより成熟するだけでなく、数も増える。Gartnerのトム・コショウ氏(シニアディレクターアナリスト)が「エージェントの乱立」と呼ぶ状況が生まれるとされている。

 コショウ氏によると、2025年は「信頼できる成果を得るためには、AIエージェントに明確に切り分けられたタスクと適切なデータが必要だ」と、企業が理解するようになった。厳密に定義されたAIエージェント同士が連携してマルチエージェントのワークフローを実行する一方で、それらの管理はCIOにとって頭痛の種にもなり、エージェント管理プラットフォームの登場を後押しすることになった。

 同氏は「複数のAIエージェントの管理を『オーケストレーション』と呼ぶ人もいれば、『観測可能性』や『ガバナンス』と呼ぶ人もいる。私自身はこれを『エージェント管理プラットフォーム』と呼んでいる」と述べた。こうしたプラットフォームには、構築済みエージェントのライブラリに加え、マーケットプレイス管理や観測可能性、コストレポーティング、セキュリティ、それらに関連する各種ツールの機能が含まれるべきだという。

 「ハイパースケーラーからスタートアップ、それらの間に位置するあらゆるSaaSプラットフォームに至るまで、今まさに誰もが何らかの形でこの分野に取り組んでいる」(コショウ氏)

 2026年に向けたAIエージェントに関するもう一つの予測として、コショウ氏は「誰もが度肝を抜かれるような音声AIを作り上げる企業が出てくるだろう」と述べた。

2.エンタープライズ価値の創出を目指し、リスキリングの取り組みが拡大

 2025年、ITリーダーはAIのスケールを進める中で、何がうまく進み、何がうまくいかなかったのかを見極めるために、数え切れないほどの時間を費やした。技術面やガバナンス面の課題が立ちはだかる一方で、導入計画において最も扱いが難しい要素は、往々にして「人」に関わる部分だ。

 従業員がAIに慣れていくにつれ、AIが約束する生産性向上を実現するためには、リスキリングの取り組みが不可欠になる。2026年には、適切なトレーニング施策を実行できるかどうかが、AI導入を成功させる企業と、十分に活用されないツールにリソースを浪費してしまう企業とを分ける決定的な要因になるだろう。

 求人検索エンジンを運営するIndeedのジェシカ・ハーデマン氏(タレントアトラクションのグローバル責任者)は、2025年11月(現地時間、以下同)に開催されたメディア向けバーチャル型ラウンドテーブルで次のように述べた。

 「AIの登場によって、継続的な学習は避けて通れないものになった。高度な技術的専門性だけに焦点を当てるのではなく、全ての従業員が日々の業務でAIをどのように活用できるかを理解できるような学習パスの構築に取り組んでいる」

 教育およびスキル開発サービスを提供するNPO団体Jobs for the Futureの調査によると(注2)、エンタープライズ企業全体でAI施策が広がっているにもかかわらず、従業員向けのトレーニングには遅れが見られるという。「雇用主からAIに関する研修が提供されている」と答えた従業員は全体の3分の1にとどまり、半数以上が「AIを使いこなす準備ができていないと感じる」と回答した。

 従業員のリスキリングを進める動きは既に始まっている。大手金融機関であるCitigroupは、AIをより一層展開する計画の一環として、2025年にAIツールへのアクセス権を持つ約18万人の従業員を対象に、AIプロンプトに関する研修を義務付けた(注3)。小売大手のWalmartは、OpenAIと提携し、2026年に開始予定のAI認定プログラムを立ち上げた(注4)。また、Googleは2025年に、AIの基礎プログラムと合わせて7500万ドル規模のAIトレーニング基金を設立すると発表した(注5)。

 「2026年には、CIOはリスキリングの取り組みを具体的な成果と一致させることにより多くの時間を割くようになるだろう」とEY Americasのアウディ・ロウ氏(コンサルティング・トランスフォーメーション、デジタル戦略、エクスペリエンス担当リーダー)は述べた。

 同氏は「CIO Dive」に対し、「より価値の高い役割、あるいはイノベーションにより重点を置いた役割にシフトする方法を理解するために、従業員のスキルアップが必要だ」と語った。「CIOは自社だけでなくより広範な範囲で、大幅かつ急速なスキルアップが必要になると信じている」

3.大統領令にかかわらず、各州はAI規制への取り組みを継続

 米連邦政府やビックテックからのAI規制に対する反発はあるものの、各州でテクノロジーを管理する法律の制定が続いているため、企業はコンプライアンスの枠組みを縮小すべきではない。

 2025年、州政府によるAI規制法制定を抑制しようとする取り組みは、ドナルド・トランプ大統領による大統領令(「Ensuring a National Policy Framework for Artificial Intelligence」、2025年12月11日署名)で最高潮に達した。2026年にこの影響が現れる可能性は高い。

 この大統領令はバイデン前政権の方針を覆し、AIに対する規制の多くを撤廃し、各州による自主的な規制を「州による経済活動の不当な制限」だとして違憲とするものだ。

 トランプ氏はこうした主張に基づき、「AIのイノベーションを阻害する州法」を制定しようとする州政府を相手取って訴訟するための「AI訴訟タスクフォース(AI Litigation Task Force)」を司法省に創設するよう命じた。ただし、調査会社Forresterのアラ・バレンテ氏(プリンシパルアナリスト)によれば、どのような法律が訴訟の対象になるかは依然として不透明だ。

 バレンテ氏はAI規制に関する大統領令について、「トランプ大統領が何を『制限的で負担が大きい』と定義するのか、どの州法に異議が唱えられるのかは不明だ」と述べる。

 大統領令が各州の規制能力に脅威を及ぼす可能性はあるものの、各州の議会がAI規制法を可決する動きは続いている。

 ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は2025年12月19日、フロンティアAI(最先端の大規模AIモデル)開発者向けの安全性と透明性の枠組みを確立する法案「RAISE Act(Responsible AI Safety and Education Act)」に署名した。これにより、企業は安全性プロトコルに関する情報を公表することが義務付けられることになる。フロンティアAI開発者は、重大なインシデントが検出されてから72時間以内に州への報告が求められる。同法は2027年1月1日に施行される予定だ。

 全米に目を向けると、2026年1月1日には「テキサス責任あるAIガバナンス法」(TRAIGA:Texas Responsible AI Governance Act)が施行された。同法は自傷や他害、犯罪行為を促すための行動操作、差別禁止法で保護属性とされている人々に対する差別、ならびに違法な目的(児童ポルノを含むディープフェイクの作成など)のためにAIシステムを開発、展開することを禁止している。

 また、ニューヨーク州がモデルとしたカリフォルニア州の「フロンティア人工知能透明性法」(TFAIA:Transparency in Frontier Artificial Intelligence Act)も2026年1月1日に施行された。ハイリスクAIシステムを規制する「コロラドAI法」(Colorado AI Act:Concerning consumer protections in interactions with artificial intelligence systems)は2026年6月30日に施行予定だ。

 連邦政府にも、AIシステムが安全で信頼でき、意図通りに動作するかどうかをテストするという点で「AIシステムを評価すべきだ」と考える超党派議員が存在する。ジョシュ・ホーリー上院議員(共和党、ミズーリ州選出)とリチャード・ブルーメンタール上院議員(民主党、コネチカット州選出)は、2025年9月に「人工知能リスク評価法」(Artificial Intelligence Risk Evaluation Act)を提出した。これは、エネルギー省(DOE)にフロンティアAIモデル開発者の参加を義務付ける高度なAI評価プログラムを創設するものだ。

 デジタル法専門の法律事務所Metaverse Lawを創設したリリー・リー氏によれば、2026年に向けてAIシステムを開発・導入する企業は、新しいAI法だけでなく、カリフォルニア州の「自動意思決定技術」(ADMT:Automated Decision-Making Technology)規制のようなAI隣接分野の規制にも注意を払う必要がある。どの法律がトランプ氏の大統領令の範囲に収まるかが不明確だからだ。ADMTとは、消費者に関する自動的な意思決定(ターゲティングや信用評価など)に使用される技術を広く指す概念だ。

 「これらは、消費者に関する自動意思決定を実行するために、企業がどのように個人情報を処理するかを規定している」とリー氏は語る。「それらにはリスク評価や開示、多くの更新された通知要件が必要とされる」

 「コロラドAI法」のような広範な州AI法によって企業は、AIシステムの透明性と文書化要件の範囲を理解することや、どのリスク評価を企業が実施し、どの程度のリスクがあった場合に州の規制当局に報告するかを決定することになると同氏は指摘した。「もっとも、トランプ政権によって州によるAI規制法の施行が阻害される可能性はあるが……」(リー氏)

 企業は、AIモデルのトレーニングにどのようなデータを使用しているかを把握し、AIシステムのロジックとパラメーターを理解する必要がある。

 「州規制当局に対して企業がAIのリスク評価とインシデント報告をする義務については、トランプ政権によって厳格に精査されるだろう。しかし実際には、州政府による厳しいルール制定をトランプ政権が阻もうとする試みがどれだけ成功するかについては、多くの変動要素がある」(リー氏)

4.CIOにはROI創出に向けたさらなる圧力がかかる

 CIOの役割自体は2026年に大きな変革を遂げるわけではないが、成果創出にかかる圧力はかつてないほど高まっている。変化をもたらす機会もまた、かつてないほど大きくなっている。

 Gartnerのクリスティ・ストラックマン氏(バイスプレジデントアナリスト)は、「CIOにとっての課題を一言でまとめるとすれば、『いかに生き残り、どこで繁栄するか』を見極めることだ」と述べた。

 CIOは膨大なテクノロジーへのニーズと、AIツールをより速くより高品質で提供し、ROIを実現するという期待に直面することになるとストラックマン氏は指摘する。生き残るために、CIOはIT部門がどのようにそれらの要求に応えるかを考え出し、目標を実現するために迅速かつ、時には苦痛を伴う決断を下さなければならない。

 成果を創出するためには、まずビジネスが必要としているものを評価することから始めるべきだ。「唯一の出発点は、自社は何をしようとしているのか、どれほどの速さでそこに到達しようとしているのか、そして何が差別化要因になると考えているのかを問うことだ」(ストラックマン氏)

 AI活用のニーズが大きい一方で、予算の制約は厳しいため、全てをこなすことはできない。そのためCIOは価値を示せる業務を探し、パイロットプロジェクトで実験を重ねるべきだという。

 IT人材に特化したヘッドハンティング会社であるHeller Searchのマーサ・ヘラーCEOにとって、2026年はついにデータが正当な評価を受ける年になるかもしれない。

 長年の企業買収や、強力なデータ基盤なしに収益を維持しようとする経営スタイルを経て、企業は今、転換点に立たされている。膨大なデータはあるものの、価値は全く生み出せていないという状況を変えることがCIOに期待されている。

 「2026年におけるCIOの役割は、この役職が発明されて以来の役割を果たすことだ。プロセスを自動化し、データを生み出し、価値を創出すること。それが常に仕事だったのだ」(ヘラー氏)

 2026年がこれまでと違うのは、CIOが「なぜデータ資産が企業の成功に不可欠なのか」を説明する必要がなくなったことだ。2022年に登場したOpenAIの生成AIツール「ChatGPT」が、それを証明してくれたからだ。

 CIOに課せられている挑戦は、「最高テクノロジー変革責任者」として分散しているデータ環境を統合し、従業員がAI活用を前提とした新しい働き方を実現するためにスキルアップする道を切り開くことだ。「経営陣に対して『データとAIの物語』を語り、彼らが理解し、避けられない存亡の分岐点に備えられるようにすることも重要だ」とヘラー氏は力説する。

 「かつて巨大小売チェーンとして君臨していた『RadioShack』や『Blockbuster』を覚えているだろうか。データ基盤が整備されていなければ、彼らと同じ轍(てつ)を踏むことになる。われわれは今後、持つ者と持たざる者の格差を目の当たりにするだろう」

 彼女はCIOに対し、過去に彼らが経験した「変革の瞬間」を思い出させ、過去に何がうまくいったかを振り返るために、DX(デジタルトランスフォーメーション)でデジタルをビジネスに統合した際の成功の型を「読み直す」よう勧めた。さらにAIへの移行を「チームスポーツ」にすることを促した。

 「AIはビジネスリーダーになるためのポータル(入口)だ。なぜなら、AIはテクノロジーであると同時に、絶対的な『能力』だからだ。その一歩を踏み出してほしい」(ヘラー氏)

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