パーソナルな海外進出 動機編樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

若者たちよ、こんなに狭い(が楽な)日本でウジウジするより、広い(が苦労も多い)海外へ進出してはどうだろうか。ただ、すべての人にとって海外進出がベストな選択肢ではない。これから質問するので、自分の海外進出の可能性を考えてみてほしい。

» 2008年11月21日 21時00分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 若者たちよ、こんなに狭い(が楽な)日本でウジウジするより、広い(が苦労も多い)海外へ進出してはどうだろうか。ただし、すべて自己責任だ。

 今、この原稿を書いているのは、カナダのトロントの小さなホテル。バンクーバーから大陸横断鉄道カナディアン号で3泊4日の旅のはてに、昨夜遅くトロントに到着した。

 カナディアン号は、ロッキー山脈から中部の湖沼地帯4400キロをうねうねと走り抜ける最大時速130キロの列車だ。果てしなく広がる美しい景色と、無数の湖、様々な乗客たちと旅をしていると、何と日本の狭いこと、小さいことを体感できる。もちろん4400キロだって、日本の新幹線なら数十時間で走破できるのだが……。

 ともあれ、カナディアン号から見た雄大な景色に触発された筆者は今回、Biz.ID読者たちに海外進出の可能性を提案しようと考えた。ただ、すべての人にとって海外進出がベストな選択肢ではない。これから質問するので、自分の海外進出の可能性を考えてみてほしい。

現在の仕事や生活に「どんづまり」を感じている

 ビジネスでも私生活でもあまりに行き詰ってしまうと人は絶望してしまう。そんな人が飛び込み自殺などを試みるわけだが、自殺するくらいなら、海外に出かけることをお勧めする。

 人間、昨日のことや明日のことを心配するのだ。安定した日本の生活とは異なり、海外の生活では「いかにその日を食べていくか」が重要になる。悩んでいる暇はないのだ。自然と、生きることの意味も分かろうというもの。広い世界、あなたを必要としている人たちがたくさんいることも理解できるはずだ。

失恋、家族関係、会社などの人間関係で苦しんでいる

 人間関係に苦しんでいる時の解決策としての海外渡航は、明治時代からよく行われた。芥川龍之介が多数の女性問題で悩んで、大阪毎日新聞に頼んで、中国に長期出張させてもらったのは有名だ。数年もの間、海外に出ていけば、どんなこじれた人間関係にも冷却期間をおけるわけだ。ただし、この間に彼は余計に体を壊して帰国している。

 筆者が現役だったころは、若い既婚者や恋人がいる部下には、赴任国のいかんを問わず、家族を帯同することを勧めた。海外駐在を単身赴任している間の、男女恋人間、夫婦間、親子間の隔絶は、どこかでひずみを見せることになりかねないからだった。

自分の人生を“Change”したい

 海外で長期生活を過ごせたら、新しい言葉を覚え、その国の自然、社会、経済を知ることになる。日本に帰国して、その国に関係した仕事、その国の言語を使った仕事につければ、それも人生を前向きに変革するだろう。まして、海外に滞在している間に得た人間関係を活用できれば、今まで考えられなかった人生が始まるかもしれない。

自分の能力の可能性を試したい

 慣れ親しんだ日本での生活と違い、毎日あなたの能力と努力と勘を試される。当然、あなたには無限の可能性が広がっているが、同時にかなりの危険も存在する。ハイリスク・ハイリターンの世界だ。

好奇心がある

 好奇心で海外に出かけるのは短期の間は良いだろうが、好奇心だけを基盤として、長期の海外生活の場合は、途中で息切れするかもしれない。

日本の政治・経済に嫌気がさした

 確かに同感のこともあるが、海外に出てみると、もっとひどい政治や経済の国がたくさんある。むしろ海外に出ると、日本の政治や経済が光ってしまうのだ。安全面は特に日本の良さを感じるだろう。

独りになりたいから

 独りになるために出かけたはずなのに、すぐさびしくなって、友を求める人がいる。時には現地で異性との関係も成立し、それからしばらくして、その人間関係の清算のために、逆に帰国することもある。もちろん不幸なケースだけでなく、極めて幸福な場合もたくさんあることは付記しておく。


 若者の海外進出にも、いくつかのパターンがあるはずだ。どんな選択肢を選ぶかはもちろん自由。ただ、人生の選択はあくまで自己責任。片道の航空券だけで「現地で働けば良い」と飛び出してみると、これは相当きつい。スキルがあり、身分が保証されているならまだしも、それまでの貯えや親からの支援もなく、まして海外での縁故もなく、急に飛び出すのは、その国でも最低に近い生活レベルに陥りかねない。

 旅費に不自由な場合、その多くが、(1)耐えられないで日本に帰国する、(2)生活レベルを落とし、自尊心を捨てて生活する、(3)犯罪もしくは犯罪すれすれの行為に手を染める、(4)体を壊す――という恐れがある。

 もちろんそのような旅も耐え抜き、働き始めたり、金がなくても留学する超人や秀才やタフガイはごくマレにいる。だが、普通の人が海外に出るには、ある程度、準備と計画が必要なのだ。

 なので来週以降は、渡航目的の設定から、渡航先の選択、資金計画などについて解説する。本来長期の海外は、ほとんどの人に得るところが豊富で有意義な、人生の転換点になるはずだ。

今回の教訓

3連休に可能性をちょっと考えてみる――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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