「お買い物リストならGmailでもいいけれど」――FileMakerでできること

SMB向けデータベースソフトとして知られる「FileMaker」は、現場ではどのように受け入れられているのか、日々の業務をどう変えるのか。来日したグピール社長に聞いた。

» 2009年01月08日 21時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 「『今の仕事環境には特に不満はないけど、あったらあったで便利そうだし』――そんな理由でFileMakerを買う人はいない」。米FileMakerのドミニク・グピール社長はそう言い切る。Microsoft Accessなどと並ぶ、SMB向けデータベース(DB)ソフトとして知られる「FileMaker」は、現場ではどのように受け入れられているのか、日々の業務をどう変えるのか。来日したグピール社長に聞いた。

来日した米FileMakerのドミニク・グピール社長

本当にFileMakerじゃないといけないの?

 「FileMakerを購入する人というのは、なんとなく『このソフトがあったら便利かも』と考えているわけではない。必ず、実際に何か解決したい問題を頭に描いている」(グピール社長)。ビジネスパーソンがFileMakerを使って解決できる問題は、大きく分けて次の3つだという。

 1つ目は、人間関係の管理。顧客や取引先、営業担当、同僚などの連絡先や住所を管理するという使い方だ。2つ目はプロジェクト管理。プロジェクトの詳細やToDoリストに関連付けた作業を整理し、進捗状況を同僚と共有する。3つ目は「DBのより伝統的な使い道である」資産管理や製品の在庫管理だ。

 こうした情報の管理を行うには、Excelなどのスプレッドシートを使うという方法もある。最近はOnsheetなど、共有作業を前提としたオンラインサービスも増えてきた。また、連絡先管理はGmailなどのメールサービスで一元管理しているという人も多い。DBソフトがそもそも得意としていた共同作業などのメリットは、オンラインサービスでは代用できないのだろうか。

「Gmailでもいいと思う、週末のお買い物リストを作るだけなら」

 連絡先の管理にメールソフトを使っているという人は多いだろう。Gmailのような大容量のWebメールであれば、ファイルを添付すればストレージに、ときにはToDoリストやスケジューラーのような使い方もできる。DBソフトでできることは、例えばGmailでは代用できないのだろうか。

 「DBソフトのアドバンテージは、やはり機能の豊富さにある。例えばカスタマイズが可能なこと、スクリプトを実行できること、セキュリティ。音楽や画像、PDFとあらゆるデータを扱えて、この文書を見られるのは誰と誰、といったアクセス権限の設定ができるのも強みだ」

 「20年間に渡って作り続けているFileMakerには、ビジネスの現場で必要となるさまざまなノウハウが盛り込まれている。週末のお買い物リストだけ作りたいというのなら、FileMakerはいらないと思うけどね」

「あなたの仕事の1番の専門家はあなただ」

  FileMakerを利用するグループの人数は、1〜2人から数万人までと幅広い。だが、実際には大企業の各部門や中小企業など、数十〜数百人程度のワークグループで使われている例が多いようだ。

 「通常、大企業などではIT部門があって、OracleやSAPなどのDBソフトを全組織に対応させていく。一方で、全組織にはあてはまらないようなニーズ、例えばセールスマネージャーならセールス会議のためのリポート、マーケティングマネージャーならキャンペーングッズを作りたいというニーズがある。そういったニーズは通常、IT部門では面倒を見てくれない」

 FileMakerは、こうした細かいニーズを、システム開発などを行わずに担当者が1人で解決するためのソフトだという。「問題を解決するために、ソフトにやってほしいことは何なのか。それを最もよく知っているのは“あなた自身”のはず。あなたがあなたの仕事の1番の専門家なのだから。問題を自分で解決するための“能力を提供する”こと、それこそがFileMakerの哲学なんだ」


 1月6日には、ユーザーインタフェースの改善などでユーザビリティを向上させた最新版のバージョン10が登場した。「ここ10年で最も大きく変わった」というバージョン10は、「シンプルに使えて、望む人には望むだけの機能を提供するパワフルなもの」を目指したという。

 「FileMakerのユーザーは、常に問題意識を持ち、自ら率先して問題の解決を図るビジネスパーソンが多い。値段が手ごろなBento(個人向けDBソフト)はカジュアルに買っていく人も多いようだけど、FileMakerは“Considered Purchase”(よく考えた上で購入)されているんだ。ユーザーが自分で考えて、問題のソリューションにぴったりのものを自分自身で作り出す――それは自分の仕事に対する情熱の証だ。我々としても、そうした使い方をされることを大変な誇りと考えている」

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