クラウドコンピューティングが注目される3つの理由――「コスト」「柔軟性」「敏捷性」クラウド・ビフォーアフター

「クラウドっていうのはIT業界の宣伝文句じゃないのかい?」いえいえ、注目されるにはそれなりの理由があるのです。

» 2010年06月01日 19時24分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

 「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」が注目を集めています。例えば、2009年ごろから「昨今の不況がクラウドの普及を後押ししている」「クラウドによって、企業はITの所有から、ITの利用へとシフトする」といった議論を耳にしたことはないでしょうか。

 クラウドというキーワードが使われ出したのは2006年末からですが、それ以前より概念そのものは存在していました。そのため、「クラウドというのは、IT業界の宣伝文句(バズワード)ではないのか」と疑問視する人もいます。しかし、クラウドコンピューティングは、確実に企業のITへの関わり方を変化させています。

 今月は、「クラウド・ビフォーアフター」と題して、クラウドを導入すると、普段の業務がどのように変わるのかを特集していきます。まずは、クラウドコンピューティングを読み解くためのキーワードを紹介します。

クラウドコンピューティング

 クラウドコンピューティングとは、インターネットを使って、ハードウェア、ソフトウェア、あるいはデータそのものといったITリソース(資源)を必要なときに、必要な分だけ利用するものです。ユーザーは、インターネットへの接続手段(接続回線とブラウザ)だけで利用できます。

 クラウドとは雲(Cloud)のことです。これは、インターネットを図示するときに、雲のイメージで描いていたのに由来します。「インターネット」と一言でいったときに、メールのやり取りやWebページの閲覧、オンラインショッピング、コミュニケーションツールのようにさまざまな利用形態が含まれるように、クラウドも使い方に応じて階層化できます(SaaS、PaaS、Haas/IaaSなどです。詳細は、次回説明します)。

「XaaS」といっても、どこまでクラウド化するかによって呼び方が異なるだけ

 さて、クラウドコンピューティングで提供される多くのサービスは、無料であったり、有料であってもユーザーID単位や利用時間による従量制であったりします。「必要な分だけ、使った分だけ利用料金を支払う」という面で、従来型のITインフラの導入(パッケージソフトウェアや、サーバなどのハードウェアの購入)に比べて、コスト削減効果が大きいといわれます。

 しかし、クラウドコンピューティングの利点は金銭面だけではありません。それは、「柔軟性の高さ」と「俊敏性の高さ」です。

 例えば、社員のPCにパッケージソフトウェアを導入する場合、「業務で利用するかもしれないから」という理由で、人数分のソフトウェアを購入してインストールすることはないでしょうか(実際に、使われているかどうかは分かりません)。

 また、社員が増えれば、そのつど新規購入したり、余っているソフトウェアを倉庫で探したりしていませんか。そして、IT管理部門や総務部門の担当者は、ソフトウェアがきちんとインストールされ、アップデートされているのかといった、ライセンス管理に追われていませんか。

 これらは、クラウドの1形態であるSaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)を活用することで解決できます。例えば、経済産業省の支援によって構築された「J-SaaS」には、中小企業の業務で必要となりそうなアプリケーションが揃っています。

 また、基幹業務システムや各種サーバ(メールサーバやファイルサーバ、アプリケーションサーバなど)を導入する場合、ハードウェアやアプリケーションの見積もりから選定、購入、構築といった期間が必要となります。そして、導入後のメンテナンスにかかる人的コストは、ずーっとのしかかってきます。

 これらは、PaaS(Platform as a Service:サービスとしてのプラットフォーム)やIaaS(Infrastructure as a Service:サービスとしてのITインフラ)、あるいは、これらを組み合わせた「クラウドホスティング」サービスなどを利用することで改善できます。ほとんどのサービスで、システム拡張を7営業日以内で対応します。

 いま、クラウドが注目されているのは、上記のような従来のやり方では、「急に業績が伸びたので、社員を増やすぞ」「イケイケドンドンで、サーバを増強しよう」、あるいは「景気が急激に悪化した。残念だが、企業の存続のために、この事業から撤退しよう(残った資産はムダになるなあ)」といった急激な変化に対応できなくなっているからです。

 次回は、クラウドの使い方に応じて分類されるSaaS、PaaS、Haas/IaaSについて、具体的なサービスを交えながら紹介します。

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