イノベーションは誰でもできる――USBメモリの発案者が話す「先入観を壊すコツ」(前編)コクヨ「WORKSIGHT LAB.」(1/2 ページ)

「実は“イノベーション力”において、日本人は本来“最強”なんです」と話すUSBメモリなどの発案者としても有名な濱口秀司氏(Ziba戦略ディレクター)。一体どうすればイノベーションを起こせるようになるのか。

» 2012年08月27日 21時50分 公開
[三河賢文,Business Media 誠]
Zibaの戦略ディレクターである濱口秀司氏

 コクヨとコクヨファニチャーは8月24日、近未来の「働き方と学び方」の研究開発を強化することを目的に「WORKSIGHT LAB.(ワークサイトラボ)」を設立し、東京・渋谷のヒカリエにてワークサイトラボ設立記念のオープニングイベント開催した。USBメモリなどの発案者である濱口秀司氏(Ziba戦略ディレクター)が登壇し、「イノベーションをどう起こしていくか」について話した。

イノベーション力を発揮するための2つのこと、5種類の人材

 「実は“イノベーション力”において、日本人は本来“最強”なんです。ただしそれには、2つのことを克服する必要があります」という。濱口氏が言う「2つのこと」とは次の通り。

  1. フレームワーク:物事をどうとらえるかが大切
  2. マネジメント:イノベーションは不確実性を伴うので、経営者は解析しづらい

 さらに濱口氏は「組織には5種類の人間がいて、そのいずれもが大切だ」という。5種類のタイプとは、

  • 0→1:何もない状態から、新たな何かを作り出すことが得意な人
  • 1→10:出来上がった新しいものを、とにかく立ち上げる人
  • 10→10000:立ち上げたものを大きくする人
  • 10000:保持する人
  • 10000→10001:少しずつでも大きくする人

 ――である。例えば濱口氏自身は「USBフラッシュメモリの発案」や「イントラネットを日本で最初に開発」「イオンドライヤーの開発」などの実績から、0→1の「何もない状態から、新たな何かを作り出す」や1→10の「出来上がった新しいものを、とにかく立ち上げる」ことに適性があったというわけだ。

 このほか濱口氏は、米国のコールマンやFedExでも活躍した。特にコールマンでの取り組みが面白い。「アウトドア用品を扱っているコールマンですが、売り上げが伸びずにいました。コールマンの使命は、過酷な状況から人間を守るのこと。そこでアウトドアではなく、インドアで人間を守ることはできないかと考えたんです」

 普通に考えると安全な家の中だが、そこで人間を守るのだという。そのために目を付けたのが火災報知器だった。「火災報知器というと、以前は店頭にとにかく装置が並んでいて、人々は値段を見ながら適当に選んでいました。そこで私は、キッチン用や寝室用、子供用といった具合に部屋ベースのコンセプトを出したんです」。結果、1年目でマーケットシェアの39%を一気に奪ったというから驚きだ。

「バイアスを壊す」ことは「誰でもできる」

 部屋ベースの火災報知機という価値を生み出したことは、まさにイノベーションと言えそう。こうしたイノベーションにはさまざまな定義があるが、濱口氏が言うには「イノベーティブであるための3つの要件」があるという。

  1. 見たことや聞いたことがない:誰かが「見たことある、聞いたことある」はイノベーションではない
  2. 実行可能である:ビジネスである以上、実行できなければ意味がない
  3. 議論を生む(反対/賛成):全員賛成あるいは反対のものはイノベーションではない

 ここで大事なのは1の見たことや聞いたことがないものを作り出すこと。一見難しそうだが濱口氏は「誰でもできる」という。

 「何事も脳が判断します。人間の頭脳には一定の先入観(バイアス)が存在するため、『見たことや聞いたことがない』ものを作るには、そのバイアスに対抗する反対側のものを作り出せばいいのです。イノベーションで一番大切なことは、このバイアスを壊すことだ」

 バイアスを壊すことは、いわば自分の脳との戦いだ。だからこそ、そのアイデアを実行しようとすると先が読めなくなる。自分が知っていることを実行しようとすると大体の結果が数字で見えてくるが、バイアスを壊したアイデアは不確実性が出てくる。不確実なものに人間は合意できない。他人のアイデアならなおさらである。従って、不確実なアイデアに対して議論することになるわけだ。

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