新たなビジネスチャンスを呼び込む魔法の言葉――「他に何かありますか?」田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年08月08日 11時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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新しい会話の鉱脈を見つけるきっかけに

 そういえば、以前、ある通販会社に電話をかけて「届かなくなったカタログを再度送付してほしい」と依頼した時のこと。住所などの確認したあと、即日で送ってくれることになった。用件も済んだので、電話を切ろうとした私は、オペレーターから、「他に何か気になっていることはありますか?」と質問された。その時、ふっと『あ、あれ、注文しようと思っていたんだ。ずいぶん前のカタログで見かけたから、もう在庫もないだろうけれど、ダメもとで訊いてみるか』と、すっかり忘れていたある商品の存在を突然思い出し、口にしてみた。

 しばらく調べていた担当者は、「あ、ありました! このお電話でこのままご注文もお受けできますが、どうなさいますか?」と聞いてくれた。それは以前、買おうか迷っていたもので、まだ在庫があるとなればこれも何かの縁。すぐ「はい、お願いします」と、その場で注文したのだった。

 オペレーターが「カタログの送付再開」だけを受けて電話を切っていたら、この買い物は成り立たなかった。私自身も「以前、購入を検討して迷っていた何か」について思い出すこともなかっただろう。

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 どうということのない「問いかけ」だけれど、「他に何か?」は、とてもパワフルな質問だ。こう問われたら、まず間違いなく、誰もが一度は頭の中でそのことを考える。

 人はいつでも明確なアジェンダ(話したいこと)を持っているとは限らない。自分では全部話しきったつもりでも、相手に「他に何かありますか?」と問いかけられたら、そこで改めて思考を巡らし、思い出したことを言語化することも多い。

 聴き手の側も、相手が何か一つの話題を話し終えると、つい安心してしまい、それ以上突っ込まないことがほとんどだ。しかし、ここで「他に何かありますか?」と尋ねてみれば、新しい会話の鉱脈が見つかることもある。そして、もしかしたら、「他に何か?」に対して相手が話したことのほうが、実は本題よりも重要だったりするケースもあるだろう。

 だから、その時のアジェンダが済んだからと安心せず、いつでも、「他に何か?」と尋ねてみることは重要だ。そこから始まる何かがきっと見つかる。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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