もしもあなたが“営業マン”だったら……? 1回目の商談では余韻を残すため、仕事の話はしないで帰りましょう。売ろうとして焦ってはいけません。まずはお客さまと向き合い、相手をじっくり観察するのです。
本連載は、上田比呂志氏著、アスコム刊『「気がきく人」の習慣』から一部を編集・転載しています。
東京・荒木町で大正時代に創業した料亭「橘家」で生まれ、幼いときからおもてなしのいろはを教わり、成人後は三越やフロリダのディズニーランドで気遣いの極意を学んだ著者による「気遣いのコツ」を紹介します。
気遣いができるようになると
・上司、先輩に可愛がられる
・人間関係がうまくいく
・異性にモテる
・仕事がうまくいく
・お金が貯まる
・人生が変わる
など、さまざまな点でうまくいくようになります。
相手を喜ばせ、自分にとってもうれしい結果が待っているいいことづくめの「気遣いのコツ」を学んで、「気がきく人」の仲間入りをしませんか。
お客さまとの商談の席で、行うべき気遣いはいくつもあります。
例えば、お客さまの自宅を訪問するセールス。それも1日に何件か訪ねるような営業マンならば、まず気をつけたいのは「靴下」です。特に、男性は気を配りたいところ。できれば、カバンの中に訪問先の数だけ、履き替え用の靴下を準備しておきましょう。そして、いつも直前に履き替えて、洗いたての靴下でお客さまのお宅に上がるのです。これもひとつのしつらえです。
お客さまの家に上がるというのは、それほど気を配り、襟を正さなければならないことだと自分に再確認させるのです。スーツやシャツ、靴に関しては、自分の快不快ではなく、相手が見て印象の良いものを選ぶこと。営業にとって第一印象で相手に与えるイメージはとても需要です。できれば素材の安さが見えてしまうような品物ではなく、自己投資としてある程度のスーツをしつらえておきたいものです。
小さな鏡を持ち歩き、訪問直前に髪を整えたり、笑顔をチェックする。これを習慣にすることで、心が整います。
気遣いのできる営業マンは、情報という手土産を用意するものです。
事前にリサーチできるのであれば、お客さまが今、興味を持っていることについて有益な情報を持って行くこと。あるいは、ご家族がどういうものに興味をお持ちか、調べられた範囲で情報をお届けるのが、商談前のおもてなしとなります。
とはいえ、こちらから話し過ぎるのはいただけません。10の会話があったとしたら、こちらからの話は1か2で十分。大切なのは、いかに聴くかです。
人はリラックスして話すことができると承認欲求が満たされ、おもてなしを受けたという気持ちになります。ですから、9聴いて1返すくらいの気持ちで、なおかつ気のきいた1を返せればすばらしいでしょう。
相手が趣味の話をされたなら、「私もこういう経験がありまして、共感しました」と返すと、お互いの距離が近づいていきます。
それでも1回目の訪問、1度目の商談などで、商品の話をする必要はありません。お客さまの情報をストックするための場と考え、耳をかたむけ、想像力を膨らませましょう。
家族構成や趣味、週末の過ごし方、ペットの有無――。こうしたことをただ聴き出すだけ。こちらの売りたい商品のことなど語らなくていいのです。
意図を持った質問をしていくことで、何度かお会いするうち、その人に合った商品が見いだせるはずです。1回目は徹底的に聴いて、
「すごくためになりました。いいお話をありがとうございます」
「よろしかったら、もう一度お会いしてご提案させていただければ」
と伝えます。すると、
「あの人は商品の話は一切しなかったな」
「こっちの話を聞いて、勉強になりましたと言ってニコニコして帰っていった」
「気持ちいい人だったな。また話してみようか」
と、感じてもらえるはずです。お客さまの懐に入り、余韻を残し、お別れして、また会いたいと思っていただければ最高です。
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