人材育成には知恵より“知識”が大事 教え方に演出を:プロ講師に学ぶ、達人の技術を教えるためのトーク術(3/3 ページ)
「情報化が進んだ現代では、知識は検索一発で手に入る」なんて間違いです。人材を育てようとするならば、「知識を教えること」は避けられません。「知識を教える」時に講師の立場でできる「一工夫」を紹介します。
体験再生型の演出は楽じゃない
ちなみに、この種の体験再生型の演出は、聞くほうは楽でもそれを準備する講師の方はかなり大変です。例えば今回例に挙げた「なぜかガラパゴス諸島は赤道直下なのに暑くない?」という疑問にしても、「あれ? 意外に暑くないんだね?」という疑問を持たせられるような都合のいいデータはなかなか見つけられませんでした。
当初は赤道直下の土地をほかにいくつか探して気温を調べれば十分だろう、と思っていたのですが、例えばケニアのナイロビは19度、エクアドルのキトは16〜17度程度と、赤道直下のくせに涼しいところが多いのです。というのは、赤道直下のそれらの有名な都市は高地にある場合が多く、その分涼しいんですね。これでは、「ガラパゴスは暑くない?」という疑問を引き出すためのデータとしては使えません。
実際にこういう「疑問」を引き出せるような体験再生型の演出をしようとすると、こんなふうに注意深くデータを選んでこなければいけないケースが大半です。だからこそそれは豊富な知識を持った「講師」にしかできないことであり、学習者自身が自力でやろうとしてもまず不可能なのです。
疑問が出たら次は? はい、謎解きですね
さて、普通は「疑問」が出たらその答えを探しますね。
そこで、「ガラパゴス諸島は赤道直下なのになぜ暑くないの?」という疑問にも答えなければなりません。その答えは
フンボルト海流という寒流の影響があるから
というものなのですが、ただ、こう答えて終わり、というのもちょっと芸がなさそうです。せっかくガラパゴス諸島なんていう珍しい地域を引き合いにしているんですから、もう少しドラマチックな謎解きをしたいところ。
次回は、「疑問」の後でドラマチックな謎解きをする例をご覧いただきましょう。ガラパゴスの謎、解決編をご期待ください。
筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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