周りに「本物」が残るとき――看板を捨てた人が得るチャンス:アラフォー起業家の“継続拡大”人脈術
わたしに異様にぺこぺこしていた人たちは、転職した途端にすごい勢いで周りから消えていった。これでもう孤独になってしまうかと思ったとき、周りには本物の友人が残っていた。
「あの人は予算を管理してるから、広告を出してもらえる」「あの人は記者だから、記事を載せてもらえる」などの理由で、たくさんの人がニコニコと近づいてくる。あまりに周りがチヤホヤしてくれるので、まるで自分がすごくて、実力があって、好かれているのだ、という錯覚に陥ってしまう。
わたしの経験を話そう。マーケティング予算を管理していたころは、いろいろな人が会いに来た。記者をしていたときは、あの手この手で記事を書かせようとする、やたらと親切なPR会社の人も寄ってきた。
結果として、異様にぺこぺこしていた人たちは、私が転職したらすごい勢いで周りから消えていった。結局彼らは、わたしを見ていたのではなかった。わたしに親切にしたり、仲良くなったりすれば、媒体に記事が載るからぺこぺこしていただけなのだった。
20代半ばで異様に天狗になっていた自分に気づき、また「看板」(雑誌名や会社名)がないと自分の存在が余りに小さいという現実に気づいた。自分の周りから人がすーっといなくなり、これでもう孤独になってしまうかと思ったそのとき――損得勘定だけにとらわれない仲間が、わたしの周りに残っていたのだ。「相手と仲良くすれば、得をする」と考えて近づいてくる人は去り、仕事だけのつながりの人も去り、損得勘定に縛られない「継続人脈」ともいえる人間関係が残ったのである。
最近周りで転職や退職をする人が多くいる。その人たちへわたしが送る言葉は「チャンスですよ。本物の友人や人脈が分かりますよ!」である。利用しようと近づく人や、仕事だけのつながりの人は、あっという間に周りから去っていくので、人間関係がすっきりして本物が残るのである。
もちろん、中にはショックを受ける人もいると思う。親身になってくれているように見えたあの人も、結局は去ってしまったのか――そんな風に。でも、それに気づけただけでも儲けものだ。
不思議なことに、周りから人がいなくなってできた隙間には、新しい人間関係が入り込んでくる。去って行ったのは誰で、周りに残ったのは誰か。それを確認した上で、また新たな場所での地位を確立していくのが良いだろう。
最後に一言付け加えておくと、お金の匂いを敏感に嗅ぎわけるのは、実は「去って行く人たち」であることのほうが多い。彼らのような人が再び寄ってきたら、自分の関係しているビジネスがうまくいっているという証なのかもしれない。
著者紹介:加藤恭子(かとう・きょうこ)
IT誌の記者・編集者を経て、米国ナスダック上場IT企業の日本法人にてマーケティング・広報の責任者を歴任。外資系企業ならではの本社へのリポートの方法や、離れた地域にいる国籍の違う同僚とのコミュニケーションを通じて、効率よく実施する仕事のノウハウを高める。現在は、その経験を生かし、IT企業・組込み系システム企業のマーケティング・PR(広報)のコンサルティングを行うビーコミの代表取締役として活動。日本PR協会認定PRプランナー。
日経BP社、翔泳社、アイティメディア、ダイヤモンド社、アスキーなどで連載や記事も寄稿。インターネットを活用したコミュニケーションも研究しており、複数の学会などでブログコミュニケーションやネットPRに関する発表をしているほか、「CGMマーケティング」(伊地知晋一著、ソフトバンククリエイティブ刊)の編集協力も務めた。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。現在は某大学院の博士課程に在籍し、引き続きコミュニケーションを勉強中。
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