その書き込み、ネットに載せて大丈夫? 「虚構新聞」らに学ぶ炎上回避術:個人サイト管理人の「目」(2/2 ページ)
「炎上」が日常化したネット社会で、我々が身を守る方法はないのだろうか。ネット黎明期から約10年以上個人サイトを運営する“ネットのベテラン”たちが培った、炎上を未然に防ぐ術を伝授してもらった。
まなめ ネットに情報を投稿する前に、書いた文章を見直して、読んだ人がどう思うかを考える過程を踏むようにしています。今では無意識でやっていますね。
さらしる ある情報を紹介することになった時、まずはその単語を検索するようにしています。例えば声優さんだったら人物名で検索して、どんなファンがいるかを想定し、ある程度配慮した内容を書くようにしています。
あとは、暴力的な言葉を控えています。というのも、万一炎上して誰かと揉め事になった時に、感情的な言葉使いをしていると、第三者が見た時に冷静さを欠いていると判断されてしまうからです。どちらの言い分が正しいかを判断する材料として、冷静さと丁寧な言葉使いは重要な要素だと思います。
しばしばネットは長文向きの媒体ではないと言われるが、長文のニュースを扱う松永氏とUK氏は本文が全て読まれることはないという前提で、見出しや記事の構造に工夫をこらしていた。一方でまなめ氏とさらしる氏は、読み手側を意識し、発信した情報を見た人がどう感じるかを想像するのが重要だと述べた。
投稿内容に責任を持てれば、炎上も怖くない?
ネットではしばしば、ネガティブな意味合いで、書き込みを広く人目に触れるように取り上げる「晒し」行為がなされ、そこから炎上が始まる。特にTwitterでこのごろ頻繁に起きており、それについてまなめ氏は以下のように言及する。
まなめ 最近Twitter上で有名人が、自分に送られてきた否定的な意見を「非公式RT(リツイート)」(※下記の囲みを参照)してフォロワーに晒し、その人にファンが非難を集中させるという状況をよく見かけます。晒し行為を擁護するわけではないのですが、晒された本人は、もともとネットで発言したことなのだから、ちゃんと責任を持って対応すべきだと思いますね。有名人側からすれば、ただ非公式リツイートというTwitterの機能を使っただけ。なので晒し行為を「卑怯だ」と言って批判するのも変な話だなと感じています。
ネットは言いたい物事を自由に発信できる代わりに、その内容に責任を持つ必要があります。逆に言えば、発言に責任を持てるようにしておけば、もし炎上してもきちんと対応ができる。なので、特に炎上を不安がる必要もなくなるのではないでしょうか。
公式リツイートと非公式リツイート
公式リツイートとは、特定のツイートを原文のまま拡散させる、Twitterの機能。その一方で、非公式リツイートは原文のツイートの一部を引用・または全文を転載した形で拡散させることを指す。それぞれがメリット・デメリットを持っている。
公式リツイートはツイートした本人のアイコンが表示され、情報元が明確だ。さらに原文のままツイートされるため、誤解が生じにくい。加えて、発言元が該当ツイートを削除すれば、拡散されたツイートも同様に削除される。デメリットとしては、リツイートしたユーザーのコメントがないため、リツイートの意図をフォロワーが把握しにくいことや、発言元のユーザーをフォローしているユーザーにはリツイートが表示されないため、拡散しにくいことなどが挙げられる。
非公式リツイートのメリットは、発言元のフォロワーを含む全てのフォロワーに表示されるために拡散しやすいことや、非公式リツイートしたユーザーがコメントを載せられること、リプライ欄に表示されるために情報元のユーザーが拡散の過程を簡単に確認できることなど。
これらは同時にデメリットでもある。非公式リツイートのコメント機能は、裏を返せば元のツイートを改変することを意味し、震災時には非公式リツイートによるデマ拡散の問題などが生じた。自身のコメントを載せることで情報元のツイートが140字の制限を超えてしまうだけでなく、情報元と拡散元のどちらの発言なのかが第三者には極めて分かりにくい。
また、情報元が該当ツイートを削除しても、非公式リツイートされた場合には、拡散されたツイートは拡散元の発言になるため、削除することができない。その情報がデマであったと気付いても、非公式リツイートをされてしまっては、情報元のユーザーにはなす術がないのだ。また、拡散とともに情報元のユーザーのリプライ欄が埋められてしまうため、炎上した際にはユーザーのリプライ欄が機能しなくなってしまう。
震災時の非公式リツイートの問題を契機に、公式Twitterは公式リツイートを推奨している。いずれにせよ、第三者に誤解を与えないためには、情報元が明確で元のツイートをそのままリツイートできる公式リツイートを使うことがよさそうだ。
個人サイト運営者によれば、炎上を未然に防ぐためには、読み手側に十分配慮した内容を投稿するのが重要だ。だが、そもそも内容に責任を持てる書き込みをしていれば、万が一炎上が起きても対処できる。あまり懸念する必要もないという見方もあるのだ。
SNSでは気軽に、しかも瞬時に発言を投稿できてしまうため、ネットに掲載しても問題ない内容かどうかを判断するフェーズを経ずに、書き込んでしまいがちだ。それゆえうっかり失言をしてしまうのだろう。特にオープンなサービスで拡散能力の高いTwitterでは、より注意深く投稿する必要がありそうだ。
これまでの連載では、ネットのネガティブな側面である炎上について紹介し、その対策や回避術までを扱ったが、次回はネットやSNSの有効な使い方といったポジティブな側面に焦点を当てる。4人がネットで影響力を持つに至った経緯に迫りつつ、ネットで認知度や評価を上げる方法を見出したい。
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