“まとめサイト”のうのみは危険! 分かりやすさの裏に潜む影:個人サイト管理人の「目」(3/3 ページ)
最近若者を中心に人気の“まとめサイト”。情報がよくまとまっていて分かりやすいのがその魅力だが、情報源としては不十分という懸念もある。まとめサイトの情報との付き合い方から、爆発的に人気を集める理由までを、「虚構新聞」など個人サイト運営者とともに探る。
自分で“確信”を持てる情報を選ぼう
それでは、まとめサイトの分かりやすい情報に安易に飛びつかず、一段上のリテラシーを身に付けるには、どうすればよいのだろうか
松永 まず、編集という作業には必ず編集者のバイアスが掛かる前提を認識することです。よく「NAVERまとめ」を「恣意的な編集だ」と批判する人をネットで見かけるのですが、恣意的に編集するのが“まとめ”なんですよね(笑)。
次に、情報は自分で選ぶもの、という理解が必要です。世間一般で話されている情報が正しくない時もあるので、情報に“確信”を持てるまで、きちんと自分で調べなければいけない。真実は多数決では決まりませんしね。
情報を”参考”にすることはできますよ。例えば、ある飲食店の料理はおいしいとかまずいとか。でも結局は、自分の舌で味を見て判断を下すわけじゃないですか。つまり、世間一般の意見は、参考程度にしかならないはずなんです。
確信が持てる情報かを判断するためには、受け取った情報を飲み込む前に、いったん保留するフェーズが重要になります。さっきの飲食店の評判の例だったら、実際にお店で料理を食べてみればいいんです。ネットの情報なら、情報もとを確認したり、どういう経緯で記事になったものなのかを調べるというふうに。そうすれば、怪しい情報に騙されにくくなりますし、一段上のリテラシーを持てると思います。
まなめ 私がリテラシーが高いと思われているとするならば、個人ニュースサイトの運営者として色んなサイトを閲覧しているなかで、炎上や失敗を数多く見てきたから、ということにつきます。反面教師になっているんです。
ネットには教科書がないという話を第1回で述べましたが、いろいろなネットユーザーが行動してきた記録がネット上には残っていますよね。“先人の知恵”を授かるとでも言いましょうか、それを見て勉強することで、我々はリテラシーを身に付けられた。だから、私たちも自分の経験をブログなどでネットに書き残しておけば、後世のネットユーザーの役に立つのではないかな、と思ったりしています。
ネットでは、多くの人が取り上げる話題や意見が目につきやすい。だが、そこで流されずに、自分の「目」で情報もとや書き手が誰なのかをきちんと確認するべきだ。そうして初めて、情報に“確信”を持てるようになる。
そこで参考になるのが、まなめ氏のいう“先人の知恵”だ。本連載では、4人の個人サイト運営者がまさに“先人”として、自身の経験を話してくれたが、ほかにも過去にネットで何が起きていたか、いろいろと調べてみるといいだろう。きっと難しいネット時代を生き抜くのに、役立つに違いない。
この連載でも5回にわたってSNS時代をよりよく生き抜くための処方せんを提供してきた。自由自在にネットを使いこなす人もいる一方で、多くの人は「炎上が怖い」「ネットの情報が信用できない」「SNSがうまく使えない」と試行錯誤しているはずだ。
そんな悩みにお答えすべく本連載を執筆してきた。万能なネットの“教科書”はないが“先人たち”は多く存在する。本連載で話を聞いた4人だけでなく、自分だけのネットの“先生”を探すのも1つの手だろう。
ITジャーナリストや研究者などの識者だけでなく、個人ブロガーや個人ニュースサイト管理人など、身近なところに無数の“先生”が存在している。あなたの隣にも“先生”はいるかもしれないのが、現代のネット社会の面白いところだろう。
ネットユーザーの情報源は個人ニュースサイトから、まとめサイトへとこの5年で移っていった。数年後には、また別のものへと取って代わっているかもしれない。炎上が日常化したり、情報量が激増したりと、時を経るごとに新しい困難がネット上には現れる。いつの時代も、試行錯誤しながらネットの情報と付き合わなければならないのに変わりはないのだ。
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