なぜ、結果を出しても給料は上がらないのか:ずっと「安月給」の人の思考法(3/3 ページ)
あなたは自分の給料がどうやって決まっているかを知っていますか? 実際、即答できる人は少ないだろうと思います。今回は3つの仮説を立て、それを検証してみましょう。
どれもイマイチなのは部分的な解説しかしていないから
ここまで紹介したように、給料の決まり方やなぜ年功序列的に右肩上がりになっているのかを説明する仮説がいくつかありましたが、しかしどれもイマイチです。というのは、給料の決まり方について、部分的にしか解説していないからです。
「労働力の需要・供給バランス説」は、世の中の商品の値段がどう決まっているか、に照らし合わせて考えていますが、これでは同じ仕事をしているのに年齢によって給料が違うことを説明できません。また、例えば大学新卒で考えると、景気がよく企業の人材需要が高いときも、逆にそうでないときも、初任給の金額はほとんど変化しません。それはどう説明するのでしょうか。
確かに、景気がよくなればアルバイトの時給や単発の仕事の報酬は上がる傾向があります。しかし、日本の企業では好景気だからといって、通常の1.5倍の月給で正社員を雇うことはまずありません。感覚的には、需要と供給の法則が成り立ちそうで、確かにそのように決まっている部分もあります。しかし、メインの決まり方ではありません。
2番目の「ロイヤリティ説」については納得はできます。企業側の意図で考えれば、せっかく育てた人材が「逃げない」ようにする、有効な手段のひとつでしょう。
ただ、これだけで給料の決まり方を説明することはできません。「若手からカネ質を取って年次が上がったときに返す」という考え方は、あくまでも若手よりベテランのほうが給料が高い、ということしか説明していません。
なぜ4大卒の給料が20万5000円なのか、なぜ30歳で○○万円なのかという、給料の絶対額については何も伝えていないのです。これでは、給料の決まり方を説明しているとは言えません。
最後の「技能習熟説」も同様です。確かに「年次が上がれば仕事ができるようになる」は一般的には当てはまります。普通に仕事をしていれば経験から学ぶことがあり、そのため仕事をする「技能」が高まります。
しかし、これも新入社員よりベテランのほうが一般的に仕事をこなすスキルが高いということを言っているだけで、「それぞれの年代で社員の給料がなぜその金額なのか」は分かりません。
このように、世間で語られている給料の決まり方は給料を本質的に表していません。給料を決める論理は別に存在しているのです。
繰り返しになりますが、給料体系は自然の摂理で決まるのではありません。経営陣や人事部が自分たちで具体的に考えて決めているのです。にもかかわらず、どのように給料が決まっているかをだれも明確に語れません。明確に分からないので、後づけでいろいろ考えているわけです。ただ、その結果、自分たちが無意識のうちに従っている給料のルールが抜け落ちてしまっています。
では、その給料のルールとは何か? その答えは給料明細にありました。これはまた変な話ですが、自分たちで作っている給料明細に自分たちが気づいていない本質があったのです。
まとめ
一般的に語られている「給料の決まり方」の説は、どれも部分的にしか説明していない。
本当の答えは給料明細に書いてある。
(次回は、いまさら聞けない「給料明細」の見方について)
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