賛成派も反対派も納得させる「落としどころ」:「話し方」より「答え方」
職場では、利害の異なる人たちの調整をする役割が回ってくることもあります。賛成派と反対派が真っ向から対立し、お互い聞く耳も持たず一歩も譲らない状況は厄介なもの。どうすればよいでしょう?
仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」について
部下の仕事の9割は、聞かれたことに正しく答えることです。ビジネスにおける答え方には「こう聞かれたら、こう答える」という決まった型があります。「打てば響く部下」と思われるために必要な「受け答え」の技術を大手予備校で現代文、小論文を指導する「国語のプロ」が伝授します。
この記事は2013年6月14日に発売された中経出版の『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』(鈴木鋭智著)から抜粋、再編集したものです。
職場での地位が少し上がってくると、利害の異なる人たちの調整をするという役割が回ってくるようになります。頼られている証拠ですから、喜んで引き受けましょう。
しかし賛成派と反対派が真っ向から対立し、お互い聞く耳も持たず一歩も譲らない状況は厄介なもの。調整役の手腕が問われます。
ただし、多数決が正しいとは限らないのは近年の選挙で痛感させられましたし、じゃんけんは提案した時点でどちらの立場からも「ふざけるな」と叱られそう。
さて、どうしたものでしょう?
問題「ある中学校で、生徒が携帯電話を持ち込むことを許可すべきかどうか議論されています。賛成派は子どもの安全のために携帯電話は必要だといい、反対派は勉強の妨げになるといいます。あなたはどう考えますか?」
× 思春期の子に携帯なんか持たせたらろくなことがない。勉強しないどころか、出会い系サイトとかにアクセスして犯罪に巻き込まれる。私は反対だ。
○ 安全のために必要なのは朝夕の登下校時。勉強の邪魔になるのは日中の授業中だ。従って登下校時には携帯を持たせて、日中は職員室で預かればいい。
2つの意見が対立している場合、大抵どちらの立場にも一理あるものです。そしてどちらの立場を取っても問題は残るもの。だから片方の立場だけを支持しても説得力が弱いのです。
この場合、単純に「賛成/反対」を表明するよりも、双方の主張を公平にジャッジして折り合いをつけましょう。これが大人の態度です。
2つの立場の対立→「いつ、どこで、誰が」のズレを探す
この携帯電話の件では、賛成派が必要性を主張しているのは朝夕の登下校時。実は反対派もこの点は否定していません。ここがポイントです。
そして反対派の根拠は昼間の授業中。賛成派もこの点は否定していないのです。つまり携帯電話が必要かどうかは時間と場所によって違うのに、そこを区別しないで「携帯電話に賛成か反対か」という大ざっぱな議論を始めたために議論が平行線をたどっているのです。
消費税増税に反対する人たちの大半は105円のパンが110円になることに反対しているのであって、2100万円のフェラーリが2200万円になることに反対しているのではありません(もっとも1989年まで存在した物品税は「どこからが課税すべきぜいたく品か」という判断が非常にややこしかったわけですが)。
米軍輸送機オスプレイに反対する人たちは「自分たちの町に墜落されたら迷惑だ」と言っているのであって、「竹島や尖閣諸島に着陸できる」という領海防衛にまで反対しているわけではありません。ならば、沖に空母でも浮かべて海の上だけ飛べばいいわけです。
「折衷案」と称して1機だけ配備なんて中途半端なことをしては、どちらの立場にもメリットがありません。
問題「そろそろ、原発問題に決着をつけてください。」
× 世論調査によると、原発再稼働については賛成と反対が半々だ。電力不足の心配も事故の心配もあるから、半数の原発だけ動かそう。
○ 日本人の生活水準を下げずに電力需要をまかなうためには、これからも原発は必要です。もちろん安全に原発を運営できて、万一事故が起こっても的確に対処できる企業が見つかればの話ですけど。
「原発が必要かどうか」と「誰が運営するのか」は別の問題です。恐らく賛成派の中でも「ではどの企業に任せるのか」となると立場が割れるでしょうし、反対派の中にも「まともな企業がやるなら、原発そのものには反対しない」という人も現れるかもしれません。
問題を小分けにすると、「賛成/反対」の構図が変わってくるのです。
今回のまとめ:2つの立場の対立→「いつ、どこで、誰が」のズレを探す
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