人間は理屈よりも気持ちで動く:思うように人の心を動かす話し方(2/2 ページ)
コミュニケーション力が非常に重視される時代。話に自信のない人にとっては辛いことだ。それに加え説得力も求められているが、いまだに身につかないと悩んでいる人は少なくない。それは、人間は理屈よりも気持ちで動くからだ。
すべての人に共通する説得のテクニック
そこで本連載では、すべての人に共通する心理法則をもとに、説得の技術を伝えることにしたい。
ここで紹介する心理メカニズムや心理テクニックは、心理学の実験により科学的に実証されたものばかりであり、すべての人にあてはまるものである。ゆえに、それを利用する人の個性や資質は問われない。だれが使っても同じような効果が期待できる。
ただし、ここで紹介する説得の技術はあまりに強力なので、悪用はしないでいただきたい。
心理学の研究は、よりよい暮らしの実現のために行われているものと私は信じている。その成果も、不幸を減らし、幸福を増大させるために利用されるべきだと考える。
私自身、悪徳商法によく引っかかり、人に遠慮しがちですぐに説得され後悔することが多く、それが心理学を学ぶひとつの動機になった気がする。
ゆえに、各項目の最後には、説得される側の立場でその心理テクニックに引っかからないための心構えを記すようにした。つまり、本書は、説得の技術を広めることによって、説得力のなさに悩んでいる人を応援するだけでなく、強引な説得に負けて困った立場に追い込まれがちな人を救済することも目的としている。
ここで紹介する説得の技術は、相手にとってほんとうにメリットのある商品やサービスを売り込む場合や、ほんとうに組織のためになる提案を何としても通そうという場合に限って用いられることを切に願っている。
そのような善意の説得者にとって、最強の説得の技術が盛り込まれているはずなので、取り扱いには十分注意していただきたい。
著者プロフィール:
榎本博明(えのもと・ひろあき)
心理学博士。1955年、東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。
東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演等を数多く行うとともに、自己心理学を提唱し、自己と他者を軸としたコミュニケーションについての研究を行うなど、現代社会のもっとも近いところで活躍する心理学者である。
著書に、『「上から目線」の構造』『「すみません」の国』(日経プレミアシリーズ)、『「上から目線」の扱い方』(アスコム)、『「俺は聞いてない!」と怒りだす人たち』(朝日新書)、『心理学者に学ぶ気持ちを伝えあう技術』(創元社)など多数。
(次回は「人の心を動かす“キラーフレーズ”」について)
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