「メモ魔」にならない:トップ3%の人の仕事のルール
何かを言われたとき、メモを取ることはいいことです。しかし、提案されたアイデアを高めるために考える意欲を忘れてしまうと、出された「回答」をそのまま覚えるようになってしまいます。メモを取ってから「どうしてこういう考えに至ったのか」と、自問する時間を持つことが大事なのです。
集中連載「トップ3%の人の仕事のルール」について
本連載は、石原明氏著、書籍『トップ3%の人だけが知っている仕事のルール』(中経出版)から一部抜粋、編集しています。
トップ3%に入るような成功者は、少し違った基準で仕事をしています。その基準の多くは、細かいスキルや能力を伴うものではなく、仕事に対する姿勢やモノのとらえ方に関するものです。
ビジネスやプライベートに関係なく、人生において望んだ結果を得るために必要な知識や考え方の基準、さらにはお金の使い方や学習の方法まで、幅広い分野について「教訓=インストラクション」という形でまとめました。
「効率の悪さ」も利益につなげる。読むだけで最強のビジネスパーソンになれる50の法則を紹介。心を身軽にしポジティブな人生を送るための、珠玉の言葉と具体的な方法論を説いた1冊です。
以前お会いしたFさんは、外資系の保険会社の支社長を務めた人で、業界では「この人あり」とまでいわれた人物でした。当時の年収は3億6500万円で、日収にすると100万円以上。数年前に引退されましたが、退職金が30億円を超えたというすごい人です。
Fさんは超がつくほどの右脳人間。たいへんなアイデアマンで、常に社員をグイグイ引っ張っていました。
驚くべきは、Fさんは社員100人の靴音を聞き分けられるというのです。支社長室の前の廊下を歩く靴音で、「あっ、●●君だ。今日は営業がうまくいったな」「○○さんは1件も取れなかったな……」と、部下たちのその日の営業結果まで分かったといいます。だから、いつも支社長室のドアは少し開いていたそうです。
こんなさりげなさからも、管理者としての優秀さがうかがえます。
いつもFさんのような右脳人間のそばにいると、発想や行動が自然と伝染して(身について)、周囲の人も右脳人間になるかといえば、そうではないようです。
Fさんは「どうして自分みたいな考え方をする人間が出てこないのか」と嘆いていました。
なぜ社員の人たちは、Fさんに学ぶことができないのでしょうか? その理由は、同社のナンバー2をはじめとする幹部たちが、Fさんがあまりに突出したスペシャルなアイデアを出すので、ただ驚くばかりでとりあえずメモをしてしまうことにありました。
もちろん、メモを取ることはいいことです。しかし、メモを取ってから「支社長はどうしてこういう考えに至ったのか」と自問する時間を持つことが大事になります。
しかし、Fさんが次から次へと豊かな発想をぶつけてくるため、「支社長はすごい、並外れている」と盲信してしまうわけです。
そうして、言われた通りに行動するようになってしまうのです。
「データ」よりも「モノの考え方」が大事
自分で考える時間を持たず、提案されたアイデアをもっと高めるために考える意欲を忘れてしまうと、いつしか出された「回答」をそのまま覚えるようになります。これでは、学生がテストでいい点を取るために暗記しているようなものです。
こうして右脳人間のまわりには、データを集め、メモばかり取る人間ができ上がっていきます。そういう組織は、右脳人間が欠けたとき、機能不全に陥ります。
仕事で力をつけていくためにはデータやメモも大事ですが、それ以上に考え方やモノの見方を身につけることが大切です。だから、上司と自分の考えが食い違うときに、どうして違うのかを考える必要があるのです。
「答え」が大事なのではありません。大事なのは、答えに至るまでの「プロセス」です。
なぜその答えが出たのか……、その過程を思考する訓練をしておかないと、いつまで経っても、物事を最終決定するポストに就くことはできないでしょう。
ACTION
メモを取ったら「指示の意味」を考えよう
(次回は「自分から握手をする」について)
著者プロフィール:
石原明(いしはら・あきら)
日本経営教育研究所代表、僖績経営理舎株式会社代表取締役。ヤマハ発動機(株)を経て、外資系教育会社代理店に入社。「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞後、日本経営教育研究所を設立、経営コンサルタントとして独立。現在、中小企業から大企業まで、業種や企業の規模を問わず幅広いコンサルティング活動を行っている
主な著書に『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(中経出版)、『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)、『社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!』(サンマーク出版)などがある。
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