自宅兼事務所の家賃や光熱費は経費になるの?:知っておきたい領収書の常識
個人事業主やフリーランスの中には、自宅兼事務所にしている人も多いはず。その場合、自宅で掛かる費用のうちどれだけを必要経費にできるか知っていますか?
集中連載『知っておきたい領収書の常識』について
本連載は、2013年12月21日に発売の梅田泰宏著『経費で落ちるレシート・落ちないレシート』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
フリーランスや個人事業主として働く人にとって、領収書、レシートは「金券」のようなもの。その支払いが「経費である」と認められれば、支払う税額が減るからです。
とはいえ、「何が経費になって、何が経費にならないのか」という基準は、誰も教えてくれません。なぜかと言えば、経費で「落ちるか」「落ちないか」という意味では、全ての領収書が「グレー」であり、ケースバイケースで、明確な基準が存在しないからです。
しかし、実は、「落とすコツ」というものが確かに存在します。それは、具体的なケースを通してのみ、知ることができる種類のものなのです。本書は、「経費」に関する基礎知識を押さえたあと、具体的なケースを通して、経費で「落とせる基準」と「落とすコツ」を解説していきます。
- 本連載は、フリーランスのライターである鈴木ヒロシさんと、税理士の梅田(私)が主な登場人物です。
店舗を持たずに事業を営んでいる個人事業主、あるいはノマドワーカーやフリーランスなど、いわゆるSOHO(Small Office/Home Office)で事業を営んでいる人のうち、自宅兼事務所にしている人は、多いはずです。
こういう場合、自宅で掛かる費用のうちどれだけを必要経費にするかどうかが、悩みどころの1つになるはずです。まず、自宅兼事務所を賃貸している場合には、家賃の何割かは必要経費にできます。とはいえ、何%までOKなのかとなると明確な基準はありません。
うちは2DKなんですが。
そのうち事務所として使っている面積が、全体の何%かという問題ですね。1部屋が資料室か何かで、1部屋が完全な仕事場で、残りのダイニングキッチンはプライベートとすれば、まあ5割か6割でしょう。
そんなに大ざっぱでいいんですか!
正確にやるなら、図面を出してきてということになるけど、そこまでする必要はないですよ。それに、例えばダイニングで一切仕事をしないか、というとそうでもないだろうし、資料室に使っているところにはベッドがあるかもしれない。
いや、はい。まさにそういう配置ですね。
だから、資料室のすべては仕事とは関係ないですしね。そこらへんは常識の範囲内で
50%か60%にしておけばいいと思いますよ。これが80%とか90%だったら、一体日常生活はどこで営まれてるの……? となるでしょ。
水道光熱費も、この割合を基準に按分します。デスクワークが多く、PC関連機器をガンガン使っているということなら、まあ電気代は6割。携帯や固定電話代はもうちょっと認められるかもしませんが、8割ぐらいが限度でしょうか。
水道代やガス代に関しては、水やガス使ってデスクワークするわけではないから、2割か3割……というふうにやっていけばいいのです。
けれども、例えば自宅の一部が小料理屋、という場合、仕事柄、ガスや水道は、もっと必要経費にしていいでしょう。
あ、あの、細かいことですけど……。
どうせ、トイレットペーパーも按分できるのか、とか言いたいんでしょ。
げ! センセは人の心が読めるんですか!
これまでのあなたの質問を聞いてりゃ、だいたい分かります。みみっちいというかセコいというか。涙ぐましいというか……。
スミマセン……。
でも、落ちないこともないですよ。
おお! ……っと、こんなところで喜ぶ自分が情けない……。
自宅兼とはいえ、事務所に使っているんだからそこでトイレにも行くでしょ。ティッシュも使いますね。こういうこまごましたものも、家賃代の按分比率を基準にすればいい。ま、3〜5割というところですかね。実情にもよるけど……。
ほとんど外出しないで、自宅兼事務所でずっと仕事をしている、というのであれば、半分ぐらいは認めてくれるかもしれませんよ。
今回はずっと領収書の話だったけれど、税務署が見るのは、こういった生活の実情とのバランスなんです。例えば最初にも言ったけど、何でも経費にしてしまったら、生活費はどこから出ているんですか、ということになる。
フリーランス、個人事業主、商店、家族会社。これらはすべて、個人と会社(店)との境界があいまいです。だから納税者も、「これは家庭で使っているモノだけど、仕事とも関係があるから経費にしちゃおう」ということになる。
「ダメ元」で、あとで痛い目に遭うよりは、「これは仕事とも関係があるから3割だけ経費にしよう」といったふうに、現実的に自分のアタマで考えてみてください。そのほうが税務署の受けもいい。仮に税務調査に来られても、心証が違うんです。
税務官も人間ですから、「いい加減な会社だな」と思われたら「利益も出ていないのに、どうやってこの暮らしができるんですか?」と厳しく突っ込まれるわけで。ここがいちばんのポイントなんですよ。
……さて、鈴木さんの質問も出つくしたようだし、本連載はこれにてお開きといたしましょうかね。読者の皆さま、ご清聴ありがとうございました!(終わり)
関連記事
- 経費は年末に増やせ! 個人事業主の節税対策【前編】
3月の確定申告に向けてそろそろ準備を始める時期となった。節税の第一歩は、自分の納税額がどのように計算されるのかを知ることだ。年末までにできる節税対策を考えてみよう。 - 経費を“増やす”方法――個人事業主向けの節税対策を考える
前回まではサラリーマンの人に向けて年末調整の書き方を紹介したが、今回は個人事業主として独立したばかりの人、あるいは近いうちに独立を考えている人に向けて節税方法を紹介したい。ポイントは経費を増やすことだ。 - 青色申告って何? 個人事業主の賢い節税を考える
今回は個人事業主であれば知っておきたい青色申告と白色申告の話。現在白色申告をしている人や今後独立を考えている人は青色申告による節税を理解しよう。 - こんな人なら節税できる(前編)
個人事業主もサラリーマンも読める「税金の話」。第2回は主に住民税と節税について考えてみたい。「自分には関係ない」と思っているそこのあなた、損しているかもしれませんよ? - サラリーマンが給与所得を今より多く受け取る2つの節税対策
給料明細を見て「税金などの引かれる金額か少なくなれば……」と考えたことありませんか? 今回は、給与所得を今より多く受け取る2つの節税対策を紹介します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.