判断力を“じわじわ”奪う――洗脳系上司からの脱出法:サイボウズ式(2/2 ページ)
部下の正常な判断力を奪ってしまう“上司のダブルスタンダード”な振る舞い。「自分で決断出来ないやつはダメだ」と説く一方で、「なぜ勝手に判断するんだ」とどう喝するような“矛盾したことを言う上司”には要注意です。
行動も制限して価値観を狭める
さらに、その上司は思考を停止させたあと、行動にも制限をかけます。他者とかかわる時間を極端に制限されると、思考が停止し、自分の置かれている状況を客観視することができなくなってきます。
例えば、毎日朝から深夜2時まで働いて、会社以外の人と話すのはタクシーの運転手さんくらいになると、睡眠不足で思考能力も低下してワケが分からなくなってきます。
自分がいる状況の異常性に気付けなくなり、その上、体力ゲージは全部仕事に振り切っているので、転職活動をする余裕もなく、無限ループに入っていきます。
どうやって正気に戻ったか
「そんな状態なのに、なぜすぐに逃げ出せなかったんだろう」と、当時を振り返ると、自分が選んだ道は間違っていないと信じたかったのかもしれないし、なにも考えずに済む状態から踏み出すのが怖かったのかもしれません。
ただ、なんとなく「この状態はおかしいのでは?」「わたしはいま正常な判断ができていないのでは?」と感じ始めたあるとき、順序やグループなど関係なく、思いつくまま、心に引っかかっていることを、今の状況をノートに書き出してみようと思いつきました。
今の何が苦しいか、上司に対してどう思っているか――。怒りや反省、後悔。今自分は何から逃げたくて、何を怖いと思っているのか。当時のわたしは、収入源を失うことよりも「自分が選んだ道が間違っている」と認めてしまうことを何より恐れていました。
でもそれはとてもミクロな視点で、ほかにもうっすらと感じていた不安点を書き出してみたら、そんなことは吹き飛んでしまうぐらいに「今の、この状況はヤバイ!」と思えました。ノートに文字として書き出すことで、「他人ごと」として俯瞰(ふかん)することができる、というのは当たり前のことですが、そのときはそれすらも気付ける状態ではなかったのです。
自分の中にうっすらとあったモヤのような不安を、形あるものとして外に出して自覚し、この状況は危険だと実感して素地が整ってからは、周りの言葉や意見がスッと入るようになりました。
もちろん意見の取捨選択は必要でしたし、それは言い過ぎだろうというのもありましたが、「これはおかしい」という確信が積み上がり、「ここから逃げなきゃ!」とはっきり思えるようになりました。
当時のわたしのように「めんどくさい上司の言うことをただ聞いていれば楽だし安定するからそれでいい」と思いながらも、「今この状況ってヤバイよな」と感じている人がいるのであれば、一度、周りの状況を観察してみてください。その場で踏ん張ることで得られる何かがあるかもしれないし、そのまま頑張れる人もいるかもしれません。
しかし、「あ、もう限界!」と思ったら逃げる選択肢があることを忘れないでほしいと思います。そして、常軌を逸した上司に「NO!」と言うことで、わたしのような被害者が出るのを防げるかもしれません。それは正しい指導方法を見つけられなかった上司の側にも、大切なきっかけになると思うのです。(はせおやさい)
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