携帯用サイトで物品を販売するサイト「ちびギャザ」を運営するネットプライスが、ロッテリアと提携──この発表を聞いたとき、記者にはネットプライスが何を狙っているのかが実はさっぱり分からなかった(2月15日の記事参照)。ハンバーガーとモバイルコマースが一体どう関係するのか? そんな疑問を胸に、ネットプライス社長広報室の伊藤直氏に話を伺った。
ハンバーガーショップで注文をすると、店内で食べる場合はたいてい、トレイの上に商品を載せて渡される。トレイの上に敷かれている紙を「トレイマット」という。通常トレイマットは、新商品の紹介など、ファストフード店からのメッセージが書かれていたり、他企業からの広告スペースになっていたりすることが多い。ネットプライスはこれに着目し、ロッテリアと提携したのだ。
トレイマットの約下半分弱が、ネットプライスのスペースだ。指輪などの商品写真とその紹介、QRコードが印刷されている。ロッテリアのハンバーガーを食べているお客がQRコードを携帯カメラで読み取ると、ネットプライスが運営するコマースサイトにアクセス、商品を購入できる仕組みだ。このときアクセスするサイトは、ロッテリアのトレイマットからやってきたユーザー専用のサイトになっている。
ネットプライスの最大の特徴は、「ギャザリング」という買い物の方法にある。同じ商品に対して購入者がたくさん集まるにつれ、商品の販売価格がどんどん安くなっていくという方法だ。購入者が1人より10人、10人より100人のほうが、同じものを安く購入できるのだ。
同じ商品に対してたくさんの購入希望者を効率よく集めるためには、ターゲットとなる客層を絞り、その客層に合わせた商品を揃えることが必須となる。ネットプライスではほかにも「R25」「東京ウォーカー」「ChouChou」などの情報誌と提携してメディアミックスを展開、同様のビジネスを行ってきている。ここで「客層を絞り込み、客層に合わせた商品を提供する」というノウハウを積んできているのだ。
「ハンバーガーを食べているときは手持ちぶさたで、トレイマットをついじっくり読んでしまいませんか? トレイマットというのは、お客さんが必ず集中して見ているものなんです」と、伊藤氏は言う。では、ロッテリアのトレイマットを見て、携帯サイトにアクセスしてくる客層はどのようなプロファイルなのだろう? 伊藤氏によれば「20代前半〜30代前半が中心。男女比は半々くらい」だという。
揃えている商品は、男女ともに使えるアクセサリーなどで、単価も1万円しないものが中心だ。「ロッテリアを訪れるお客様に合わせて商品のチョイスも行っています。我々は裏方というか、プロデューサーのような役目」(伊藤氏)
逆に、ロッテリアにとって、ネットプライスと組むメリットは何なのだろうか。
「性別、世代、住所分布、何時頃何が売れているか、といったお客様のプロフィールをフィードバックするんです。例えばコンビニではレジで顧客データを取っていますが、それよりもずっと細かいプロフィールを蓄積・提供できます。ロッテリアはそのデータを分析して、キャンペーンなどへ応用できます。またロッテリアから見れば、我々の提供するコンテンツがショップ内のエンターテインメントとして機能します」(伊藤氏)。
ネットプライス側では、トレイマットに商品記事やQRコードを掲載する代わりに、商品の売り上げの数パーセントをロッテリアに支払う。「ちびギャザのブランディング力を上げるというよりは、集客力に期待しているから。ロッテリアのトレイマットが、ファーストコンタクトのきっかけになってくれればいいと考えています」(伊藤氏)
メディアごとにサイトは分けられているが、現在はユーザーがアクセスするトップページは共通だ。「将来的には、ユーザーのプロフィールに合わせたトップページなどもやっていきたいですね。30代男性にはこういう商品をオススメ、とか。プロフィールを生かせる、もっといろいろな可能性があると思います」
2月18日から始まったこの試み、数字はまだ出ていないが、滑り出しは好調だという。4月には同様に、宅配ピザの大手「ピザーラ」と提携、「ピザーラ・ギャザリング」を行うと発表した(4月27日の記事参照)。
ハンバーガーのトレイマットという“リアル”と、携帯ショッピングの連携──ハンバーガーやピザ以外にも、まだまだ可能性はありそうだ。
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