2Gから3G、そしてその次へ──NECキーマンが語るワイヤレス業界のこれから(2/4 ページ)

» 2005年07月12日 13時01分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

ITmedia エリア、端末の3Gの基本性能が十分上がった段階で、その次はなんでしょう?

古谷 今後はサービスの競争になるでしょうね。今から端末を買う人は3Gが普通ですから、その中でどれがいいか、という話になっていくわけです。画面が大きいのがいいとか、カメラの性能がいいのがいいとか、FeliCaが載っているだとか、字が大きいのがいいとか、難しくないのがいいとか……。いろいろ要望があると思うので、端末を多様化して、お客様の好みに合わせた物を作っていく、というのが大事なのだろうと思っています。ここ1〜2年は、そういう話が非常に重要になるでしょう。

FOMA端末の小型化はもはや難しくない

ITmedia FOMAは端末価格が高い、大きいという声があります。FOMAを小さくするのは難しいのでしょうか。

古谷 高機能な端末のほうが、作るのは難しいのです。機能を抜いていいなら、小さく作ることはそれほど難しくありません。2001年あたりは技術的に小さい物を作るのは難しかったですが、今はほとんど関係ないと思いますね。iモードが始まる前は「小さいから売れる」という流れがあったので、各社競争をして70ccや60ccといった小型端末を作っていたのです。その技術はあるので、FOMAでも小さい端末を作ることは可能です。でも、今は100ccでも大画面のほうが売れる、ということになって、各社そちらへシフトしてきているというのが現状だと思います。大画面で折りたたみ、がいまの売れ筋ですからね。技術的に小さいのを作るのが難しいというよりは、そちらのほうが売れるから、という理由です。

ITmedia 画面が大きくて小型化、というと、薄型化という方向性はどうでしょうか?

古谷 中国市場向けに特化していますが、NECではカード型のカメラ付き携帯電話「N900」というのを出しています。こういう技術を国内向けの端末にも生かしていく形でしょうね。今回も(FOMA N901iSという)液晶の大きな端末を出しましたが、あのテイストは崩さずに、薄型化を進めることは有効だと思います。

中国向けのカード型のカメラ付き携帯電話「N900」

3GとHSDPAは、ユーザーにとってどう違う?

ITmedia 3Gの普及が進んできて、HSDPAなど、「3Gの次」の技術の話題を聞くことが増えています。現在、HSDPAやスーパー3Gといった技術は、どのような段階まで進んでいるのでしょうか。

古谷 HSDPA(3.5G)は、すでに世界標準として決まった方式で、すでに試作は終わり、商用の装置開発に入ったところです。今のFOMAに比べると遙かに高速な下り通信ができるようになります。

 スーパー3Gや3.9Gは、標準化の議論が始まったばかりという段階です。基礎技術の実験は済んでいます。クルマに載せて、走り回りながら行う実験も大分進んでいます。ただそれは(各企業が)独自に行っている実験なので、今まさに3GPPという世界標準化の場に出して、世界標準として次の世代のものを研究しようという話をしている、標準化の流れが動き始めたというところです。

 コンセプトをまず固めて、その後、詳細技術書を詰める、という作業を世界でやることになります。今や日本だけで仕様を決めて走るという時代ではなくなっていますから。

ITmedia HSDPAは、現行の3G用の通信機器をどれくらい利用できるのでしょうか。

古谷 まずネットワーク側は、無線の方式が違うので、基本的には変えないとだめです。ただ、基地局というのは箱にアンテナを差すような作りになっています。W-CDMA用の箱に、HSDPA用のパネルを差して、ソフトを一部変更すると使えるようになる、というイメージです。

 端末ですが、今のFOMA端末にHSDPAに対応した機能は入っていませんから、(HSDPAに対応させるには)LSIの開発から必要になります。HSDPAに対応した高機能LSIを作って、現行の端末に加えて動かすことになるでしょうね。

ITmedia HSDPAが実用化された場合には、今の3Gのネットワークを使えて、端末も3GとHSDPAと両対応のモノが出てくるイメージですね。

ITmedia 今後HSDPAに移行した場合、ユーザーにとっては、3Gと違うところはどこなのでしょう?

古谷 まずデータ通信速度が上がります。あと、レスポンスも違います。例えば「次の画面へ」などのオペレーションをしたとします。まずデータを流すスピードが速くなりますし、リクエストを出してから、データを流し始めるまでのプロトコルが短時間に応答するように改良されています。「サクサク動く」という表現ですね。

通信の“容量”とは何か

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