NokiaにとってS60/Series 60の位置づけとは?

» 2005年11月11日 15時34分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 「Nokia 6630」を、ボーダフォン端末「Vodafone 702NK」としてリリースしてから半年以上が経ったNokia。この秋からはNokia 6680をボーダフォン端末「702NK II」として日本市場に投入する。

 現在Nokia製端末のアプリケーションプラットフォームは、Series 40/S60/Series 80(S60はSeries 60の旧名称、11月1日の記事参照)という3種類のラインアップからなっている。S60/Series 80はいずれもSymbian OSであり、日本市場に投入されているNokiaの高機能端末、Nokia 6630/6680ではS60が採用されている。

 NokiaはS60プラットフォームをどのように位置づけているのか。Nokiaでテクノロジー・プラットフォーム部門の販売・営業を担当するマッティ・バンスカ氏に、NokiaのS60プラットフォームのメリット、動向などについて訊ねた。

Nokiaテクノロジー・プラットフォームテクノロジーマーケティング・セールス担当ディレクターのマッティ・バンスカ氏

S60はスマートフォンに最適化したプラットフォーム

――Nokia 6630(Vodafone 702NK)を日本でリリースして半年以上が経ちました。手応えはいかがですか。

マッティ・バンスカ「Nokiaは日本市場を重視しており、本来ならもっと存在感を示したいと考えていましたが、これまでは(我々が望むよりも存在感が)下回っていました。S60を採用した製品を投入することで、日本市場での存在感をもっと高められると考えています。6630を出したことで、日本市場への理解が深まったと思います」

――Nokia 6630について「日本で初めてのスマートフォンだ」と表現する人も多かったのですが、スマートフォンにS60を採用する意義は何だとお考えですか。

マッティ・バンスカ「“2ちゃんねる”では、『黒船が来た!』と書かれていたそうですね?(笑)。『スマートフォン=PDA』と考えている人が多いように思いますが、スマートフォンとPDAはまったく違うものです。PDAとしての使い道は、スマートフォンの1つの姿に過ぎません。音楽に特化したもの、カメラ機能に特化したもの、ビジネスユースに特化したもの……スマートフォンには、さまざまな姿があります。オールラウンドにいろいろ使えるもの、それがスマートフォンだと考えています。そして、それを実現するのにS60は適している、そういうことです」

――2ちゃんねるもチェックされているのですか(笑)。日本参入に際し、S60を採用することのメリットは何だと考えていらっしゃいますか。

マッティ・バンスカ「我々にとっては、これまでの携帯電話とは違う、新しいやり方での参入が可能になることです。ニーズに合わせてさまざまなカスタマイズが可能であり、しかもオペレータの要求に対してよりよく応えることができます。オペレータは、S60を採用することで、あまりコストをかけることなく差別化ができます」

――初のS60採用端末「Nokia 7650」が出たのが2002年、Series 60がリリースされてからも2〜3年が経ったことになります。S60上で動くアプリケーションは、初期の頃と比べて、今は変わってきていると感じますか?

マッティ・バンスカ「コアとなるアプリが、メッセージングやパーソナルインフォメーションの管理のためのものである、という基本的な部分は変わりませんが、デベロッパーが作っているアプリケーションを俯瞰すると、いくつか変化はありますね。1つに、プレーンなJavaゲームではなくなってきており、オペレータとの連携や、アプリ間でシームレスに相互リンクを図れるものが求められてきています。もう1つは、専門的なアプリが提供されるようになってきたことです。例えば医者向けの医学用語を収めた専門辞書とか、ムスリム向けのコーランアプリといった、高度で専門的な使われ方がされるようになってきている、という実感があります」

ビジネス向けの機能を強化

――ビジネスユース向けの端末に採用されるプラットフォームとして、S60は適していると思います。ビジネス向け用途で、何か気をつけている点はありますか。

マッティ・バンスカ「まずセキュリティを強化すること。2番目はEメールソリューションの充実です。ビジネスユースを考えるとき、Eメールの使いやすさは必須ですから。3つ目はJavaを新たなレベルへ導くことです。Javaコミュニティの『JCP』と連携し、CDC Java(2001年8月30日の記事参照)のマネージャビリティを高めようと努力しています。これによって、デバイスとJavaアプリケーションをもっと簡単に管理できるようになります」

――デバイスとJavaアプリケーションの管理とはどういうことでしょうか?

マッティ・バンスカ「今まではJavaアプリケーションをダウンロードすることはできても、そのアプリを管理することは難しかった。そこでCDC Javaに対応し、ダウンロードしたあとのJavaアプリケーションを管理できるようにしようということになりました。特に企業ユースの場合、(管理者にとって)端末やアプリのマネージメントが行いやすいことは非常に重要ですから」

――ビジネスユースということでは、遠隔ロックやリモートでのデータ消去といった機能が重要になるのではないかと思います。S60ではこのような機能をサポートしていますか?

マッティ・バンスカ「現在はサポートしていません。しかしそういった機能がセキュリティ上非常に重要だという認識は持っていますので、将来的なプランには入れています」

拡大するS60

――もうすぐNokia 6680が、Vodafone 702NK IIとして日本でもリリースされますね。Nokia 6630/6680で、S60は変わっていますか?

マッティ・バンスカ「マイナーチェンジくらいで、大きくは変わっていません。どちらもS60の2nd Editionを採用しています」

――現在S60の最新版は3rd Editionですね。どんな特徴があるのでしょうか?

マッティ・バンスカ「3rd Editionでは、高解像度(注:QVGA)とスケーラブルなUIをサポートしています。また、タッチパネル端末を想定して、ペンベースのユーザーインタフェースにも対応しますし、今後フルキーボードにも対応する予定です」

――フルキーボード端末をサポートするSymbian OSというと、Communicatorに搭載されているSeries 80とバッティングしませんか?

マッティ・バンスカ「Series 80の特徴をまとめれば、Symbianプラットフォームで、フルキーボードをサポートしているOS、ということになります。Series 80はライセンスをしていないといった違いはありますが、確かにS60がその範囲を広げることによって、『S60がSeries 80に近づいてきている』とは言えますね」

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