「モバイルコマースは拡大し続けている」――auのEC戦略Interview(1/2 ページ)

» 2006年02月22日 12時10分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 おサイフケータイの登場により、携帯電話のリアルビジネスとの連携が注目されているが、その一方で目が離せないのがモバイルコマースの成長と普及だ。モバイルコンテンツフォーラムの統計資料によると、2004年のモバイルコマース市場は2013億円。この金額はモバイルコンテンツ市場より少ないものの、前年比成長率はモバイルコンテンツ市場の122%に対して、モバイルコマースは145%と23ポイントほど上回っている。

 3Gの普及により、パケット料金定額制が当たりまえになる中、モバイルEコマースはどこまで成長するのか。また、新たな決済サービスやメディア連携はどのように浸透していくのか。KDDIコンテンツ・メディア事業本部コンテンツEC本部長兼ECビジネス部長の長島孝志氏に話を聞いた。

KDDIコンテンツ・メディア事業本部の長島孝志氏

ケータイユーザーに使いやすいものを作る

 携帯電話のEコマースの“起爆剤”になったのは、通信料金の低廉化と定額制の導入である。ユーザーがパケット料を気にすることなくサイトや詳しい商品情報を見られるようになったことで、モバイルコマースの商機は一気に拡大した。

 そして、もう1つモバイルコマースが成長するきっかけになったのが、携帯電話ならではの決済システムの導入だと、長島氏は話す。

 「(KDDIでは)2004年6月から『まとめてau支払い』という回収代行サービスを始めました。携帯電話利用料の請求に、他の請求をあわせて回収するという仕組みはデジタルコンテンツ分野ですでに普及していたのですが、これを物販まで広げることでモバイルコマースを拡大する契機にしました」(長島氏)

 実はまとめてau支払いの正式サービス導入前に、auでは同様の物販向け回収代行サービスを試験的に導入していた。それが「物販事業者様の評価が高く、正式採用に至った」(長島氏)のだという。

 さらに決済システムの整備と並行して進めたのが、ユーザーをショッピングサイトにたどり着きやすくするための施策だ。

 「『auでオカイモノ』というショッピングサイトのリンク集で、カテゴリーごとに分かりやすく店舗サイトを整理することで対応しました。(決済システムとあわせた)これらの効果は、早い段階で現れました。2004年4月の段階では、物販事業者の方々の(モバイルコマースに対する)反応は『まだまだ、これからだよね』という様子見だったのですが、同年の秋には『予想以上に早く成長している』と各事業者様が手応えを感じていました。我々としても、モバイルコマースはしっかりと育てれば大きな市場になるという確信が持てました」(長島氏)

 これら成長に向けた取り組みの中で、長島氏が強く感じたのが「auユーザーにとって使いやすく、安心してもらえるものでなければならない」ということだった。この考えは、その後のモバイルコマースへの取り組み、サービス拡大の礎になっている。

最初の購入体験をKDDIが手助け

 初期段階において確実な手応えを得たauのモバイルコマース分野であるが、一方で大きな課題にも直面していた。それが「モバイルコマースはユーザーにとって敷居が高い」(長島氏)ということだ。

 「(当時)モバイルコマースの経験ユーザーが少ない中で、店舗の皆さんは懸命に商品を売ろうとするのですけれども、なかなか最初の(購入をする)1クリックをユーザーがしてくれない。ユーザーの初めての購買を促すことが難しかったのです」(長島氏)

 なぜ、ユーザーは“初めての購入をためらう”のか。その大きな要因としてあったのが、携帯電話という小さな端末で注文した商品がきちんと届くのか、という未経験ユーザーが持つ不安感だった。当時の状況について長島氏は、「部品はすべて組み上がっているのに、エンジンが回らない。スターターセルが動かない状況だった」と述懐する。

 「そこで我々は、携帯電話ユーザーに最も信頼されるブランドは何か、と考えた。そして、その答えは我々自身、すなわち(携帯電話ユーザーと直接の接点を持つ)auというキャリアだと気づきました。そこで我々自身が、モバイルコマースの市場を乱さない程度に『モノを売る』ことで、(モバイルコマースの)未経験ユーザーに購入経験をしていただき、お客様になっていただくという方法を考えました」(長島氏)

 それがauが手がける音楽CD販売サイト「au Records」(2004年10月27日の記事参照)や、書籍販売の「au Books」(2005年4月19日の記事参照)である。これらau直営のモバイルコマースサイトの狙いは物販分野への進出や獲得ではなく、ユーザーの最初の購入経験を促し、モバイルコマース市場そのものを作り出す点にあった。つまり、au自身がスターターセルになったのである。

 「この狙いが我々の想定以上に成功しまして、au Recordsなどの売り上げが拡大するのと比例して、auのモバイルコマース全体の売り上げも拡大していきました。(au直営サイトから)auでオカイモノに広がっていったお客様のその後の購買動向については追跡できないですが、例えばau Recordsでのリピート率が約40%ということを鑑みても、初めての購入経験からその後の(モバイルコマースの)お客様を作るという取り組みは成功したと考えています」(長島氏)

 モバイルコマース市場の創出と拡大は、キャリアとしてのauの収益にも繋がっている。モバイルコマース分野におけるauのビジネスモデルでは、

  1. auのショッピングポータルへの掲載料
  2. まとめてau支払いの回収代行手数料
  3. アフィリエイトプログラム

という3つが収入の三本柱になっている。これらの金額は明言されなかったが、「(モバイルコマース分野における)auの売り上げは1年前の10数倍。しかも、モバイルコマース市場の急成長はまだまだ続いている」(長島氏)状況だという。

ケータイだからこそ“場所の制限”を越えられる

 eコマース市場全体で見ると、PC市場も高い成長が続いているが、携帯電話ならではの部分はどれほどあるのだろうか。

 「PC(のeコマース)市場との違いはユーザー属性ですね。モバイルコマースは若い方、特に若い女性の比率が高い。また、アパレルやアクセサリー、香水などの商材が大きく動いているのも、(若い女性が購買層に多い)携帯電話ならではの特性だと思います」(長島氏)

 アパレル関係などは「実物を見ないで買うこと」へのユーザーの抵抗感が懸念されるが、「ブランドを理解された上で購入されるお客様が多く、eコマースだからというハードルは少ない」(長島氏)という。

 「また、アパレル関係のブランドショップやセレクトショップは都市部中心に出店しています。しかし、ファッション誌などは全国で販売されますから、情報は全国均一でタイムラグなく届きます。そうすると、同じく全国どこからでも注文ができるモバイルコマースは、感度の高いお客様を全国規模でカバーできる点で、ファッションとの相性がいい」(長島氏)

 実際、auでオカイモノに出店している、あるアパレルショップによれば、ファッション誌の発売日当日における最初の注文は、その商品を扱う店舗が存在しない地方からが多いという。「情報流通と物流があれば、タイムラグなく商機を捉えられるのがモバイルコマースの強みの1つ」と長島氏は指摘する。

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