2006年後半に予定されているMNPでは、キャリアを超えてユーザーの移動が起きる。これまでのauは若年層や女性層が厚く、リテラシーが高くてデータARPUを向上させやすいユーザーが多かったが、MNP後はユーザー層の広がりも予想される。この中にはARPUの低いユーザーも含まれるだろう。
「ARPUを向上させるのが我々(コンテンツメディア部門)の仕事」と断言する高橋氏だが、今までと傾向の異なる新規顧客の底上げもできるのだろうか。
「今までと属性の異なる顧客層の獲得というと、実はツーカーの吸収ですでに始まっています。その中でARPUの底上げができるかというと、できるんですね。ツーカーのお客様はauにいらっしゃると、ARPUの高い優良顧客に変わる。
具体的には、ツーカーのお客様のWIN契約率は45%で、移行者全体で見るとARPUは約1000円ほど上昇します。よいコンテンツやサービスを用意すれば、(低ARPUユーザーの)ARPUの底上げはできます」(高橋氏)
MNP移行にはイーアクセスなど新規参入事業者が控えており、そこでは定額制と低価格が旗印になっているが、それに対して過度な心配はしていないという。
「同じ定額制でも『何ができるか』で差が出る。一方は安いけれど(キャリアの)コンテンツサービスが少なくて、一方は定額制が割高でも他にないコンテンツやサービスがたくさん用意されている。これはどちらがいいかではなく、方向性や戦略の違いです」(高橋氏)
高橋氏はauのコンテンツメディア戦略が目指す方向性を、アトラクションやイベントが豊富な「ディズニーランドのような世界」と例える。顧客単価(ARPU)を高く維持するためのテクニックを磨き、様々な形で新たな収益源を企画するという点でも、この比喩は適切だろう。
すべてのキャリアが忌避しているが、MNPの段階である程度の価格競争・消耗戦は避けられそうにない。そのダメージをいかに軽減し、すばやく体勢を立て直せるかが、MNP後の戦いで重要なポイントになる。
auのコンテンツメディア戦略は、音楽分野を代表にブランドイメージを作るための"攻め"の印象が強いが、一方でARPUの底上げや高水準での維持はMNPのダメージを減らす"守り"の部分である。コンテンツFMCなど次世代サービスの動向も含めて、その取り組みからは今後も目が離せそうにない。
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