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» 2006年05月08日 11時33分 公開

Interview:おサイフケータイの狙いは何か、ようやく全貌が分かるだろう――NTTドコモ夏野氏に聞く(前編) (2/3)

[神尾寿,ITmedia]

おサイフケータイだけではキャリアは儲からない

 なぜ、ドコモは、そして夏野氏はDCMXにこだわるのか? その答えは、おサイフケータイのビジネスモデルにある。

 「我々は2004年6月におサイフケータイを始めたわけですけれど、これはiモードの時と違って、新機能として導入したからといってトラフィックが上がり、キャリアの収益が向上するというビジネスモデルは成り立たないじゃないですか。おサイフケータイでドコモがどうやって収益を上げるか? その答えになるのが、DCMX」(夏野氏)

 おサイフケータイでキャリアはどうやって儲けるのか。

 2004年当時から、この問題は携帯電話業界内で議論されており、それに対してドコモは「ユーザーの囲い込みや、携帯電話利用率の向上に繋がる」といったコメントを繰り返してきた。しかし、それらは今からすれば言い訳に過ぎなかった。夏野氏が明言したとおり、おサイフケータイだけでは“キャリアは儲からない”のだ。

 ドコモ自身がDCMXでクレジット決済ビジネスに乗り出したことで、「おサイフケータイの拡大=ドコモの収益」のWIN-WINの図式が完成したと言える。

 「おサイフケータイを、ドコモの事業拡大に繋げる。それがDCMXの目的ですが、その前に(DCMXが)使える場所がなければいけない。だから我々は、三井住友カードと資本提携した上で『iD』を先に始めたんです。そして、満を持してDCMXを投入することができた」(夏野氏)

 iモード、iアプリ(Java環境)、おサイフケータイ、iD。これらはDCMXに続くマイルストーンであると同時に、入れ子のようにDCMXを形作る重要な部品になっている。ドコモは兼ねてからおサイフケータイを「iモードの次」に当たる新たな収益の柱だとしてきたが、それはDCMXを核に持つ、この入れ子構造があって始めて実現するものと言えるだろう。DCMXによって、おサイフケータイはようやく「キャリアのビジネス」になったのだ。

クレジットビジネスとキャリアビジネスの親和性

 ドコモがクレジット決済ビジネスを、おサイフケータイ時代の新たな成長領域と定めたのは、少額決済分野を軸とする市場のポテンシャルが大きいからだ。

 「記者会見でもお話ししましたが、仮に日本のクレジットカード利用率がアメリカと同程度になれば、45兆円分、成長の可能性がある。高度成長期を終えて成熟期に入った日本で、これだけの成長産業は他にはない」(夏野氏)

 しかも、このクレジットビジネスの未開拓領域には、非接触IC「FeliCa」の活用という技術的な“追い風”も吹く。モバイルFeliCaを導入し、カード型FeliCaよりも高度なサービス提供環境を実現したおサイフケータイにとって、ビジネス的な可能性が多く、しかも有利な状況である。

 「さらにですね、ドコモのビジネスと(クレジット決済ビジネスの)親和性が高いという点がある。どういうことかというと、携帯電話とクレジットサービスは『ビジネスモデルが一緒だ』ということです。

 携帯電話事業というのは、端末販売では利益が出ない。お客様に継続利用をしていただいて、始めて我々の事業が成り立つのです。

 この基本的なモデルはクレジットカード業界も同じなんですよ。実はカードの発行枚数そのものには意味がない。(携帯電話端末の販売と同じく)クレジットカードを発行したからといって、儲かるわけではないのですね。発行したカードが継続的に利用されることで、収益が上がるわけですね」(夏野氏)

 もちろん、細かな部分では携帯電話ビジネスとクレジット決済ビジネスの相違点は多々あるだろう。例えば、携帯電話は"毎月の基本料"だけでかなりのレベニューになる。逆にクレジット決済ビジネスにはキャッシングのような仕組みがある。

 だが、夏野氏が指摘するとおり、基本構造そのものが“似ている”のは事実だ。

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