Nokiaは6月19日、独Siemensと通信インフラ機器分野で合併すると発表した(6月19日の記事参照)。今後、両社は出資比率1対1で合弁会社を設立、事業を多角化してシナジー効果を出すことを狙う。
通信業界は現在、さまざまな通信規格の発達により、固定と無線のプレイヤーが入り混じった形で競争は熾烈化している。Nokiaで無線ネットワーク部門副社長を務めるロビン・リンダール氏に通信業界のいま、HSDPAなどについて話を聞いた。
ITmedia:6月19日、Nokiaは独Siemensと通信機器事業で合併する計画を発表しました。これは、先日の仏Alcatelと米Lucent Technologiesに次ぐ動きです。現在、通信機器分野では何が起こっているのでしょう?
リンダール氏:Siemensとの合弁会社設立などに関しては、いまお話できることはありません。5年ほど前から、通信機器業界はベンダーの数が多いため、淘汰の方向に向かうだろうといわれてきました。オペレータも吸収・合併により数が減っていますので、通信機器業界は今後、ベンダーの数が減る方向に向かうと予想できます。
ITmedia:Huaweiなどの中国の通信機器ベンダーとの競争も意識してのことでしょうか?
リンダール氏:ここ数年を見ると、明らかに新規参入者による新しい競争が起こっています。これも今後の市場淘汰を加速する要因であることは明らかです。
ITmedia:HSDPA、WiMAX、FMCなど、通信技術の動向もさまざまです。長期的に見ると、これらの技術はどのように発展するのでしょう?
リンダール氏:3Gは進化してHSPA(注:HSDPAとHSUPA)となり、HSPAはinternet HSPAに発展します。このinternet HSPAは昨年発表したNokiaのコンセプトですが、ネットワークアーキテクチャを簡素化したもので、他のブロードバンド無線技術と類似しています。データのみに最適化したアーキテクチャで、基地局とコアネットワーク/IPバックボーンとを直接接続することから、通信速度は高速になり、インフラが簡素化できます。このinternet HSPAは、標準技術であるHSPAに技術を付加するものであり、ターミナルはHSPAと同じ、基地局に特定の技術を追加するだけです。すでに主要顧客と話合いが始まっており、高い関心をいただいています。現在、2007年にトライアルが始まる見通しです。
LTE(Long Term Evolution)は、3Gネットワークの上に構築されると見ています。標準策定などの課題はありますが、Nokiaは標準化に積極的に参加し、他ベンダーやオペレータと協業します。LTEのトライアルは2008年末〜2009年初めと予想しています。
ITmedia:HSDPAの離陸はいつになりそうですか?
リンダール氏:今といってよいと思います。今後数ヶ月の間に、オペレータが次々とHSDPAのサービスインを発表するでしょう。端末も今年後半には、携帯電話はもちろん、HSDPAデータ通信カードをビルトインしたノートPCや、PDAなどさまざまなものが出てくるでしょう。Nokiaも、今年後半にHSDPAをサポートした携帯電話の販売を開始します。
ITmedia:NokiaはWiMAX Forumに参加しています。ここではどのような活動をしていますか?
リンダール氏:NokiaはMobile WiMAX(IEEE802.16e)に積極的に参加しています。WiMAXは主に、固定オペレータ、ISP、3Gライセンスを持たない携帯オペレータがモバイルブロードバンドを提供するときに利用する無線技術となるでしょう。ここでは標準化作業がまだ完了していませんが、Mobile WiMAXの商用サービスは2008年にスタートすると見ています。
我々はここでの解決策として、マルチ無線基地局の「Nokia Flexi WCDMA Base Station」を提供します。これは小型ですが、完全なマクロベースの基地局です。WCDMAもサポートしており、重さはわずか60kg。しかも、消費電力は現在の平均的な基地局の3分の1程度です。省スペース、省電力はオペレータにとって重要な課題となっており、革新的な製品といえます。今年後半に出荷を開始します。
ITmedia:WiMAXとHSPAは競争の関係となるのでしょうか? 補完の関係ですか?
リンダール氏:両方です。ある特定の分野では競合するでしょう。WiMAXを提供する固定オペレータとinternet HSPAサービスを提供するモバイルオペレータが競争するからです。
ITmedia:通信業界ではFMCが立ち上がろうとしています。オペレータはIMSへの移行を迫られていますが、Nokiaの戦略はどのようなものですか?
リンダール氏:Nokiaには、プッシュツートークなど部分的なものも含めたIMS契約が合計85件あり、そのうちの19社とはIMSコアの部分での契約です。我々はFMC分野にも事業を拡大し、固定オペレータ、モバイルオペレータの両方にソリューションを提供します。すでに固定オペレータの伊Telecom Italiaなどの事例もあります。Nokiaはもともと通信機器では無線しか製品を提供していませんが、FMCでは、固定事業者を顧客に持つSiemensとの統合が生かされてくることでしょう。
ITmedia:モバイルオペレータは価格競争だけでなく、固定オペレータとの競争にも直面しています。課題は何でしょう?
リンダール氏:価格競争は特に音声分野で起きており、低価格化を迫られています。データではまだ価格体系を模索している状態ではありますが、定額制というトレンドが見えてきました。多くのオペレータが定額制を提供すると思われます。これは、データトラフィックが増え、ユーザーのデータアプリケーション利用増加につながることから、ポジティブな傾向といえます。また、すでにユーザーの多くはADSLなどで、月額料金を払うと好きなだけブロードバンドが使えるサービスを経験しています。ユーザーは同じようなサービスをモバイルにも期待するでしょう。そのため、データのコストを下げることが必要になります。
Nokiaはここで多くのソリューションを提供します。先のFlexi Base Stationや、3G屋内カバレッジ増大のための「Pico CDMA Base Station」などがその一例です。データ通信は歩きながらというより、屋内に座って行うユーザーが多く、屋内カバレッジは重要です。
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