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NVIDIA製を“28倍”効率化 生成AI時代のゲームチェンジャー「サンバノバ」の正体「サンバノバ」の正体【前編】(1/2 ページ)

» 2024年05月10日 11時05分 公開

 2022年末のChatGPTの“衝撃”以降、さまざまな企業が生成AIの開発に注力している。ソフトバンクも、英アーム社をはじめ海外企業と協働しながら、開発を進めている。

 それを支える企業の一つが、米シリコンバレーに拠点を置くSambaNova Systems(サンバノバシステムズ)だ。サンバノバでは、AIに強いプロセッサーを開発しており、市場の大部分を占めるNVIDIA製のチップに代わるものとして期待が集まっている。

 特にサンバノバの最新製品「SN40L」は、NVIDIA製の「DGX H100」と比較して28倍低いTCO(総保有コスト、Total Cost of Ownership)を実現し、企業にとって低コスト化を実現するものとしている。

 生成AI時代を迎え、企業の課題は何か。生成AIは今後どうなっていくのか。サンバノバ共同創業者のロドリゴ・リアンCEOに聞いた。

ロドリゴ・リアン SambaNova Systems共同創業者兼CEO。SambaNova Systems創業前は、オラクルでSPARCプロセッサーおよびASICの開発を担当。オラクルのエンタープライズサーバ向けの最先端のプロセッサーとASIC設計を担当するエンジニアリングチームを統括した。ロドリゴはヒューレット・パッカードでキャリアをスタートし、スタンフォード大学で電気工学の修士号と理学士号を取得している

「NVIDIA一強体制」を低コスト化で変革 ゲームチェンジャーへ

――いま生成AIが、かつてない流行を見せています。現状を、どう見ていますか。

 生成AIの登場は、かつてのインターネットの登場と似ています。インターネットの登場は、世界に大きなインパクトをもたらしたと思います。生成AIの登場も全く同じで、エコシステムの将来の姿だと考えています。

――サンバノバのビジネスモデルについて教えてください。

 AIに強いチップの開発・製造・販売をしています。機械学習や深層学習に強いハードの開発だけでなく、ソフト開発環境まで提供しているのが特徴ですね。チップだけを買う企業もありますが、取引先の多くの企業はソフトを含めたシステムを買っています。

――生成AIにおける企業の課題をどう見ていますか。

 多くの企業では、機械学習や深層学習など、AIの専門家をなかなか採用できない現実があります。自社で開発するのは難しいので、まずはChatGPTといった既存のものを使おうとするのが現状ではないでしょうか。一方、企業には機密データもあるため、当然ChatGPTにそっくりそのまま全てを移すことはできないわけですよね。

 非公開の情報が増えれば増えるほど、ハードの問題だけでなく、システムやソフト、機械学習の問題も生じてきます。サンバノバのソリューションでは、こうしたデータセキュリティーに配慮した生成AIを提供していますので、多くの企業の課題を解決できると考えています。

 汎用型のGPTモデルとは異なり、サンバノバでは1社1社にチューニングした固有のモデルを提供できます。そのためプライベートで安全安心に、精度が高い大規模言語モデル(LLM)の提供が可能です。

――今の生成AI市場で、サンバノバはどういったビジネス的なビジョンを持っていますか。

 生成AIの将来は非常に広汎な世界になっていくと考えています。まず、われわれが取り組んでいるビジネス側のAIもありますし、ChatGPTのような一般消費者向け、つまりコンシューマー側のAIもあります。どちらも生成AIにおいては、学習が非常に重要になってきます。特にビジネスAIの要件は、コンシューマーAIと比べ、より厳しい要件が必要になってくると考えています。セキュリティーもプライバシーも重要ですし、そして何より精度が重要です。

 全ての企業にとって、こうした要件は一つも外してはいけない状況にあると思います。多くの企業にとって、ビジネスAIは今から始まって、これから本番環境を迎える状況だと思います。その際に浮上する課題が、コストの問題です。

 実は企業がAIを導入する際、支払っているコストの80〜90%が推論に対するコストなんですね。サンバノバではこのコストを10分の1に減らせると考えています。

――生成AIに使用されるハードは、NVIDIA製品がかなりのシェアを占めています。この現状をどう変えていきますか。

 NVIDIAは非常に素晴らしい企業だと思っています。開発環境でもNVIDIAの製品は欠かせません。開発段階から、本番運用段階までまだたどり着いていない企業も少なくないのですが、たどり着いた企業にとっては、NVIDIAを使用することのコストの高さには気が付いているはずです。

 そしてソフトの部分にあたる、ChatGPTに代表される製品は、コストが非常に高いと言えます。すでに研究開発から本番運用の段階に到達している企業もありますが、このNVIDIAとChatGPT両方のコストの高さに課題を感じています。

 サンバノバの製品は、NVIDIAのチップと互換性を持つのも特徴です。NVIDIAのハードを流用しながら、LLMにあたるChatGPTの部分に、サンバノバのソリューションを使うこともできます。サンバノバではこうしたハード、ソフト両面で製品を提供できますから、企業にとって製品コスト、特に初期の導入コストを大幅に下げられるのです。

サンバノバの最新製品「SN40L」(同社のWebサイトより)
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