番号ポータビリティの影響はコンテンツビジネスにもある──モバイル・コンテンツ・フォーラム(1/2 ページ)

» 2006年07月12日 22時26分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 ドコモのiモードサービスが1999年4月に始まってから、着実に市場規模を拡大してきたモバイルコンテンツビジネス。この1年で3Gの普及率が一気に高くなり、パケット定額制と高速通信が一般化する中で、コンテンツビジネスはどう変わるのか。また携帯電話キャリアの競争を促進するであろう番号ポータビリティ制度(MNP)はコンテンツ市場にも影響するのか。モバイル・コンテンツ・フォーラム事務局長の岸原孝昌氏に聞いていく。

Photo モバイル・コンテンツ・フォーラム事務局長、岸原孝昌氏

コマース市場がコンテンツ市場を追い抜く

 モバイル・コンテンツ・フォーラムでは毎年、モバイルコンテンツ関連市場の調査結果を発表している。それによると、2005年のモバイルコンテンツ関連市場全体の規模は7224億円。2004年の5196億円と比較して、対前年比で139%の成長になった。

 「ここで注目すべきなのは、コンテンツ市場の伸びが前年比21%なのに対して、コマース市場の伸びが前年比57%と躍進していることです。これまではコンテンツ市場の方が売り上げが大きかったのですが、(2005年は)コンテンツ市場が3150億円、コマース市場が4074億円と市場規模でもコマースがコンテンツを追い抜きました」(岸原氏)

 また、コンテンツ市場の内訳では、明らかな変化が起きたという。その顕著な例が「着信メロディ」市場の成長が減速し、「着うた」の市場が急伸したことだ。

 「着メロ市場は初めて純減しまして、対前年比でマイナス11%になりました。一方着うたは対前年比で179%の大きな伸びになりました。市場規模でも着うたが着メロの半分になっています。着メロ市場も売り上げベースではいまだに大きいですが、(成長率においては)着うたへのシフトが確実に起きています。特にKDDIでその傾向が強いですね」(岸原氏)

 また音楽以外では、ゲーム市場の伸び率も高く、対前年比43%の成長をしている。これまでモバイルコンテンツ市場は、着信メロディが売り上げベースで最も大きく市場全体を引っ張っていた。しかし「着うた」の躍進と他分野の伸びにより、牽引役の交代と分散が起き始めているようだ。

 岸原氏は「この一年の傾向として、着うたや着うたフルのように『コンテンツ自体が消費される』ものが売れている」と話す。「これまでの着信メロディなどは『携帯電話をカスタマイズする』もので、携帯電話への依存性があった。しかし、着うたや着うたフルのようにコンテンツ単体で楽しめるものが増えてきた。電子ブックなども同じ延長線上にあると言えます」

 一方で、携帯電話依存型のコンテンツもまったく斜陽というわけではない。着信メロディ市場は売り上げベースでは大きな柱であるし、新分野として「コミュニケーションに関わるもの、その中でもデコメール市場が大きく伸びている」(岸原氏)という。

モバイルコマース市場は「まだまだ伸びていく」

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 今回大きく躍進したモバイルコマース市場は「物販」と「トランザクション」の伸びが顕著だ。

 「物販の伸びには2つの理由があります。1つは携帯電話でモノを買うという“購入体験者”が増えてきていること。もう1つが“購入できる商品”のラインアップ自体が大きく拡大したことです。携帯電話を使って通販で買い物をするという行為が、特別な事ではなくなってきています。トランザクションは、オークションの手数料や(オンライントレードの)証券会社の手数料、そして今年から(競馬など)公営競技の手数料などが大きく伸びました。これらに関しては(どこでも利用できるという)モバイルの特性がメリットになる分野ですね」(岸原氏)

 株式投資は、一時期ほどの勢いはないもののブームが続いており、会社員の個人投資家も増えている。最近は会社のパソコンを業務以外に利用しないよう、厳しくチェックする傾向が顕著で、サラリーマン投資家にとってモバイルトレードは欠かせないサービスになっている。今後も着実な成長が期待できそうだ。

 今年、モバイルコマース市場はコンテンツ市場を追い抜いたが、岸原氏は「まだまだ伸びていく」と考えているという。

 なお、現在のモバイルコマース市場は、EdyやSuicaといったおサイフケータイ向けの電子マネーや乗車券サービスの市場は含まれていない。それでも力強く成長し続けている点も、特筆すべきところだろう。

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