技術のキャスティングボートは日本が握っている──日本TIInterview(1/2 ページ)

» 2006年07月18日 13時00分 公開
[園部修,ITmedia]

 米Texas Instruments(TI)は、ワールドワイドでDSPやアナログICを中心としたチップビジネスを展開している大手ベンダーだ。同社は現在デジタル家電、ブロードバンド通信、そしてワイヤレス通信の分野を中心に関連デバイスを開発している。その日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)では、同様にさまざまなチップやデバイスを手がけているが、中でも携帯電話向けのチップセットは非常に重要なビジネスの1つだ。

 同社のコアビジネスの1つである、携帯電話向けチップセットの日本市場における最新動向を、ワイヤレス・ターミナルズ製品事業部の事業部長、水上修平氏に聞いた。

Photo ワイヤレス・ターミナルズ製品事業部事業部長の水上修平氏

ワールドワイドではハイエンドとローエンドに注力

 Texas Instrumentsが開発している携帯電話向けのアプリケーションプロセッサには、ハイエンドからミッドレンジまでをカバーする「OMAP」シリーズから低価格なローエンド向けのものまで、幅広いラインアップがある。

 OMAPシリーズは高機能なアプリケーションプロセッサで、日本でもドコモのFOMAシリーズの多くに搭載されている。現在は第1世代のOMAPだけでなく、第2世代の「OMAP2」も展開しており、902iシリーズや702iシリーズの多くの端末が採用している(2005年11月1日の記事参照)

 2005年から2006年にかけて、日本テキサス・インスツルメンツの携帯向けチップのビジネスは非常に好調だったと水上氏は話す。「ワイヤレス・ターミナルズ製品事業部の業績は、当社の主力商品の1つであるOMAPが、第1世代(OMAP)、第2世代(OMAP2)ともに広く端末メーカーに採用されました。OMAPが搭載された携帯がいくつも市場に投入され、花開いた年と言えます。売り上げ、マーケットシェア共に好調な数字をキープでき、会社の成長に貢献できました」(水上氏)

 この成長を持続させるため、アプリケーションプロセッサ事業では、今後は特にハイエンドとローエンドに注力していく方針だ。

 「もちろん、ミッドレンジも含めてすべての製品に力を入れて開発していきますが、2008年くらいまでのスパンで、ワールドワイドで注目しているのはハイエンドとローエンドのセグメントです。日本市場などでニーズの高い、マルチメディアリッチな端末向けの高機能なアプリケーションプロセッサは、さらに多機能かつ高性能が求められており、このニーズに応えられる製品を提供します。一方で、BRICsなどに代表される新興国向けには、非常に低価格なワンチップソリューションが求められています。とにかく低価格な端末の需要が成長すると見込まれており、ここにTIのワンチップ技術を投入して開拓していきます」(水上氏)

ハイエンド向けプロセッサはまだまだ高機能化する

 日本TIでは、前述の通りハイエンド向けのアプリケーションプロセッサには、まだまだ機能の多さや性能の高さが求められていると考えている。「これからもさらなる高機能化を図ります」と水上氏は言うが、“さらなる高機能化”とは一体どの程度の高機能化を指すのだろうか。

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 「一説には、ハイエンドプロセッサの多機能化・高性能化の流れは早晩飽和するという見方もあります。しかし、私たちはその傾向はそんなに簡単には止まらないと考えています。ハイエンド向けのプロセッサはさらに多機能、さらに高性能へと向かっていく。」(水上氏)

 同氏は「極論すれば、ゆくゆくはノートPCでできている程度の機能が、携帯上で実現できるようになるレベルまで進化するのではないでしょうか」と話す。さすがにノートPCが不要になることはないだろうが、携帯の進化は続き、高性能化、高機能化についてはまだまだ成長の余力があると考えているようだ。

 日本TIはすでに次世代のアプリケーションプロセッサ、「OMAP3」を2月16日に発表しており、2006年後半にはサンプル出荷を始める。OMAP3では製造プロセスが65ナノメートルに微細化され、さらに消費電力を抑えたほか、プロセッサコアはOMAP2に搭載されていたARM11の3倍の処理速度を持つ、Cortex-A8に変わる。Cortex-A8はTIとARMが共同開発したものだ。ビデオ/オーディオ用アクセラレータには「IVA 2+」を採用して、OMAP2の最新チップ「OMAP2430」の4倍の処理能力を実装しているという。しかし、これでもまだ“ノートPC並み”にはほど遠く、これからも大きく性能を向上させ続ける。

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