あらゆる面でスピード感を変えたソフトバンク 神尾寿の時事日想: (2/2 ページ)

» 2006年09月29日 17時29分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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スーパーボーナスは勇み足

 一方、料金プランについてだが、ここは今のところ「スーパーボーナス」のみが明かされている段階である(9月27日の記事参照)。おそらくソフトバンクは、ほかにも料金プランの隠し球を持っていると思うが、いずれも単純な値下げというよりも、これまでの携帯電話料金の在り方を変えるような施策だろう。

 さて、このスーパーボーナスであるが、筆者は“勇み足”だと思っている。孫氏は昨日の記者会見において、現在のインセンティブモデルの問題点を指摘。「こうした、ある種間違ったビジネスモデルは是正しなければならないし、MNPによるビジネスモデル崩壊の対策でもある」(孫氏)と、スーパーボーナスの狙いを語った。

 確かに今のインセンティブモデルには問題点がある。だが、そのスキームの上に、携帯電話メーカーや販売会社が乗り、ユーザーがそれを受け入れているのもまた現実である。ソフトバンクの狙いはわかるが、ここは1社の考えやスピード感で一気に舵が切れるほど簡単ではない。携帯電話業界全体で、ユーザーのコンセンサスを得ながら、ゆっくりと新たなモデルを模索していく必要があるだろう。

 スーパーボーナスではユーザーのメリットになる部分もあるが、一方で、従来の販売方法では存在しなかった不利益もある。そのためユーザーの理解と納得を得るには時間がかかるだろう。それが不十分なまま従来型のハッピーボーナスや年間割引をなくし、さらに強引な移行を進めれば、ユーザーの誤解や反発は避けられない。

 携帯電話料金の在り方に一石を投じるのは有意義だが、ここもエリア整備と同様に、時間をかけてゆっくりと取り組む必要がある。

スピード感は十分。あとはバランス感覚

 ソフトバンクは今回の発表で、ボーダフォン時代から「あらゆる分野でスピード感が変わった」ことを世間にアピールした(9月28日の記事参照)。足りない部分や勇み足な部分もあるが、端末とコンテンツを中心にドコモ・auのキャッチアップが一気に進んでいる。周回遅れから、同一ラップの第3位にまで一気に上りあがった印象だ。

 だが、携帯電話ビジネスはスピードの速さだけが絶対的な優位性にならないのも事実である。ここがソフトバンクがこれまで戦ってきた、ソフトウェアやネット、ブロードバンドの世界と大きく違う。スピードと並んで大切なのが、信頼性やコストにおけるバランス感覚だ。“大人”になったソフトバンクの手腕を、期待を持って見守りたいと思う。

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