「稼ぐやつが偉い」 プルデンシャル61億円超の不正の根底にある、“制度に書かれていない”空気の支配:「キレイごとナシ」のマネジメント論(1/4 ページ)

» 2026年10月14日 07時00分 公開
[横山信弘,ITmedia]

「キレイごとナシ」のマネジメント論

常に目標を達成させる「常勝集団」をつくるために、キラキラしたビジネスtipsは必要ない。組織マネジメントを専門とする横山信弘氏が、本質的なマネジメント論を「キレイごとナシ」で解説する。

著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)

企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。


 「再発防止策を実行しただけでは、会社は変われない」

 10月8日の記者会見で、プルデンシャル生命保険の得丸博充社長はそう語った。記者から「抜本的な改革といえるのか」と問われた場面での発言である。

 会社のトップが、制度を整えるだけでは足りないと自ら認めた。この一言は、思いのほか重い。制度は変えられる。しかし、長い年月をかけて職場に染みついた「空気」は、簡単には変えられないからだ。

 そこで今回は、報告書と金融庁の処分を踏まえ、プルデンシャル生命の改革が本当に抜本的なものになり得るのかを考えてみたい。組織の空気をどう変えるかに悩んでいる経営者や管理職にも、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

photo01 10月8日の記者会見の様子(編集部撮影)

報告書が突きつけた「構造的かつ経営的な問題」

 まず、事実を整理しておこう。

 10月8日、同社は社外特別調査委員会の調査報告書を公表した。金銭の授受は、顧客の申告ベースで61億6600万円に上る。社外特別調査委員会は、今回の不正を「一部の営業社員などによる個別の不適切行為ではなく、会社としての構造的な問題」と断じた。

 原因として挙げられたのが「営業成績を過度に重視する企業風土」である。そして「ガバナンスの全社的な不全」があったと結論付けた。

 同社は157人を処分し、うち64人を懲戒解雇・諭旨解雇とした。得丸社長ら3人は、月額報酬の30%を3カ月間、自主返納する。

 再発防止策も示された。完全歩合制を撤廃し、2027年から最低保証給を導入する。報酬に占めるアフターサービスの比率を、現在の5%未満から約20%へ引き上げる。本社スタッフが直接顧客をサポートする体制をつくり、AIを使った面談の録音・記録も導入するという。

 10月9日には、金融庁が一部業務停止命令を出した。10月13日から2027年1月末まで、新規の保険募集などが止まる。グループのジブラルタ生命にも同様の命令が出され、親会社のプルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンには業務改善命令が下された。生命保険会社への業務停止命令は、2019年のかんぽ生命以来のことだ。

 同社は2月から新規営業を自粛してきたが、これで営業再開はさらに先送りになる。11月末までに業務改善計画を提出することも求められた。

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