旭化成が経費精算で「年間6.5万時間」を削減できたワケ “勘に頼らない”DXの実践(1/2 ページ)

» 2026年10月13日 07時00分 公開
[サトウナナミ,ITmedia]

 多角的な事業を展開する企業にとって、社内に散在する技術や知見を集約し、データやAIをいかに業務へ生かすかは大きなテーマだ。

 旭化成は、全社データ基盤の整備とAI活用により、10年かかっていた素材開発期間を1年に短縮するなどの成果を創出している。

 数万人の従業員を抱える同社は、どのようにデータ基盤を構築し、現場が迷わずに活用できるよう「適切なハンドリング」を実施しているのか。同社執行役員(DX推進) デジタル共創本部長の寺田秋夫氏と、IT統括部の松山毅氏の話から、その実践プロセスをひも解く。

photo01 旭化成 執行役員(DX推進) デジタル共創本部長 寺田秋夫氏(編集部撮影)

本記事は、米WalkMeが9月10日に開催したイベント「WalkMe On Tour Tokyo 2026」におけるセッション「AIとデータで加速する、旭化成のDX戦略 WalkMeで実現する、全社のデジタル投資最適化」を基に構成。


「もはや化学会社にとどまらない」 複数事業をまたいだ「全社データ基盤」

  旭化成が強化しているのが、自社が持つ技術や知見、ノウハウを貯蓄したデータ基盤を構築することだ。

 1922年に創業した同社は、マテリアルだけでなく、住宅やヘルスケア領域など多角的に事業を展開しており「もはや化学会社にとどまらない」企業になっている。異なる領域の技術や人材、ノウハウを組み合わせることが、同社の成長を支えてきた。

 しかし、社内にどのような技術や知見があるかを見つけ、事業に結び付ける過程では、人脈や個人の知識に頼る面があったという。そこで同社は、2021年から全社的なデータ基盤の整備を推進。社内に散在していたデータや知見を集約し、技術やノウハウを可視化・活用できる環境の構築を進めている。

 現在ではRAG(検索拡張生成)などのAI技術を導入し、これまで10年かかっていた素材開発期間を1年に短縮するような成果も表れているという。

ツールを入れるだけでは不十分 現場を迷わせない「適切なハンドリング」とは

 同社はデータ基盤の活用が、AIの利用で加速すると見ている。寺田氏は「単にAIを通せば必ず成功するわけではない」としつつ、人が長年かけて探してきた技術や事業の組み合わせを、選択肢として素早く提示できる点に期待を寄せる。

 全社でデータやAIの活用を広げるためのルール整備も欠かせない。寺田氏はシステム利用を車の運転になぞらえて「アクセルとブレーキ、そしてハンドル」の重要性を指摘する。

 「社員が自律的にAIやツールを使って『アクセル』を踏む一方で、野良ツールの乱立やセキュリティリスクを防ぐ『ブレーキ』が不可欠です。そして同時に、複雑なシステムでもユーザーが迷わず正しく操作できるよう『ハンドル』をうまくさばけるような支援が求められます」(寺田氏)

 AIの活用の推進においても、日常的な社内システムの利用でも、現場がルールを守り、迷わず操作できるように導く「適切なハンドリング」が求められる。

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