バックオフィスの生産性向上を目指す際、システムの統合やルールの共通化に取り組む企業も多いだろう。しかし「最新システムを入れ、マニュアルを整備した」だけでは、現場はスムーズに回らない。
丸紅グループのICT領域を担う丸紅I-DIGIOホールディングス(東京都文京区)も、この課題に向き合っている企業の一つだ。同社は2023年4月のホールディングス化に伴い、各事業会社でバラバラだった経費精算システムと規定を統一するため、同年7月に経費・請求書・出張管理のクラウドシステム「SAP Concur」を導入した。グループ全体で標準化された運用へと転換を図ったが、そこで浮き彫りになったのは、作成したマニュアルや規定と、現場の実態との間にあるギャップだった。
本記事は、米WalkMeが9月10日に開催したイベント「WalkMe On Tour Tokyo 2026」におけるセッション「マニュアルゼロへ。迷いゼロへ。――WalkMeで実現する迷わない業務」を基に構成。
同社コーポレート統括本部 財務経理部 部長の松澤力也氏は、当時の状況を「刷新した規定やマニュアルの解釈ミスによる入力漏れや誤申請が多発し、新システムの操作手順に関する経理への問い合わせが急増しました」と振り返る。共通ルールは整ったものの、誰もが迷わず使える状態になっていなかった。
松澤氏は、現場(経費申請者)と経理部門の間には、経費精算に対する根本的な意識のギャップがあると指摘する。
現場からすれば「細かい社内ルールやインボイス制度などはよく分からない。金額さえ合っていれば問題ないだろう。だから、修正は経理でやってほしい。『たかが』経費精算だろう」という意識になりがちだ。一方で、計上に責任を持つ経理としては、交際費課税やインボイス制度などの法令、社内ルールを無視できない。「たかが」ではなく「されど経費精算」なのだ。
「この『たかが』と『されど』がぶつかり合い、社内で摩擦が起きます。私自身これまでのキャリアでそんな場面を何度も見てきました」(松澤氏)
現場の申請者は「何を入力すればいいのか」と迷い、それをチェックする各部門の承認者は、形式不備の確認に追われる。そして経理担当者は、膨大な問い合わせ対応と形式的なチェックに疲弊し、本来の業務に時間が割けなくなるという、負の悪循環に陥っていた。
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