2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される新リース会計基準。計上対象となるリース取引が大幅に拡大し、社内のさまざまな部門に潜むリースの把握が必要になるなど、企業の経理・財務部門には重い負担がのしかかっている。
ITサービス業のJBCCグループの経理財務を担うJBエキスパートの計画管理チームは、独自開発したAIツールを用いて新基準への対応に取り組んでいる。人力では1件当たり3時間かかっていた契約書の判定業務を2分に短縮。99%という業務効率化を実現している。
「取り組みの当初、メンバーたちは『AIでなんてできません』『無理です』と活用に後ろ向きでした。それが今ではさまざまな業務において『AIにやらせてみたらどうなのか』といった声が聞こえてくるほど、思考が180度変化しています」
そう話すのはプロジェクトをけん引した計画管理 会計管理 本部長の星田拓郎氏だ。チームの意識を変えた成功体験の裏側と、経理業務におけるAI活用の今後の展望について聞いた。
「新基準の適用が決まったと聞いた時、影響範囲がどれくらいになるのかの見通しが全く立たず、組織内に不安だけが広がりました」
星田氏は、当時のリアルな心境をそう振り返る。特に厄介だったのが、社内のあらゆる部門に潜む「隠れリース」の存在だ。どれだけの隠れリースが存在しているかの見当が付かなければ、貸借対照表(BS)にどれほどの影響を与えるかも分からない。
星田氏は新基準に対応するメンバー4人と共に、2027年4月の適用開始に向けたロードマップを策定。見えない不安を解消するファーストステップとして取り組んだのは、泥臭い対話による隠れリースの洗い出しだった。
「全グループ社員向けの掲示板に告知をして、それぞれの組織から隠れリースを拾い上げる方法も考えました。しかし、会計の専門的な話は、単に通知しただけでは現場には伝わりません。そこで、関連しそうな部署に当たりを付け、丁寧に説明会を開いて回りました」(星田氏)
現場の協力を得て帳票やヒアリングから抽出を進めた結果、判定すべき契約書は100件以上に上った。
ここで問題となったのが「時間」の壁だ。複雑な会計基準と照らし合わせながら、不慣れな契約書を読み込んで判定する作業は、人力で行うと「1件当たり3時間」ほどかかることが分かった。このままでは、とてもではないが適用開始に間に合わない――危機に直面した星田氏らが検討したのが、AI活用だった。
AIの活用を検討したものの、その道のりは平坦ではなかった。
「最初はAIに会計基準などの情報を全て入れ込み、契約書もそのまま読み込ませて“丸投げ”しようとしました。しかし、データ量が大きすぎてAIがパンクしてしまい、一度は断念しました」(星田氏)
しかし半年後、AIの進化を背景に再挑戦を決意する。さらに追い風となったのが、社内でAI活用促進プロジェクト「J-AInnovation」が始動したことだった。
J-AInnovationは、AIを前提とした働き方・業務変革をJBCCグループ自ら実践し、その知見をクライアントのAX支援に生かす取り組みだ。業務部門を中心とした全社でのAI活用を、エンジニアチームがサポートする。新リース会計基準への対応においても、計画管理チームとエンジニアがタッグを組むことにしたのだ。
さらに、“丸投げ”での失敗を生かしてアプローチを変えた。業務プロセス全体を9つのステップに分解。その中で、特に負担がかかっていた「対象データの特定」「契約書の内容整理」「一次判定」という、AIが得意とする“集約・要約”の3ステップに絞って、AIに任せることにしたのだ。
エンジニアの協力を得たことで、開発はスムーズに進んだという。
「私たちから『判定にブレがある』などの課題をエンジニアに伝えると、翌週には修正版が上がってくる――このようなサイクルを素早く回すことで、たった1〜2カ月で実用化レベルに達しました」(星田氏)
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