日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
中国人観光客の減少によって、観光業は「中国依存」から抜け出しつつある一方で、日本の外食や小売業では、自ら中国へ進出して店舗網を拡大し、中国を成長戦略の柱とする動きが活発化している。中国に対して「ねじれ」が生じているのだ。
分かりやすいのは、ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショーHD)の「はま寿司」だ。中国国内の店舗は2024年3月末で約50店舗だったが、そこから2年ちょっとしかたっていない2026年7月には200店舗を突破し、「爆速」で事業を拡大している。
中国市場から撤退した「くら寿司」とは対照的に、「勝ち組」とされていたスシロー(2026年4月時点で100店舗)の2倍に達している。背景には、個人消費が低迷し、デフレ傾向が強まる中、「コスパ」を打ち出すことで中国人消費者のハートをわしづかみにしていることがあるという。
この「はま寿司の急成長」は「たまたま」ではなく、ゼンショーHDが「海外市場に成長を求める」という経営戦略に基づくものだ。2022年3月期には、国内出店数が92店舗だったのに対し、海外出店数は342店舗と3.7倍だった。2026年3月期は、国内が101店舗だったのに対し、海外は941店舗と9.3倍まで増えている。ゼンショーHDは中期経営計画で海外売上高比率を3割にすることを目指しており、中国での店舗拡大は、その柱の一つになっている。
さて、こういう話を聞くと、脊髄反射的に「チャイナリスクの恐ろしさを理解していないのか」と眉をひそめる人も多いが、「中国の消費者を取り込んで成長する」という経営スタイルに傾いているのは、なにもゼンショーHDに限った話ではない。
圧倒的なコスパで日本全国に熱烈なファンを持つサイゼリヤも、実は中国ビジネスに力を入れている。
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