「部下の話は、まず最後まで聞きましょう」
管理職研修でよく耳にする助言だ。もちろん、部下が訴えている最中に遮ったり、頭ごなしに否定したりするのは望ましくない。
しかし、管理職の時間には限りがある。「資料の修正が多い」「他部署の返事が遅い」といった日々の不満を一つ一つ詳しく聞き、その全てに対処しようとすれば、本来の業務が進まなくなってしまう。
部下の声に耳を傾けることは重要だが、「話を聞くこと」と「課題として対処すること」は明確に切り分けて考える必要がある。
なぜ、上がってきた不満をそのまま対処してはいけないのか。それは、上司の耳に入ってくる情報自体に「偏り」があるからだ。
大前提として、職場に問題を感じた社員が、抱えている不満を全て上司に話すわけではない。部下の不満を聞くにあたっては、まずここを踏まえる必要がある。
ニューヨーク大学の研究によると、従業員が声を上げるか、沈黙するかの判断には、心理的安全性や上司の傾聴姿勢、個人の自己効力感などが大きく影響することが分かっている。
つまり、上司が部下から聞いているのは、あくまでも職場の問題の一部なのだ。
毎週のように不満を持ち込むAさんと、ほとんど何も言わないBさんがいたとする。上司に持ち込まれた話だけを丁寧に処理していけば、当然、Aさんが困っている問題ばかりを処理することになる。しかし、相談を受けた情報が全てとは限らない。
不満を言わないBさんに対して「不満があるなら、自分から言うべきだ」という意見もあるだろう。社員個人の当事者意識という点では一理あるが、組織の課題を把握するという点では、別の問題だ。組織の課題を正しく捉えるには、社員一人一人が声を上げるかどうかだけに頼ってはならない。
上司は「誰がどれだけ強く訴えているか」で重要度を判断してはいけない。上がってきた不満は、発言者ではなく、その内容を同じ基準で見極める必要がある。
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